この夏、「未明の砦」を読んでほしい
こんばんは。yohaku2020です。
まだまだ暑い日が続きますね。こまめな水分補給は必須です!
去年もこんなに暑かったっけ?と外出するたび疑問に感じます。
皮膚の内側まで熱が浸透してとどまり続けるような暑さと湿気。
室内外の寒暖差で風邪も流行っているようなので、みなさまお気をつけください。
さて、そんな酷暑におすすめしたい小説があります!
それは、
「未明の砦」太田愛著
個人的には、オーディブルで聴くのも一本の映画をみたような満足感があっておすすめです。ナレーターの山内平さんのキャラの使い分けがめちゃうまい。
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この一冊を読むだけでもめちゃくちゃお得だと思います。
太田愛作品は、これまで「犯罪者」や「幻夏」などかなり重たいストーリーの小説を読んでいたので、タイトルだけで想像すると「また理不尽な苦しい展開なのかな」と正直少し不安になりながら読み始めました。
ストーリー展開(ちょっとだけネタバレ含みます)
物語は、国内大手自動車メーカーユシマの非正規工員4人を中心に進んでいく。
矢上達也(26)、脇隼人(26)、秋山宏典(30)、泉原順平(25)の4人の青年たちは、過酷で理不尽な労働環境に置かれながら甘んじて日々を過ごしている。
ある夏の休暇に、同じ職場の玄羽昭一に誘われて彼の亡妻の実家のある笛が浜へ4人は訪れる。
それまで同じ職場でありながら、ろくに会話もしてこなかった5人が1軒家でひと夏をともに過ごすことになる。
これが、「発端の夏」。
性格のまったく違う個性的な4人の青年の、衝突しながらもお互いを知っていくうちに絆を深めていく過程も見どころの一つ。
特に印象に残っているのが、笛が浜の砂浜で4人が縦に並んで座りそれぞれの背中に日焼け止めのオイルを塗りながら生い立ちを語り合うシーン。
本当はやさしくて繊細な少年たちが、身勝手な大人や理不尽な社会の仕組みのせいで搾取され傷つきながら生きてきたのがよく分かる語りでした。
それなのに、本人たちは淡々とあきらめたような口調で語るところもせつなくなります。
一方で、4人の会話は途中くすっと笑ってしまうような愛嬌のあるものも多く、重たい展開ばかりではありません。
さすがドラマのシナリオを手掛けている作家さんだけあって、人物像が目に浮かぶように生き生きと描写されていて、読み進むにつれて自然と4人に愛着が湧いて応援したくなります。
登場人物は他にもたくさんいるのですが、中でも定年まであと数年の平刑事の薮下と、相方の若手刑事小坂コンビの噛み合わないやり取りも楽しい!
周りの人に知らず知らず助けられながら、信じた道を進んでいく4人。
そして今回のストーリーも悪役がしっかり悪でわかりやすい。
長編ですが、最後までまったく飽きずに読み応えがありました。
物語の感想
読了後の感想は、青春小説を読んだような爽快感、というのが近いかも。
「青春」だと感じるのは、性格の異なる4人の青年がはじめは互いに理解せず反発しているところ、苦悩しながらやがて無謀とも言える大きな目標に向かって力を合わせて戦うところ、海ではしゃぐシーンがあることなどでしょうか。
大人になってから、こんなに信頼し合って同じ目標を持って、無我夢中になれる仲間に出会えることは奇跡に近いですね。
The氷河期世代の自分からすると、搾取され続けていると感じながら何もできないまま過ぎ去った若い頃に思わず思いをはせてしまいました。
時系列どおりではなく過去や現在を行き来し、うまくいきかけると新たな壁が立ちはだかるという、いうなれば王道ストーリーですが、過去・現在の労働問題の歴史も多く組み込まれているので、「労働とはなにか」「今の自分の働き方は本当に正しいのか」というようなことも同時に考えさせられました。
しかし、こんなに行動力や学習意欲のある若者たちなら、このまま非正規で働かなくてもさっさとユシマを見限って、ベンチャー企業とか立ち上げれば数年で成功できるのでは、、と邪なこともふと頭をよぎってしまいました。
「未明の砦」を読むなら、今のこの暑い夏がぴったりだと思います。
4人の非正規工員たちの、過酷な労働状況と熱い夏の戦いをよりリアルに感じられると思います。
もしよかったら、読んだ感想などまたコメントでいただけるとうれしいです。ではまた。
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