悔しさの味
思い通りにならなかった悔しさを飲み込めずに口の中で弄んでいた。
そのままコピー機で資料を印刷する。
悔しさの味があったとしたら何味だろう。
自分の思い通りにならないとすぐ拗ねる友達がいた。
その子の横でどこか世界は自分よりなんじゃないかと思った。
年に二回開催されるお祭りはきまって冬にやってきた。
「今どこにいる?」
友だちからのメールに「入り口の方」と返した。
屋台が並ぶ通りの端っこで、自分がいる場所がはじまりだと思っていた。
向こうから小走りでやってくる友だちに
「も〜遅いよ〜」と悪態をつく私。
人の波に流されて私の元へたどり着いたあの子は、
優しい声で「ごめんね」と笑っていた。
「世界は優しさで溢れている」という言葉は
優しくない人目線の言葉だ。
何枚も紙を吐き出したコピー機をそっと撫でる。
口で弄んでいた悔しさはどこかに溶けてなくなっていた。
息を吸うと、口の中からインクの味がした。