スーパーでブロッコリーを買った。
スーパーでブロッコリーを買った。
「最近、外食が増えて脂を摂りすぎている。
何か栄養のあるもので体内のバランスを取れ。」
そう自分が自分にアラートを出してきたからだ。
高校時代にどこかの大学の過去問で
「ブロッコリーはすこぶる体にいい」
みたいなニュアンスの英文を読まされたのを思い出した。
仕事帰りにスーパーに寄る。
夜のスーパーはやけに眩しい。
自動ドアの向こうに、綺麗に陳列されている野菜たち。
スーパーから出てきた人の背中から、
誰がどんな気持ちで作曲したのか、謎のオリジナルソングが聞こえる。
仕事で疲れ切った身体にはスーパーは堪える。
どうも、こんばんは。
私はブロッコリーを買うためだけにいらっしゃったよ〜
ブロッコリー売り場で
私は睨んでいる、ブロッコリーを。(謎の倒置法)
別になんの恨みもないのだけれど。
フォルムは野菜の中でも結構好きな方だし、
ふさふさを形成しているミニブロッコリーが特に可愛いと思う。
味に関しては、好きとは言い難いが、
子どもの頃から食卓に馴染みのある顔なので
邪気にはできない従兄弟のような間柄だ。
「きゅうりはボツボツがある方が美味しいの」と、
むかし母が教えてくれたのを思い出した。
ブロッコリーはどうやって新鮮なブロッコリーと
そうでないブロッコリーを見分けるのだろう。
ふさふさが多い方が良いのか
それともふさふさに視線を向けさせておいて
実は茎の太さとかが肝心なポイントなのだろうか
考え出すとキリがないので、
とりあえず、青々とした少し大きめなブロッコリーを選んだ。
ブロッコリー1個をレジに持って行ったので
店員からレジ袋の必要性を聞かれることはなかった。
家も近いし外も暗いので
生身で持ち帰ることにした。
茎の部分を掴む。
リレーの時のバトンの持ち方。
ブロッコリーバトン(または、バトンブロッコリー)を持ちながら、夜道を歩く。
お気に入りの路地。
ひと気がなく、暗くて狭い路地。
不安症の私はいつもこの路地を通るたびに
後ろから誰かに襲われたらどうしようと考える。
今日はブロッコリーを持っているので、
もし通り魔に後ろから刺されたら
死体の傍に転がるブロッコリーにメッセージ性が含まれてしまう。
だいぶ難解な事件になりそうだ。
大抵の探偵はきっとブロッコリーを軸に事件を解いていくだろう。
まさか、被害者がただ健康のためにその日たまたま買っただけのブロッコリーだとはつゆ知らずに…
間違った推理のせいでスーパーの店員が免罪で捕まってしまったら申し訳ない。
そうなったらブロッコリーのお陰で逃げ切れた殺人犯を
私はあの世で呪うだろう。
どんな呪いをかけようか。
髪の毛がふさふさの部分と同じ質感に変わるとか
いっそ体が真緑にしてやろうか
いや、そうなるとシュレックとキャラが被ってしまうな
あっ、まだオリオン座が見える。
春はいつ来るのやら…..。
家に帰って
並々にお湯を張った鍋にブツを放り込み
茹でて食べた。
茹で時間を誤って
びしょびしょになったブロッコリーは
少し苦かったけど、それなりに美味しかった。
ちなみに、ブロッコリーの最適な茹で時間は3分らしい。