救急外来の若い女性の腹痛、産婦人科疾患の鑑別のポイント?

はじめに

個人的には「救急外来の若い女性の腹痛」が苦手です。

どんなときに産婦人科へコンサルトするべきか非常に悩ましく思っています。もし救急外来で産婦人科疾患を予測できる身体所見やスコアがあれば、便利かなと思っていました。産婦人科疾患を予測するスコアを開発した以下の研究論文を紹介します。

Development of the “POP” scoring system for predicting obstetric and gynecological diseases in the emergency department: a retrospective cohort study. BMC Emerg Med 20, 35 (2020). Okada, A., Okada, Y., Fujita, H. et al.

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研究の要約

背景
産婦人科疾患は、急性腹痛を呈する若い女性にとって最も重要な鑑別診断の一つである。しかし、救急外来における産婦人科疾患のスクリーニングのための臨床的な予測ルールはほとんどない。

本研究では、救急部門における産婦人科疾患の診断のための予測モデルを開発することを目的とした。

方法
研究デザイン:単施設過去起点コホート研究
セッティング:都市部の1-3次対応の救命救急センターの救急外来
対象患者:腹痛を有する16~49歳の若年の女性
アウトカム:産婦人科疾患(生理痛を除く)の診断
解析:身体所見を説明変数としてロジスティックモデルを用いて予測モデルを開発した。


結果
27,991人の救急患者のうち、740人が解析対象となった。うち産婦人科疾患と診断された患者は65例(8.8%)であった。

POPスコア
-産婦人科疾患の既往歴あり +1
(Past history)
-下痢など他の随伴症状なし +1
(Other symptom)
-腹膜刺激徴候あり     +1
(Peritoneal irritation)

ロジスティックモデルをもとに上記のスコアを開発した。

0/1点をカットオフ値とすると、
感度 0.97(95%CI: 0.92–1.00)
特異度 0.39 (95%CI: 0.35–0.43)
陰性尤度比 0.08(0.02–0.31)

2/3点をカットオフ値とすると、
感度0.23(95%CI:0.13~0.33)
特異度0.99(95%CI:0.98~1.00)
陽性尤度比 17.3(95%CI:7.0~38.0)

較正能の評価

結論
このPOPスコアは、救急における産婦人科疾患のスクリーニングに役立つかもしれません。異なるデータセットの予測性能と外部妥当性の検証のために、さらなる研究が必要です。

まとめ

臨床予測スコアは外的妥当性の検証が今後必要ですが、産婦人科疾患の鑑別に迷ったら、役に立つかもしれません。

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