映画「助産師たちの夜が明ける」
監督:レア・フェネール
ルイーズとソフィアは念願の助産師として働き始めるが、初日から壮絶な現場に圧倒される。新しい命に出会う喜びが助産師たちの結束を強めていく一方、オーバーワークとストレスに押しつぶされそうになる日々をドキュメントさながらのリアリティで描いた"どうやって撮影したんじゃ?"的映画。
100分間あの病院に連れてこられて彼女たちの隣に居たような、、息つくヒマのない映画でした。助産師たちの実態を観客に体験させるためのスピーディな脚本だと思います。実際に出産する方々に協力を得た手法も奏功して緊迫度がマシマシ!
本物の助産師たちに取材して得たリアルエピソードから紡いだ脚本だし。
もはや実態再現とも言える映画に仕上げた目的はその労働環境・見合わない賃金に対しての警鐘を鳴らすためでした。
フランスでは助産師は"世界で最も美しい職業"と言われているそうで。そらまさにやりがい搾取ってことです。
脱線しますが私は2年間訪問介護の現場で働かせていただきました。その職場で出会った60代のベテランケアワーカーFさんはパワフルで手際もよく、利用者さんとの距離も近いお手本のような方でした。そんなFさんでも私より400円時給が高いだけって事実がありました。パートだからってのもありますが明らかに能力と労働に見合ってない賃金。「そんなに大幅に給料上げてくれる業界じゃ無いのよw」てガハハ笑って話してらっしゃいました。
「給料安くても職員少なくても明日ケアを待ってるバアさん達いるからねえ」と。そう、助産師とは種類こそ違えど似たようなモチベーションで仕事に勤しんでいらしたのを思い出しました。
無理のない労働環境を整えるには人材の余裕が必要です。人材を集めるには労働に見合った賃金が必要です。ケアする側の人の精神や肉体を蝕んでいく
と救える命も救えなくなる恐れがある。
"最も美しい職業"とは?だからなんだ?やりがい搾取が許されるのか?
今作は新しい命が生まれる尊さ、母親の凄さ、家族の祈りをリアルに目の当たりにして感動するだけの映画ではないです。それが当たり前に提供されてると思うなよと。むしろ社会が、あなたが軽視しとるんちゃうんか?と。
美しさをめくって裏側を見せつけて叫び、闘っている映画です。
あるシーンに記された印象的な言葉があります。ぜひスクリーンから見つけて心に刻み、考えましょう。夜が明けるにはどうすればよいのか。
LE MONDE DE DEMAIN NAIT ENTRE NOS MAINS.
(明日の世界は、私たちの手の中で生まれる)