2021年9月29日
日本のラグビー報道をネットで読んでいて、「ワールドクラス」という言葉をよく見かけるようになったのはいつ頃だろうか。記録を取っているわけではないので正確には分からないが、南アフリカを破り「スポーツ史上最大の番狂わせ」を引き起こした代表チームをエディー・ジョーンズ氏が率いていた頃のように思う。医師になるため今春29歳の若さで引退した福岡堅樹選手はワールドクラスと言って良いだろう。
筆者がこの言葉に初めて出会ったのは1998年だ。ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)が作成した選挙ポスターである。当時の首相でCDUの党首であったヘルムート・コール氏の写真の上に、「ドイツのためのワールドクラス(Weltklasse fuer Deutschland)」という語が記されていた。やがて「Weltklasse 」が二重線で消され、その上に「Kreisklasse(郡クラス)」との語が書きこまれていたので、今もよく覚えている。
曲がりなりにもドイツ統一を実現したコール氏が郡クラスということはさすがにないだろう。彼を嫌う左派の市民がその田舎臭さを捉えて皮肉ったものと思う。
コール氏にひき立てられ、政界の出世街道を進み、最終的に首相となったメルケル氏はワールドクラスと言える。メルケル後の独・欧州がどうなるのかを世界が注目していることはその証左である。
では、メルケル氏の後継者候補の2人はどうだろうか。ショルツ氏は国内レベルでは有能な政治家であり、ラシェット氏も州首相としては悪くない。しかし、メルケル氏の穴を埋められるかとなると、どうも心もとない。
正直に言って筆者はメルケル氏の首相就任当初、大きな業績は上げられないだろうと予想していた。直前の選挙戦の一環で行われたライバル社会民主党(SPD)のシュレーダー首相(当時)とのテレビ討論で完全に負けていたからである。
この予想はしかし、良い意味で裏切られた。後継者にも同じことを期待したい。