Figmaから多職種協働について考える①
Figmaに関する記事を何回か読んでいて、使ったことはまだないのですが、Figmaのような事例は医療における多職種協働への違った視点も学べるかなと思い、自分なりに少し学んでみることにしました。
Figmaとは
Figmaとは、同社HPには以下のように書かれております。*1
デザインは常に進化している分野であり、その進化は単に技術やツールの向上だけでなく、作業のプロセスやアプローチにおいても見られます。また、デザインはあらゆる分野で必要とされるようになっており、例えばデジタル庁では、デジタル技術をユーザーフレンドリーにするため、デザインの力としてFigmaを採用しています。*2
Figmaのビジョンは「すべての人がデザインにアクセスできるようにする」であり、デザインの民主化とも言えるでしょう。*3 これまで、デザインは個人の創造的な取り組みと見なされがちでしたが、今日ではその概念は大きく変わってきており、この変化を牽引しているのが、Figmaと言えるのかもしれません。Figmaは、個人の創作活動をチームでの共創へと変革し、チーム向けの強力なコラボレーションデザインツールとして普及してきているかと思います。今回の記事では、Figmaの特徴や他社比較などをもとに、医療における多職種協働について考えていければと思います。
ブラウザファーストアプローチ
Figmaは2012年にWebGLというテクノロジーから生まれました。*4 従来、デザイン業務は専用アプリをインストールしローカル環境で作成したPDFなどをDropboxなどでやり取りしているような非効率的な状況でした。*5 ブラウザ上で直接デザイン作業を行えるようにしたことで、地理的な制約を超えた共同作業が可能になりました。Wordをメールなどでやりとりするのと、Googleドキュメントでクラウド上でやり取りするのを比較すると想像しやすいでしょう。*5 また、このブラウザファーストアプローチは、デザイナーだけでなく、プロダクトマネージャーやエンジニア、さらにはセールスや法務部門のメンバーまで、デザイナー以外の職種がデザインプロセスに容易に参加できる環境を提供することにつながっています。これにより、多職種間のフィードバックが容易になり、デザインの質とプロジェクトのスピードが向上する一因になっているのかと思います。1つのURLさえあれば、誰でもどこでもデザインに関わることができるようになったのです。*6 デザインの専門性を高めるようなニーズのツールが多い現状の中で、ユーザー視点でのプロセスにペインが眠っているところを捉え、ブラウザファーストアプローチというソリューション提供により、デザインを民主化し市場を広げているのがとても示唆に富むかと思います。
クロスサイドネットワーク効果
当初、Figmaはデザイナー間の直接的なネットワーク効果により初期の成長が牽引されておりました。*5 しかしそこには成長の限界があるかと思います。
ちなみに、ネットワーク効果とは、アンドリュー・チェン氏の「ネットワークエフェクト」によると以下のように定義されています。*7
kwokchainのブログによれば、さらなる成長の要因となっているのは、クロスサイドネットワーク効果であり、それは、デザイナーの周りにいるエンジニア、プロダクトマネージャーにFigmaの良さが伝わり、さらに別のプロジェクトに派生していくことであり、チームを超えて、さらには組織全体に伝わってくプロセスだとしています。*5
これは、アンドリュー・チェン氏の「ネットワークエフェクト」によるところのアトミックネットワークの形成に関わる部分でもあるかと思いました。転換点を迎えるまでアトミックネットワークを複数のデザイナー起点で作り、組織全体にネットワーク効果が伝播するまでそれを維持できたことが成長の一因となっているのかと思います。
実際、Figma利用者の2/3は、非デザイナーが利用されています。*4
アトミックネットワークの形成コストの低下は、前述のブラウザファーストアプローチによるところも大きいかと思います。
例えば、Figmaはデザインとエンジニアリングの垣根を低くしました。*4 デザイナーはエンジニアリングの制約を理解しやすくなり、逆にエンジニアはデザインプロセスに積極的に関与できるようになっています。結果として、デザインの品質向上だけでなく、プロダクト開発の効率化にも寄与し、Figmaにおけるデザインとエンジニアリングの統合により、デザイナーは実装可能性を考慮したデザインを行うことができ、エンジニアはデザインの意図をより深く理解し、それをコードに反映することが可能になっているのかと思います。
また、Figmaはブラウザ上で同時進行で進められるようになっており、透明性も高くなっています。これらのプロセスは、ただプロダクト開発の効率性を上げるためだけでなく、シームレスな他部署間のフィードバックループが形成されることで最終的なユーザーエクスペリエンスの質を向上させることにも繋がっているのかと思います。このような正の循環が、デザイナー起点で、クロスサイドネットワーク効果が波及していく要因の一つとなっているのでしょう。
Community-led Growth
組織内での普及の鍵は、クロスサイドネットワーク効果に一因がありそうでした。では、組織外の普及にはどのようなものがあるでしょうか。その一因としては、「Community-led Growth」が挙げられるのかと思います。Figmaでは、デザインツールを単なるプロダクトではなく、熱量あるデザイナーたちの「コミュニティ」によって成長する点が重視されています。*6 コミュニティは世界各地に200以上あり、各地域のコミュニティには「エヴァンジェリスト」がおり、コミュニティでのやりとりを常に活性化する仕組みを形成しているようです。*6
デザインの共有もできる環境が整っており、これはGithubのデザイン版とすると理解しやすいのかもしれません。*5 また、デザインの共有に留まらず、プラグインにも注力していることで、拡張性が増し市場の拡大に貢献していることが考察されています。*5
ブラウザファーストアプローチにより、潜在的なコスト削減を果たしながら、コミュニティ重視としてユーザー自身により使いやすくしていける土壌を整えることで、クロスサイドネットワーク効果やCommunity-led Growthに繋がっているのかなと思いました。
他社比較
最後に、先日読ませていただいた山田英夫氏の「異業種に学ぶビジネスモデル」の中での、異業種のビジネスモデルを見る視点を元にChatGPTに差異を分析してもらいました。*8
最新のツールの情報は反映されていない部分は多々あるかと思いますが、大まかな違いの傾向は参考になる部分もあるのではないかと思います。
次回は、これらのことを踏まえて、現状の医療における多職種協働において、Figmaのようなアプローチで参考になる部分はないか個人的に少し考えてみたいなと思います。
ヘッダー画像:generated by DALL-E
【参考資料】
*1:Figma.FIGMAでのデザインの概要(2024年4月6日参照)
*2:Figma.デザインの公共性(2024年4月6日参照)
*3:NewsPicks.2022/11/25.【Figma上陸】全ビジネスパーソンが直面する「デザイン民主化の時代」
*4:NewsPicks.2022/6/19.【フィグマ創業者】デザイナーの黄金時代がやってくる
*5:kwokchain.June 19, 2020.Why Figma Wins
*6:NewsPicks.2022/6/18.【日本上陸】最強のデザインツール、フィグマが凄い
*7:アンドリュー・チェン.2022/11/17.日経BP.ネットワークエフェクト
*8:山田 英夫.2014/11/1.日経BPマーケティング.異業種に学ぶビジネスモデル
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