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「よはく製陶室」という屋号

こちらはお客様の理想の器をお作りする、オーダーメイド陶器のお店です。

オーダーメイドの陶器屋さんを立ち上げることに決めたものの、お店の名前がなかなか決まりませんでした。詰め込みたい思いが多すぎて絞りきれなかったのです。
お仕事用に下ろしたまっさらなノートが思いと候補名でどんどん埋まっていきました。1ヶ月経ち3ヶ月経ち、人に相談しても一旦放置して寝かせても、全然決断できません。今日こそ決めるぞとノートと睨めっこしつつも余白に関係ない言葉を書き込んで逃避していました。

思えば、昔から教科書やノートの余白に落書きをするのが大好きでした。
エンドレスで聴いていた歌、知ったばかりの美しい言葉、ブラキオサウルスや赤血球の絵、気ままな連続模様、うろ覚えのレタリング文字、オチの無いパラパラ漫画。
余白には好きなものだけが凝縮されて散らばっていました。

ーーあれ、でも、書いたものを見返すことはそんなに無かったような?

それよりも新たな余白に書き込む時の楽しさをより鮮明に覚えていました。
どうやら好きなものが連なった場所より、何も書かれてない余白の『なんでも書いていい自由さ』、それこそが私の好きなものだったようです。

ーーそういえば、オーダーメイドの陶器屋さんなのにこちらの思いばっかりじゃない?

お客様の思いに応えたいのに考えていたのは自分のことばかりだったと気が付きました。
お客様がどんな思いで依頼してくださるかはわかりません。それなら私の中のオーダー製作のための場所は、まっさらなまま空けておいた方がいいのでは、と考え直してやっと決まった名前が「よはく製陶室」です。

どうぞみなさまご自由にオーダーください。できるだけのことを致します。

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