2022年6月29日
ドイツ政府が警戒レベルを引き上げた。天然ガス供給不足がリアルに迫ってきた感じだ。今は夏で暖房が不要のため、大きな社会問題に発展していないが、朝晩の寒さが強まる晩秋以降は不満や悲鳴が出てくるかもしれない。
集合住宅で生活している筆者は長年、冬でも暖房を入れることが少なかった。隣や下の階の住人が暖房をつけていれば壁が温まり、その恩恵で室内温度がそれほど下がらないのである。コロナ禍前は帰宅後、さっさと就寝していたため、ハイツングを利用するのは基本的に週末だけで済んだ。関東北部の実家の方がはるかに寒い(冬の一時帰国で滞在していると、2週間ほどで耳にしもやけができる)。
天然ガスの国内供給が来冬、仮に完全に停止すると、わが集合住宅は暖房がなくなる。お隣さんなどが使う暖房に寄生したこれまでのライフスタイルは成り立たない。室内温度は実家よりも下がるだろう。
困るのは天然ガスに依存する市民だけではない。配給制が導入された場合、製造業向けの供給は優先度が低いため、メーカーは早い時点で減産や生産停止に追い込まれる恐れがある。それは日用品不足などの形ですべての市民を直撃するだろう。
しかし、ガス不足の恩恵を受ける業界や企業もある。再生可能エネルギー関連の事業を展開する企業にとっては天佑だ。例えばグリーン水素はガス価格が高騰すればするほど採算をとりやすくなるため、市場が一気に開花する可能性がある。ガス価格の高騰は数年続くと予想されており、水電解槽メーカーなどは密かにほくそ笑んでいるのではなかろうか。