4994. 富岡市立美術博物館での思い出深い体験:小松美羽展「Divine Spirit〜神獣の世界〜」を鑑賞して(その2)
時刻は午後3時半を迎えた。今日は富岡市立美術博物館で半日ほどの時間を過ごしていた。
今、高崎から東京に向かう新幹線の中にいる。今朝は朝一番に近い新幹線で高崎方面に向かっていたからか、朝の列車はとても空いていた。
一方で、この時間帯の高崎から東京方面の列車は以外と混んでいる。次の大宮で降りる人が多いのだろうか。
先ほどの日記の続きとして、富岡市立美術博物館での濃密な時間を振り返っておきたい。小松美羽さんの作品展「Divine Spirit〜神獣の世界〜」で展示されていた作品の一つ一つはもちろん素晴らしいものだったが、やはりその中でも幾つかひときわ惹きつけられる作品があったのは確かである。例えば、『Phoenix Reborn(2017)』『だれしも龍となる(2018)』『あなたを守る(2019)』などはそれである。
また、常設展示室に置かれていた、とても可愛らしい二対の狛犬がモチーフとなっている有田焼の作品『天地の守護獣〜天地〜(2016)』は、大変印象に残っている。特に青い狛犬がどこか実家の愛犬のように思えてしまった——外見はだいぶ違うが、内在する魂がとても似ているように思えた—ー。
今回の鑑賞体験をより豊かにしてくれたのは、何よりも当館の学芸員を務める稲田さんという方のお力であった。
一つ前の日記の中で、芸術に造詣の深さそうなご年配の方がいて、その方が展示室を去った後、さりげなく係員の方にその年配の方について話を伺ってみたところ、常連のお客さんらしく、さらにはご自身の作品をこの美術館に展示したこともあるような方とのことであった。その後も係員の方からいろいろな話を伺い、今回の小松さんの展示会を見に遠方からやってくる人も多いとのことであり、私もオランダからやってきたことを述べた。
それを聞いた係員の方は一瞬驚いた表情を浮かべて笑みを浮かべた。そして嬉しいことに、私のために作品解説をしてくださる学芸員の稲田さんという方を呼んでくれたのである。
そこからは、稲田さんにあれこれと小松さんの作品について話を伺い、本当に有益なことを教えてもらった。作品の背景にある事柄や、作品にまつわるエピソードなどを聞くことによって、作品から汲み取れることが豊かになり、そして何より自分の作曲実践と関連するような事柄を数多く発見することに恵まれた。
そこからは稲田さんに付きっきりになっていただき、小松さんの展示作品のみならず、日本絵画に多大な貢献を果たした福沢一郎氏の作品展の解説もしていただいた。当初の計画では、2時間ほどで美術館を後にして東京に戻ろうと思っていたが、結局5時間近く美術館にいた。
稲田さんからは、「学芸員」という仕事についても話を伺い、展示会の企画、作品の配置、作品解説の文章など、一つの展示会に深く関わる仕事をするのが学芸員としての仕事だということを教えてもらった。
小松さんの展示にせよ、福沢一郎氏の展示にせよ、こうした素晴らしい作品展の背後には、学芸員の方々の尽力があることを初めて知った。それを知り、自分の芸術体験は本当に多くの方の仕事によって成り立っていることに感謝の念を持った。
新幹線はまもなく大宮に到着する。なんだか今とても幸福な気持ちだ。
小松さんの作品や福沢氏の作品を鑑賞しに、ぜひ多くの方が富岡市立美術博物館に足を運んでくれることを願う。きっとそこには各人固有の豊かな芸術体験があり、新たな自己発見と自分なりの幸福感を見出すきっかけがあるだろう。東京駅に向かう北陸新幹線の中で:2019/9/27(金)16:02