EBM(根拠に基づく医療)のサプライチェーンを考える②
前回は、EBMについて簡単に考えていきましたが、今回はサプライチェーン視点で考えていければと思います。
サプライチェーンについて
サプライチェーンとは、以下のように説明されておりました。*4
基本的には、原材料の調達からエンドユーザーまでの間のプロセスを可視化したものと言う理解です。概念的には業務フローやバリューチェーンなどの方が合う場合もあるかなとも悩みましたが、今回は、第一想起だったサプライチェーンとして、EBMの各プロセスを考えていければと思っています。
そこで、まずはEBMの各ステップ(1〜4)を簡単に図示化してみました。
EBMの場合でのサプライチェーンは、①で疑問・問題(PICO)が原材料として調達され、そこから各ステップで疑問が加工され、情報が付加されていき、④を終えることでエンドユーザーに適用される(意思決定できる)形で供給されていくというイメージで考えています。
サプライチェーンを管理する手法として、サプライチェーンマネジメントがあります。サプライチェーンマネジメント(SCM)について、美藤信也氏の資料では、『「ものと情報 」の管理を総合的に行い、高速、高品質、低価格、カスタマイゼーションの4つを同時進行させることが必要である』と説明されています。*4
また、The Global Supply Chain Forumでは、SCMについて以下のように説明されております。*5
このようにSCMとは、時間軸を意識した上で提供する価値の最大化とサプライチェーン全体のコストの最小化を図っていくことが目的になるのかという理解でいます。
そして、SCMの基本理論としては、TOCが挙げられるかと思います。*6
TOCについて
TOCとは、ゴール・システム・コンサルティング & リ・デザイン研究所のnoteを参照すると、業務やシステム全体の能力(パフォーマンス)は、能力が一番弱いプロセス(=制約:Constraint)によって決まり、制約を正しく認識して、スループットが最大になるように徹底活用すること、これが基本になると説明されているかと思います。*7 また、スループット最大化のためのカギは、制約(ボトルネック工程)での単位製品あたりの製造時間であり、リードタイムなどの時間の概念も取り入れることが大切とされているという理解です。*8
そして、制約(Constraint)とは、正確に定義すると、「システムや組織のスループット(全体の収量や利益)を決めている、具体的(Tangible)に定義できる(存在している)実体と説明されています。*7
また、スループットとは、販売を通じて実際に発生するお金であり、スループット会計は以下の様に示されています。*9
今回は、原材料を疑問・問題として、最終的に目の前の患者さんのための意思決定として供給される流れの各ステップを制約と仮定して考えられたらと思っています。
また、スループット会計における各用語のイメージとしては、原材料費としては疑問調達にかかるコスト、販売によって得られた収入を意思決定と考えてみようかと思います。
業務費用としては、各ステップにかかるコスト、そして、スループットと業務費用の差分が利益ですが、今回は利益を納得感として考えようかと思っています。
これは、樫田さんのnoteで、良い意思決定とは、「a / 正しい」「b / 早い」「c / 納得感がある」の3つの要素で構成されると説明されており、以下のような式にできるかと思っています。*10
これらを踏まえると以下の様に整理できるかと考えています。
今回は、サプライチェーン視点で、EBMを個人的に整理してみました。次回は、これまでの考えを踏まえながら、各ステップごとにもう少し深ぼっていければなと思います。
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【参考資料】
*4:美藤信也.2008 年 2008 巻 16 号 p. 89-96.サプライチェーンマネジメントの基礎理論
*5:Douglas M. Lambert.The Ohio State University.Supply Chain Managemen
*6:村井信行.職業能力開発報文誌 第14巻 第1号.サプライチェーン・マネジメントによる戦略的企業間連携に関する一考察
*7:ゴール・システム・コンサルティング & リ・デザイン研究所.2023年9月22日.制約を科学する①第1部(制約とは何か)-1(小説「ザ・ゴール」:ボトルネックを徹底活用する5ステップ)
*8:ゴール・システム・コンサルティング & リ・デザイン研究所.2023年10月20日.制約を科学する③第2部(逸失利益とは)-1(TOC流!儲けるための考え方)
*9:ゴール・システム・コンサルティング & リ・デザイン研究所.2022年5月19日.スループット会計【前編】
*10:樫田光.2020年6月22日.意思決定のROIという考え方
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