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ECPR開始前の血液ガス分析のpH値は予後と関連するか?

この記事では下記のECPRを実施した患者に対して血液ガス分析のpHと予後との関連の論文について日本語の要約を紹介しています。

研究にいたった経緯

ECPR(体外式膜型人工肺を用いた蘇生)を実施するかどうか、臨床現場で迷うことがあります。もしECPR導入前にわかる情報で予後に関連する因子がわかればECPR導入の意思決定につながる可能性があるかと思いました。

特に、ECPRを実施する際には大腿動脈からカテーテルを挿入するために動脈血ガスを必ず採取でき、この血液ガスの結果が予後と関連しているのではないかと考えました。特にpHは代謝性、呼吸性アシドーシスを反映し、蘇生の質、心停止時間、臓器障害、脳の虚血の程度を反映しているものと考えました。血液ガス分析のpH値と予後との関連について調べてみました。

研究の要約

体外式心肺蘇生法(ECPR)で治療を受けた院外心停止(OHCA)患者において、血液ガス評価におけるpH値と神経学的転帰との関連を明らかにすることを目的とした。

方法
2012年7月1日から2016年12月31日まで、大阪府で実施された院外心停止患者を対象とした多施設共同前向き観察研究(CRITICAL研究)のデータベースを用いた。ECPRによる治療を受けた成人院外心停止患者を対象とした。外傷などの外的原因による心停止患者は除外した。ECPR実施前の血液ガス分析のpHを3分位にわけ、1か月後の良好な神経学的転帰に対するオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)をロジスティック回帰分析で計算した。性別、年齢、バイスタンダーによる目撃、バイスタンダーによるCPR、病院前の初期心調律、病院到着時の心調律などの潜在的な交絡因子を調整した。

結果
データベースに登録されていた9822例のうち、最終的に260例が解析対象となった。pHの値をもとに3つにわけたグループは、Tertile 1:pH ≥ 7.030、Tertile 2:pH 6.875-7.029、Tertile 3:pH < 6.875であった。1ヵ月後の神経学的転帰について、第1群と比較した第2群と第3群の調整済みORは、それぞれ0.26(95%CI 0.10-0.63)と0.24(95%CI 0.09-0.61)であった。

結論
今回の多施設共同観察研究では,ECPRを実施した院外心停止患者において,ECPR実施前の低いpH値(<7.03)が1ヵ月間の好ましくない神経学的転帰と関連することが示された。ECPRの適応を検討する上で参考になると思われる。

まとめ

この研究ではECPRが実施された院外心停止の患者においてpHが低いと神経学的予後が不良と関連があることが示されました。もちろんpHだけでECPRの適応を決めることはできませんが、一つの予測因子として臨床で役立つ可能性があるかと思われます。

参考

Association between low pH and unfavorable neurological outcome among out-of-hospital cardiac arrest patients treated by extracorporeal CPR: a prospective observational cohort study in Japan. 

Okada, Y., Kiguchi, T., Irisawa, T. et al.

J intensive care 8, 34 (2020). https://doi.org/10.1186/s40560-020-00451-6

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