2021年12月1日
デルタ株で四苦八苦しているところに新たな変異株オミクロンが出現した。免疫回避の性質や感染力についてはまだ解明されていないものの、デルタ株を大きく上回る恐れがあり、気がかりである。ドイツやベルギーで確認された感染者のなかには発症が帰国の数日後という人もいることから、その間に知人や友人に恐らく接触しているだろう。欧州域内でのオミクロン株感染はすでに始まっている可能性が高い。水際対策では防げず、政策的に可能なのは拡大を鈍化させることだというのが専門家の見方である。
さて、その政策だが、ドイツは現政権と来週にも成立する次期政権とでスタンスが大きく異なっている。現政権はメルケル首相が科学者の警鐘にしっかり耳を傾けるということもあり、踏み込んだ規制を実施してきたが、次期与党はロックダウンなど規制度の高い措置を行わないとの立場だ。
背景には次期与党の一翼を自由民主党(FDP)が担っていることがある。同党はメルケル政権が行った全国的な接触・外出制限や営業禁止を強く批判してきた。これが一部の有権者に支持され、同党は9月の選挙で得票率を伸ばすことに成功しており、感染状況が厳しくなったからといって看板を簡単には変えられないという事情がある。
FDPと連立を組む社会民主党(SPD)と緑の党は同党の意向を斟酌しないわけにはいかなかった。FDPなしでは次期政権を樹立できないうえ、FDPには2017年の前回選挙後の政権協議を何の前触れもなしに突然、打ち切った「前科」があるからである。3党が改正感染防止法を先ごろ、成立させたことで、ロックダウンはできなくなっている。
だが、SPDと緑の党からは同法の施行後、ロックダウンを排除しないとの意見が出ている。次期首相に就任するSPDのオーラフ・ショルツ氏も27日ツイッターで、「必要なことは何でもやる。考慮しないものは何もない」と発信した。
3党の政権協定はすでに成立した。次期政権の樹立が確実となったことから、FDPの顔色をうかがう必要はもはやないのである。
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