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何かに促された意思決定はどこまで持続するのか?

行動経済学でよく聞く「ナッジ」という言葉。
言葉の意味としては「ひじで軽くつつく」というもので、
イメージとしては、誰かに何かを促すときに、
ひじでつんつんとつつく、
といった感じになります。

片思いの人が目の前に現れたときに、
いい具合の微笑みを浮かべた友だちから
背中を押されるという、あの感じですね。

今回は、このナッジと意思決定の持続性との関係について書いてみたいと思います。


そもそも「ナッジ」とは?

そもそも「ナッジ」とは何でしょうか?

「ナッジ」とは、人々に選択の自由を残しつつ、望ましい行動を取るよう促すしくみのことです。

食堂の目立つところにサラダを置くことで、健康的な食事を選びやすくする工夫がその一例です。

「ナッジ」の興味深い特徴

最近の研究で、このナッジに興味深い特徴があることがわかりました。
それは「最初は効果があるけれど、時間とともにその効果が薄れていく」という点です。

具体的な例を見てみましょう。

例えば、ある会社が従業員の健康増進のために、エレベーターの近くに「階段を使うと、1日で○○カロリー消費できます!」という表示を出したとします。これがナッジです。

研究によると、

  1. 最初のうちは多くの人が階段を使うようになります。

  2. しかし、時間が経つにつれて階段を使う人が減っていきます。

  3. さらに、自分から進んで階段を使い始めた人に比べて、続ける割合が低くなります。

これは、なぜなのでしょうか?

理由として考えられるのは、

  1. 「外からの促し」による行動変化
    ナッジは外からの働きかけです。
    自分の意思で「階段を使う」と決めた場合と比べて、
    内側からの動機が弱いといえます。

  2. 意思決定の質のちがい
    じっくり考えて自分の意思で決めた場合と、
    ナッジによって深く考えずに始めた場合とでは、
    その行動への思い入れが異なるように思われます。

  3. 習慣形成のちがい
    自発的な決定のほうが、
    より強い習慣づけにつながりやすいのかもしれません。

この特徴の活かしかた

このような「ナッジ」の特徴は、
日常生活においてどのように活用できるのでしょうか?
いくつか例を挙げてみると、

  1. 教育現場での応用
    勉強習慣をつける場合、
    単に「宿題をやると○○ポイントがもらえる」
    といったナッジだけでなく、
    生徒自身が勉強の意義を理解し、
    自発的に取り組めるような支援が必要になるでしょう。

  2. 健康増進プログラムでの活用
    運動習慣をつける場合、
    ナッジで行動を始めるきっかけを作りつつ、
    それと並行して運動の楽しさや効果を実感できる機会を提供することで、
    より運動習慣が長続きする可能性があります。

  3. 環境保護活動での工夫
    ゴミの分別を促進する場合、
    単にわかりやすい表示をするだけでなく、
    なぜ分別が重要なのかの理解を深める取り組みも
    必要かもしれません。

これらの具体例からわかることは、以下のものです。

  1. ナッジは行動を始めるきっかけとして有効です。

  2. しかし、その行動を続けてもらうためには、別の工夫が必要です。

  3. 可能であれば、内発的な動機づけ(自ら「やりたい」と思う気持ち)を育てることが大切です。

では、より効果的な活用という点で、どのような工夫ができるでしょうか?

  1. 段階的なアプローチ
    ・最初:ナッジで行動のきっかけを作る。
    ・中期:その行動の意義や効果を実感できる機会を提供する。
    ・長期:自発的な継続につながる支援を行う。

  2. 複合的な支援
    ・ナッジにより行動を促す。
    ・教育や情報提供にその公道についてより理解を深める。
    ・コミュニティづくりにより相互支援を図る。

  3. 個人の自主性を重視
    ・選択の自由を保障する。
    ・自己決定の機会を提供する。
    ・成功体験の積み重ねを与える。

このように、ナッジは行動を変える「入り口」において、
非常に効果的な手段ですが、
それだけでは持続的な変化を生み出すことは難しいといえます。

大切なのは、ナッジを「きっかけ作り」として活用しながら、
それに続く持続的な行動の変化へとつなげるための支援をうまく組み合わせることです。

例えば、学校での勉強の習慣づけを考えてみましょう:

  1. きっかけ作り(ナッジ)
    ・宿題をすると「がんばりポイント」がもらえる。
    ・学習時間を記録するとごほうびシールがもらえる。

  2. 理解を深める(教育)
    ・なぜ勉強が必要なのかを考える機会を設ける。
    ・学んだことが日常生活でどう役立つかを体験する。

  3. 継続支援(環境づくり)
    ・仲間といっしょに学べる場所を提供する。
    ・成功体験を共有する機会を設ける。

まとめ

このように、ナッジは人々の行動を変えるための「第一歩」として非常に有効な手段ですが、
その効果を持続させるためには、より包括的なアプローチが必要だということがわかります。

何か新しい習慣を始めようとするとき、
そのきっかけは外からの促しであったとしても、
その行動を続けていくためには、自分なりの意味や価値を見出していくことが大切だといえます。




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耀興
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