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ヘブライ語の代替長母音(תשלום דגש)
代替長母音とは、別名強ダゲッシュ代替母音変化とも呼ばれ、二重となるはずの子音の前の母音が変化する現象を指す。
二重子音(強ダゲッシュ)とは
二重子音とは、実際には子音の長音化あるいは日本語の促音に近い音で、子音にダゲッシュ(強めることの意)と呼ばれる点を付して表記する。
例えば、עַמִּי、שַׁבָּת、הֻגַּשׁ 、הִלֵּל など。
これらのダゲッシュが付されている子音は重なっていることを示すが、実際の発音は、hillelのようにその子音を長めた音または詰まった音のように発音する。
二重子音の理由はいくつかあるが、最もよく知られているのは、語型パターンの重複と、同化した子音の代わりの重複である。二重子音は母音の後に来て音節を閉じる。例えばהִלֵּלは、2つの音節があるが両方とも閉音節となる( הִ-לֵלでなく、הִל-לֵלとなる)。
喉音における代替長母音
喉音4子音、ע, ח, ה, א は、二重とはならない。ヘブライ語話者は、喉音子音を二重に発音する能力を段階的に失い、その結果閉じられていた音節を開いて発音するようになった。最初はアラビア語のように短母音と長母音の区別があったが、ヘブライ語で喉音子音の二重発音能力が失われ、閉音節が開かれた音節になった時、短母音であるa、i、u はアクセントのない開音節で発音されるようになった。この現象がより後代に起こっていたら、短母音は何の影響も受けずにそのまま残っていただろう。実際にティベリア式母音記号では、パタフ、ヒリック、クブーツなどの短母音がアクセントのない開音節で付されているのを見る。
例えば、יְרַחֵם、נִחֵשׁ、יְרֻחַם など。
しかしこの条件下で、短母音が長音化するプロセスをとおり、最終的にティベリア式母音記号では、パタフがカマツとなり、ヒリックがツェーレーとなり、クブーツがホラムとなった。
הָאֶבֶן、מְבֹהָלִים、יֵחָשֵׁב、מֵאֶרֶץ、יִתְגָּעֲשׁוּ など。
これらの変化を代替長母音と呼ぶ。この現象は、א が最も多く、次に ע、次に ה、最後にח の順となる。これは、二重子音発音能力が失われていった過程を表していると考えられている。興味深いことに、ה および ח の代替長母音の多くは、נ の同化であり、語型パターンによるものではない。
例えばニフアル態の יֵחָשֵׁב、יֵהָרֵס や、前置詞 מ の後の מֵחֹרֶף、מֵהֵיכָל など。
ר における代替長母音
喉音4子音に加えて子音 ר も同様のカテゴリーに入る。ר は喉から発音する子音ではないため、二重発音の能力は完全に失われなかった。聖書の時代にもいくつかの痕跡が残っている。例えば「לֹא כָרַּת שָׁרֵּךְ」(エゼ16:4)。この場合両単語とも ר の前のカマツはOと発音する。
多くの場合、ר の前の母音は長音化する。
לְגָרֵשׁ、גֵּרַשְׁתָּ、גֹּרְשׁוּ など。
おそらく、ר の二重発音の問題は、א と同様早い段階で始まったのだろう。
現代ヘブライ語のルール
代替長母音のルールは、基本的にティベリア式母音記号の伝統による聖書の発音に根ざしている。しかし現代ヘブライ語に関しては、歴史上のヘブライ語資料における文法状況がより複雑であるため、ヘブライ語アカデミー決定の包括的ルールがある。
★ピエル態では、א と ר の前のみ代替長母音となる
שִׂחֵק、מְנַהֵל、יְנַעֵר - לְשָׁרֵת、פֵּאֵר
★プアル態では、ח の場合のみ代替長母音にならない
פֹּאַר、יְנֹהַל、מְשֹׁעָר、מְפֹרָשׁ - נֻחַם、יְנֻחַם
★聖書においては、現代のルールと異なる例外が見られる。
代替長母音:דֹּחוּ、אֵחַר、נֵהַלְתָּ
短母音:נִאֲפָה、יְנַאֲצֻנִי、נִאֵץ、בַּאֵר