フォーミュラリー
【フォーミュラリーについて】
厚生労働省では、以下のように定義されているようです*1。
『医療機関等における標準的な薬剤選択の使用方針に基づく採用医薬品リストとその関連情報。医薬品の有効性や安全性、費用対効果などを踏まえて、院内の医師や薬剤師等で構成される委員会などで協議し、継続的 にアップデートされる』
簡単にいうと、大きな病院にあるような採用薬をイメージしてもらえるといいかもしれません。その採用医薬品の使い方(処方の仕方)のような情報も含まれ、それらを定期的にアップデートしていく仕組みのようなものがフォーミュラリーです。昨今よく聞くのは、フォーミュラリーを地域毎に展開する『地域フォーミュラリー』が多いかもしれません。
具体的にフォーミュラリーはどのようなものなのか。フォーミュラリーを作成するにあたり、指標はいくつかあるかと思います。Gordon D Schiffらの文献ではフォーミュラリーの意思決定の枠組みとして以下のようなカテゴリーのチェックリストを提供してくれています。*2
A:必要性のエビデンス
自分たちのフォーミュラリーに追加するための説得力のある必要性はあるか?
B:有効性
この薬の主張を裏付けるエビデンスは何か?
C:安全性
どのような安全上の問題を考慮する必要があるか?
D:誤用による影響の可能性
フォーミュラリーに含まれた場合、誤用や使い過ぎの可能性は何か?
E:コストへの影響
この薬の費用を正当化できるか?
F:意思決定情報、計算、タイミング、プロセス
委員会が利用できる情報とエビデンスの質と強さは何か?
本文では、この6つのカテゴリーから計48のチェックリストを提供しています。
また、戸田中央医科グループでは、フォーミュラリーを公開してくれています。
手順なども公開してくれていますので、ご興味ある方は以下のサイトを参考にしてみるといいかもしれません。
【所感】
フォーミュラリーでは、EBMの実践をし、地域なり、必要な所属範囲ごとに、それらの簡易ガイドラインのようなものを作成していく。医療費高騰、情報の蔓延、薬物治療の複雑化してきている昨今の現状では必要性が増してきている仕組みなのではないかと思います。高齢率は上がり、生産人口はさがり、そろそろ基盤となるシステムのアップデートを考えていかなければいけない時期かもしれません。限られたリソースのなかで、どう公平性に医療資源を分配していけるか、薬剤に関する部分は薬剤師が責任をもって管理しなければいけない世の中は近づきつつあるのかもしれません。フォーミュラリーは、そういった部分を担保していくシステムの一つとしても期待できるかと思います。
【参考文献】
*1:中央社会保険医療協議会 総会(第367回) 議事次第 外来医療(その3)について
*2:A prescription for improving drug formulary decision making.PLoS Med. 2012;9(5):1-7. PMID: 22629233