
14313. 「大麻はサイケデリックか?科学的証拠を検証する」という記事を読んで
⭐️心の成長について一緒に学び、心の成長の実現に向かって一緒に実践していくコミュニティ「オンライン加藤ゼミナール」を毎週土曜日に開講しております。
⭐️成人発達理論・インテグラル理論・瑜伽行唯識学の観点から、リスナーの皆様と心の成長を一緒に実現していくことを目指した「成人発達コラボラジオ」の配信をしています。
⭐️オンラインセミナーやイベントのご連絡をさせていただくメルマガのご登録はこちらから
*記事のSNSでの共有・引用はご自由に行っていただけると幸いです。
休憩がてら、Psychedelics Todayの最新記事の中から、「大麻はサイケデリックか?科学的証拠を検証する」というものを読んだ。大麻がサイケデリクスに分類されるものかどうかについては以前から関心があり、今のところ大麻はサイケデリクスではないという認識を自分は持っている。大麻はあまりにも品種が多く、その効果がまちまちであり、一括りにしてサイケデリクスに分類するのは乱暴だというというのが自分の意見である。大麻は一般的にサイケデリック(幻覚剤)とは見なされていないが、この記事が述べるのは、驚いたことに、科学的証拠は「そうであるべき」であることを示しているとのことだ。自分のこれまでの理解を覆してくれるような科学的発見や論考はいつも刺激的である。記事の著者曰く、大麻の治療的応用に関する豊富な逸話的証拠を考慮すると、シロシビン(マジックマッシュルームの成分)やMDMAのように、臨床や儀式の場面で強力な植物医薬品として使用される可能性があることを否定するのは難しいとのことである。さらに、大麻(およびその他のエンセオジェン:精神活性植物)に含まれるフレーバー成分「インドール」 に関する新たな科学的知見が、大麻のサイケデリックとしての分類に重要な影響を与える可能性があると指摘する。しかし、注目すべきなのはインドールだけではなく、大麻には、サイケデリック物質の定義に関わるさらなる化学的要素が存在すると著者は指摘する。この記事では、(1)インドールは、大麻をサイケデリックとして分類するための「鍵」なのか?(2)大麻は現在どの薬物クラスに属しているのか?(3)大麻で幻覚を体験することはあるのか? 幻覚剤とサイケデリックは同じものなのか?(4)サイケデリックの定義とは? 大麻は科学的にそのカテゴリーに当てはまるのか?という問いに答えていく。1つ目の問いに関して、大麻は伝統的にはサイケデリックではないとされていますが、特定の条件が揃うと強力なサイケデリックになり得ると述べる。この主張には賛成であり、上述のように、大麻は数多くの品種があり、中にはトリプタミン系のサイケデリクス(シロシビン、DMT(ジメチルトリプタミン)、5-MeO-DMT (5-メトキシジメチルトリプタミン)、LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)など)と似た働きや効果を示すものがある。著者は、「セットとセッティング」(使用者の心理状態や環境)、耐性、使用する大麻の種類 などの要因が、体験が一般的なものになるか、サイケデリックなものになるかを決定すると述べる。大麻の効果は微細な変化から、DMT体験に匹敵するものまで幅広く、アヤワスカを摂取したかのような体験をする人も見てきたとのことである。ただし、このような極端なサイケデリック体験は、大麻の多様性と、使用者ごとの生理的・心理的特性の違いから、一般的ではないことも注意書きとして著者は述べる。2つ目の問いに関して、大麻は最も複雑で広く消費されている薬物の1つであり、その多様な精神活性化学成分のために、分類が困難であると指摘する。現在、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)や世界保健機関(WHO)は、大麻がどの薬物クラスに属するかに関する権威あるオンライン情報を削除したらしい。一方、Discovery InstituteやIACP(国際警察長協会)は「大麻独自の薬物クラス」に分類しているとのことである。実際、大麻は同時に鎮静作用や興奮作用、さらにサイケデリックまたは幻覚作用を持つことがある。こうした性質を鑑みて、現在、大麻はアメリカの連邦レベルで再分類(Rescheduling) が進行中であり、独自の公式な薬物クラスを持つべきだと考えられているとのことである。3つ目の問いに関して、大麻がサイケデリックであるかどうかを判断するためには、サイケデリクスとは何か?幻覚剤とは何が違うのか? を理解することが重要であると著者は主張する。サイケデリクスの特徴として、サイケデリクスは、脳に作用し、知覚・気分・認知プロセスを変化させる精神活性物質の一種であり、主要な特徴は以下の通りである。(1)作用メカニズム:主にセロトニン受容体(特に5-HT2A) に作用し、サイケデリック体験を引き起こす。こうした体験を引き起こすものとして、LSD、シロシビン(マジックマッシュルーム)、DMTなどが該当する。(2)知覚の変化:鮮明な視覚・聴覚の変化、感覚の融合、色彩の強調、パターンの増幅などが挙げられる。(3)認知・感情の変化:内省の深化、思考の変容、強烈な幸福感や洞察を得ることが挙げられる。(4)神秘的体験:「ワンネス(宇宙との一体感)」や「超越的意識」の感覚を得ることがある。(5)非毒性・低依存性:身体的に安全で、中毒性が低いということが継続的な調査から明らかになっている。一方、サルビア・ディビノラム(Salvia divinorum)やダチュラ(Datura)などの自然由来の幻覚剤は、意識を混乱させたり、現実感を喪失させることが特徴であり、サイケデリクスとは区別される。4つ目の問いである「大麻はサイケデリックか? それとも幻覚剤か?」という疑問に対して、著者は結論として、大麻は「どちらにもなり得る」が「通常はどちらでもない」 と述べる。サイケデリック体験を誘発する大麻が持つ物質として、THC(テトラヒドロカンナビノール)を挙げることができる。これは、5-HT2A受容体を調整し、高用量ではLSDに近い体験を引き起こす可能性がある。ゆえに、THCの含有量が多いものは、サイケデリクスの分類に近づくことになる。一方、日本でも販売されているCBDオイルに含まれるCBD(カンナビジオール)は、5-HT2Aに結合し、THCの精神活性作用を相殺する働きを持つ。また、テルペン(β-カリオフィレン、リモネンなど)という物質は、5-HT2A・CB1受容体に作用し、THCの効果を増幅することで知られている。なので大麻の品種の中で、THCとテルペンの含有量が多く、CBDの含有量が低いものは、サイケデリクスに分類されてもおかしくはないと言えるのだろう。しかし繰り返しになるが、大麻と一括りに呼んでも、その品種は膨大なものになり、それらをどのように分類していくのかは、サイケデリクス哲学とサイケデリクス科学の探究成果をもとにして議論しなければならないだろう。フローニンゲン:2025/2/12(水)16:00