電話してください~ドイツ鉄道通過方法

2021年6月23日。
先日、不思議な踏切に出くわした。筆者の想像力を超えており、あえて紹介したいと思った。

それはフランクフルトの西の果てのツァイルスハイムから南のジンドリンゲンに向かう畑道にあった。左右と中央に草が生い茂るのどかな田舎道である。通行人はほとんどなく、自転車がときどき通る程度だ。

遮断機は下りていた。炎天下でのどが渇いていたため水を一杯飲み、その後は景色を眺めながら上がるのを待つことにした。が、いつまで経っても上がらない。電車が近づいてくる気配もない。地図を広げ別の地点で線路を通過することも考えたが、時間に追われているわけでもないので、さらに待つことにした。

そうこうするうちに夫婦らしき2人がやってきた。10分以上は経過していたと思う。それからしばらくして、男が「もう電話をしたのか?」と話しかけてきた。「電話??」

筆者の反応を見て、「電話をしないと上がらないんだよ」と言いながら自転車を降り、踏切の手前の左側にある黄色く細長い1メートルほどの棒に向かって「踏切を渡るから開けてくれ」と話しかけた。
すると、「今から電車が通過するから少し待ってくれ」との応答があるではないか。草むらに半分うずもれている色あせた角型の棒は電話機だったのである。

電話機に近づきよくよく見てみると、「ボタンを押して踏切を通過したいと伝えてください」といったことが書かれている…。「路傍のこんな小さな文字じゃ初めての人は気付かないよな〜」と思った。
しかし、驚きはこれだけではなかった。何と、渡った後で逆側にある同じタイプの電話機で「渡り終わりました」とまたまた伝えなければならないのである。

なぜ、踏切を自動化しないのか。電話に対応するための職員を四六時中、貼り付けておくというのは無駄以外の何物でもないだろう。合理化の網の目から抜け落ちる形で旧時代の遺物が生き残っていると思いながら、踏切を後にした。

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