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旅館業営業許可取得時の行政ハラスメントについて

先日新宿区で旅館業の営業許可を申請してきました。既に当該申請は受理され、無事営業許可も取得した後にこのポストを書いているのですが、書いている主旨としては、「行政ハラスメントに気をつけろ」です。


行政ハラスメントとは何か

旅館業申請時、申請から許可取得までの間、担当する区の行政官と対面、または電話やメール等で1-2ヶ月程度やりとりしながら手続きを進めていきます。行政ハラスメントとは、行政官が申請手続きの過程で行う指導により事業者が被る嫌がらせのことです。なぜ嫌がらせということができるかといえば、それらが、法律的な根拠が乏しいにも関わらず、行政官、またはその区の課の方針や正義によるものであるからです。よく生活保護相談をした当事者に対して、窓口で色々難しい理由を並べ立ててやんわり帰ってもらうような対応が問題提起されたりしますが、それと同じような部類のものです。

下記で実際に弊社が経験した実例を紹介してみたいと思います。これから申請を自身でやってみようという方は参考にしてみてください。

実例

義務でない指導要綱の強制

問題となったのは、「新宿区興行場、旅館業及び公衆浴場の営業に関する指導要綱」の4条に記載の営業開始する旨の周知文の標識設置についてです。

第4条1項2号
営業の許可を受けようとする者は、営業許可申請書を提出する前に、この要綱による指導を受けるとともに、標識(第 1 号様式)を少なくとも14日以上、営業予定施設等において公衆の見やすい場所に掲示すること。

新宿区興行場、旅館業及び公衆浴場の営業に関する指導要綱

しかし、この指導要綱とは、民主主義の元、国会や新宿区議会で承認された法令や条例とは異なり、新宿区の担当課が作成した内規のようなもので法的な拘束力はありません。言ってしまえば、行政側の勝手ルールであり区民の意思ではありません。事業者側が最終的に標識設置するのかどうかは自由です。地方自治法を見てもわかります。

14条2項
「普通地方公共団体は,義務を 課し,又は権利を制限するには,法令に特別の定めがある場合を 除くほか,条例によらなければならない。」

地方自治法

今回の申請の中で担当の行政官から標識の掲示と標識の設置報告書を求められた際に、あくまで指導要綱であることから申請者の任意になることを担当者の上長を含めて口頭で確認しました。
しかし、上長が去った後に、その担当者は、「絶対に」という言葉を使って掲示するように再度申請者である弊社に指導しました。

法的義務ではないけれどもやって欲しいという趣旨で一度そういった指導をする分には実務上許容されるものかと考えますが、双方で、あくまで法的義務でないことを確認し、申請者(私)が任意で判断する旨を表明した後に、「絶対」という表現を使って掲示と報告をするように指導したのは、行き過ぎた圧力であり、糾弾して良い言動なのではないかと感じています。

当初は、多少の歩みよりも必要かと考えて、掲示を行い設置報告書までは提出しましたが、営業許可手続きの終盤に掲示の見取り図も提出せよと言われた際に「地方自治法14条2項に違反しない内容で進めてください」と伝えたところ、以降は求められなくなり、営業許可まで至りました。

営業開始することを掲示して公衆に知らせましょうという理屈は、納得できるものの、一方で事業者にとっては、掲示の用意、標識の設置に費用や手配で負担がかかるものになります。また、もともと民泊などでやっているのであれば事前周知で既に宿泊施設として営業する通知は民泊の営業開始時に済んでいるため、旅館業になるタイミングでの周知の効果はそこまでない気もします。法的義務ではないことを認識し、行政官とも確認した上で、やるやらないは自身で判断すれば良いと思います。(江東区などのように条例に標識の設置などが入っているケースは法的義務になるので注意)

行政手続法34条違反

「"建築士による検査済証"がないと営業許可が難しいんですね」

これは申請時に、建物が建築基準法に適合している書類を求められたときに担当の行政官が私に対して発言した内容です。申請時に必要な書類は、旅館業法、条例や規則に列挙されていますが、そこに建築基準法関連の書類というものはありません。旅館業営業する上で建築基準法に従う必要はあるものの、旅館業法の営業許可においては、法的な提出義務のない書類であるにも関わらず、提出を要求し、それがないと営業許可ができないかのような発言をするのは、明らかに行政手続法に違反するのではないかと考えます。

第三十四条
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。

行政手続法

最終的に、こちらも申請時に明確に拒否して、その後言われることはなく営業許可に至っています。しかし、この書類がないと営業許可が難しいという指導を受けた無知な事業者は、建築士に依頼して必要な書面の用意に取り掛かり大幅に旅館業営業許可が遅延することになるでしょう。

結び

よく理解している行政官であれば、こちらが任意か法的義務のあるものかをしっかり理解していることを示せば、そこまで強くは求めてこないはずです。必要以上に要求した際は行政手続法上問題となることがわかっているのだと思います。しかし、行政手続法の認識が甘い行政官やそれへの忠実性に欠ける行政官は、少なくない印象で、彼らは無神経に法律で定められていることを超過した内容を要求してくることがあります。

小規模事業者が自身で旅館業申請する際に、同じ道を通る可能性が高いので、その際にどこまで行政の求めに応じるのか自身で判断する際の参考にしていただければ幸いです。

こういった行政ハラスメントの被害者にならないためにどうすれば良いのかは別のポストで少しまた解説してみたいと思います。

一軒家ホテルの方では、新宿区の旅館業申請を含めた運用代行サービスを整えていますので、ご興味ある方はお気軽に電話かメールにてお問い合わせください。

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