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違憲判決を受けて、広がる不安

2023年11月22日。
コロナ禍対策の起債枠をGX基金向けに転用した独政府・与党の措置に対する違憲判決が大きな波紋を広げている。その潜在的な破壊力は巨大であり、適切に対処できなければ、政治・経済への甚大な負の連鎖は恐らく避けられないだろう。

政府は気候・トランスフォーメーション基金(KTF)の予算として24~27年に2,118億ユーロを計上する計画だった。憲法裁判所の今回の判決ではそのうち600億ユーロが違憲とされた。つまり基金の収入が3割近く減るのである。KTFの資金は住宅省エネ化、再生エネ電力助成、電動モビリティの普及支援、鉄道インフラ、半導体・電池生産助成、水素経済構築などに使われることになっているが、支出を大幅に抑制せざるを得ない状況だ。

リントナー財務相は議会で「過去10年間に比べ少ない資金でより効果的な政策を行わなければならない」と明言した。政策に優先度を付け、優先順位の低い分野への支出を削減ないし取りやめる考えを示唆している。

経済界からはすでに懸念の声が出ている。補助金受給を前提に進めてきたプロジェクトの見直しや撤回に追い込まれかねないためだ。ノースボルトが建設予定の電動車向け電池工場や、TSMCが欧州半導体3社と建設予定の工場は一体どうなってしまうのか。関係者の間には不安が広がっている。水素経済も政府の支援がなければ立ち上がらないだろう。

少ない資金で多大な効果を上げるための優先順位付けが大きな意味を持つことになる。だが、この課題は現政府・与党には荷が重すぎるような気がする。政策を巡る内輪もめが絶えない彼らが、予算の大幅縮小という難易度の極めて高い試練を乗り越えることなど果たして出来るのだろうか。

個人的には政権瓦解の可能性も排除できないと思っている。与党3党の支持率が軒並み低迷し、極右AfDが極めて高い現状では解散・総選挙という選択肢はあり得ないことから、仮にそうなった場合は、二大政党である与党社会民主党(SPD)と野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が好きでもないのによりを戻し、大連立政権を復活させることになるだろう。消極的で残念ではあるが、これ以外に逃げ道はない。ドイツの政治は隘路に入りかけている。

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