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【美術展レポ】キース・ヘリング展 アートはみんなのために

先日、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されている、キース・ヘリング展に家族で行ってきました。

キース・ヘリングはカラフルでポップな絵を描くことで知られています。彼の作品は、文房具や小物のイラストにもよく見かけますが、実はあまり作者自身のことを私は知らないかもしれない……そんな好奇心にワクワクしながら会場に入りました。

Tokyo 東京会場
会期:2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)
場:森アーツセンターギャラリー [六本木ヒルズ森タワー52階]

Kobe 神戸会場
会期:2024年4月27日(土)~6月23日(日)
会場:兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー
 * 福岡、名古屋、静岡、水戸、と巡回

キース・ヘリング展 開催概要

東京会場は今週末までですが、4月から神戸へ、その後福岡・名古屋・静岡・水戸・と巡回するようですね。

本記事では、私が展覧会を見て興味を持った点を中心に書いています。



地下鉄の広告板にドローイング


1978年、ペンシルベニア州ピッツバーグからニューヨークに移り、スクール・オブ・ビジュアル・アーツに入学したヘリングは、絵画だけでなく映像やインスタレーションなど多様な美術表現を学びながら、美術館や画廊といった従来の展示空間から公共空間でアートを展開する方法を模索しました。中でも、人種や階級、性別、職業に関係なく最も多くの人が利用する地下鉄に注目。「ここに描けばあらゆる人が自分の作品を見てくれる」と、地下鉄駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークでドローイングをし、そのシンプルに素早く描かれた光り輝く赤ん坊、吠える犬、光線を出す宇宙船は多くのニューヨーカーの心と記憶に入り込みました。

公式ホームページより引用

活動初期のヘリングは、地下鉄の空いている広告板にチョークで絵を描いていました。1980年代は現代のようなSNSがない時代です。誰でも目にすることができて、多くの人に自身のアートを伝える手段として、公共空間を選んだようですね。

どんな人にも作品をみてもらう手段としては素晴らしいのですが、ん?許可のもと?かはわかりませんが、ヘリングの「アートはみんなのもの」という心が伝わりますね。

そんなサブウェイドローイングが5点展示されていました。

当時の絵を広告版からそのまま剥がしているという状態なのでしょうか。端っこがギザギザで当時の様子が目に浮かびました。

端っこがギザギザしてますね・・・
サブウェイ・ドローイング 1981-83年 チョーク


ポップアートの時代をつくったヘリング


私のイメージするヘリングの作品は、このポップアートです。黒い太い線で描かれていて、赤や青や黄色などの原色がとても鮮やかですね。

レトロスペクト 1989 シルクスクリーン 中村キース・ヘリング美術館蔵


ポスターで発信


キース・ヘリングは大衆にダイレクトにメッセージを伝えるため、ポスターという媒体を使いました。(中略)中でも、社会へのメッセージを発信したポスターは数多く、ヘリングが初めて制作したポスターは、1982年に自費で2万部を印刷した核放棄のためのポスターであり、セントラル・パークで行われた核兵器と軍拡競争に反対する大規模デモで無料配布されました。

公式ホームページより引用

ヘリングは、ポスターを通して、核放棄の廃絶や人種差別撤廃、エイズ予防、性的マイノリティの権利などの社会問題に対して、自身のメッセージを伝えました。また、子どもたち向けのポスターもたくさん制作したそうです。

ニューヨーク公共図書館の依頼で識字率の向上のために制作されたポスター
楽しさで頭をいっぱいにしよう! わかりやすい絵のメッセージですね。


アートはみんなのために


アートを富裕層にだけではなく大衆に届けたいと考えたヘリングは、ストリートや地下鉄での活動に始まり、自身がデザインした商品を販売するポップショップといったアート活動を通して彼らとのコミュニケーションを可能にしてきました。(中略)
ヘリングは彫刻や壁画などを世界の都市数十ヶ所でパブリックアートとして制作しています。そのほとんどが子どもたちのための慈善活動でした。

公式ホームページより

「赤と青の物語」シリーズは、子どもたちにもわかりやすい絵ばかりでした。次女はひたすら写真をとっていましたね。

どの作品もかわいくて、大人もクスっと笑顔になる作品たちです。

赤と青の物語 シリーズ(The story of red and blue)」(1989年)リトグラフ、紙
赤と青の物語 シリーズ(The story of red and blue)」(1989年)リトグラフ、紙
赤と青の物語 シリーズ(The story of red and blue)」(1989年)リトグラフ、紙


子どもはワークシートで楽しめる


最近の美術展では、子供たちにパンフレットを配ってくれることが多いです。こちらはキース・ヘリングの展示会で配布されたものです。

小2の次女は、どこにこの絵があるかなと必死に探しては写真を撮って、楽しんでいましたね。赤と青の物語コーナーでは、絵をみながら、なにか物語を想像していたのでしょうか。


まとめ


今の時代では、誰もが自分の考えを多くの人に拡散することができます。SNSがなかった時代では、どれだけ多くの人に自分の作品を見てもらえるか、とても重要であったことが、ヘリングの活動からわかりました。

彼は、美術館のように入場料を払って鑑賞するような特別な場所だけでなく、「アートはみんなのものである」という信念のもと、広く公共の場でアートを展開し続けました。命を削りながら、メッセージを伝え続けていた彼の姿には尊敬の念を抱きます。

今の時代であれば、ヘリングはどのような活動をしていたのでしょうか。SNSがある今でも、彼は実際の目で見ることができる公共の場での制作を選んでいたのでしょうか。

エイズにより31歳という若さでこの世を去ってから30年が経った今も、世界中の人がヘリングの絵を愛していることから、ヘリングの「アートはみんなのもの」という願いは、しっかりと伝わっていると思いました。

最後の展覧会のために制作したこの大作は、じっくりと見入ってしまいました。写真では質感や大きさが伝わりませんが、生と死の間で揺れながら精力的に活動していた様子がとても伝わる作品でした。

人生は儚い。それは生と死の間の細い線です。私はその細い線の上を歩いています。ニューヨークに住んで、飛行機で飛び回っているけれど、毎日死と向き合っているのです」
―1986年7月7日

公式ホームページより引用
無題 1988 アクリル、キャンバス



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ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

家族で月イチで美術展に行くことを「2024年のやりたい10のこと」のひとつに挙げました。部活や習い事で家族がそろう休日も少なくなりましたが、半日でも予定が合えば勢いで出かけるようにしています。

こうして、noteであらためて鑑賞を振り返ると、作品や作者について深く理解することができ、とても楽しいです。

次はどの美術展に行こうか、こちらの雑誌を眺めて考えています。


ヘリングは、ユニクロのTシャツにもありますね。


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