学生さんに知って欲しい研究展示の際に気をつけるべき7つの事

※本記事は以下のURLからの移植です
http://yoh7686.blogspot.com/2013/06/7.html

 私は企業所属の社会人研究者なので、学生さんを指導したりする機会は今のところないのだが、研究室公開や研究発表会などを見に行く機会は多く、そこそこの頻度で学生さんと接している。
 そうした研究発表会は、荒削りながら斬新な発表に触れ、未来の研究者足る学生さんたちの熱意を感じる事が出来るため非常に面白い。

 反面、学生さんならではという気になる部分もあり、そういったところは研究室や大学、学年などを越えてだいたい共通している。が、「学生だから」という事で、皆細かい不満点などは言わずに終わりがちだ。しかし、少し気をつける、意識するだけで発表会のクオリティは大きく上がるので以下に書いておこうと思う。

開始時間厳守

非常にシンプルだが重要な事だ。私は発表会などの際、時間がなくて全部見る事ができなかったという事がないよう、できるだけ開始時刻に行くようにしているのだが、時によっては行ってみても半分くらいのブースに人がいない、準備中であるという光景を見る。
こういう時、まず稼働しているところに行って説明を聞き、時間を見計らって準備中のブースを覗いてみたするのだが、下手をすると何周もするはめになるし、場合によっては忘れてしまう事もある。
開始と同時に入場してくるような来場者は、非常に熱心にフィードバックをしてくれる人間が多いのではないかと思う。そうでなければ、休みの日にわざわざ朝から大学の発表に行ったりはしないだろう。また、後ろに予定があって早く来場している場合、最初の接触を逃すと帰ってしまうという場合もある。
発表の準備は前日までにセットアップを終え、そのままの状態で電源を落として帰るのがベスト。当日朝の準備はあくまで前日の状態で動くという事を確認するためのものだと思った方が良い。

学生同士のおしゃべりはほどほどに

発表会の開始直後も含め、人がまばらな時によく見られるのだが、学生同士でおしゃべりをしているのをよく見かける。一言も口をきかないようにするのはなかなか大変だが、発表会というのは来場者のために開かれた空間であるという事を忘れてはならない。学生同士のおしゃべりに熱中している様子を見れば、意識が来場者に向いていないのは明らかで、外から来た人がそれに好感を持つことはないのでそこは注意して欲しい。
来場者として来ている同級生や学外の友人と喋っている、というケースもあるだろうが、それは来場者にはわからないのでそのあたりも気をつけよう。

暇な来場者を作らない

 ポスターやデモなどを見ている来場者がいたら声をかけるのは当然だが、誰かの相手をしている間にその様子を眺めてしばらく経っても空かないという光景をよく目にする。自分のポスターを読んでいたり、会話を横から聞いたりする人が出て来たら、その来場者も話の輪に入れてしまうと良い。近くで空きを待っている来場者は明らかに研究に興味があるので逃してしまうともったいない。また、近隣で相手を仕切れないほど人が溢れていたりしたら引き取って自分のところに連れてくるというのも手だ。

回転率を意識する

 自分の研究を詳しく説明した、出来るだけ理解してもらいたいという気持ちは当然で、それは良い事だと思うが、説明が長くなりすぎていしまうと相手に出来る人数も減ってしまうし、聞いている方も飽きてしまうかも知れない。自分が一度のどの程度の人数の相手が出来るのか、一回の説明にどの程度かかるのか把握しておくと良い。こればかりは練習あるのみだ。前日までに先生や研究室の仲間に見てもらっておこう。説明の際に、ポスターを読んでいた来場者に対してポスター内容をそのままもう一回説明するのは時間の無駄になるし、聞いている方も退屈してしまうので臨機応変な対応が必要だ。
時間のかかるデモが入っている場合、できるだけデモ要員と説明要員を別に確保しよう。人数がいる場合、説明、デモ、デモ後のヒアリングなどに分けておくと円滑に進む。

不毛な反論はしない

 これはケース・バイ・ケースではあるのだが、来場者の感想に対して「これはこういう研究なので」「こういう意図があるので」という反論してもあまり意味がない。そう反論したくなる感想が来る時点で研究の意図、意図が伝わっていないという事だ。そういう感想は研究を世間一般の役に立てたり、よりわかりやすい説明を行ったりするために非常に重要なので素直に受け止めておくと良い。もちろん、説明すれば納得してくれる場合もあるが、有益な議論をするにはお互いのリテラシーが必要だ。目の前の一人を説得するより、自分の研究のクオリティを高めてより多くの人に理解してもらう方がずっと良い。

メモを取る

 ごく基本的な事だが、忙しくなってくると忘れがち。自分の記憶力を過信せずに、言われた事はとにかく一言でも書いておいて、後で整理した方が良い。記憶は後から起こった事、より印象的な事に上書きされてしまうし、フィードバックの傾向を分析するうえでも有益だ。
 また、来場者の視点から見ると、自分が言ったことを熱心にメモしてくれると好感が持てるというのもある。

発表の目的を意識する

 上記1〜6の項目を全て実践するのはなかなか大変だ。長い期間かけて行ってきた研究を徹夜で準備してなんとか終わらせ、当日は朝から晩まで立ちっぱなしで説明をしなければならないのだから。
 しかし、それだけ大変な思いをするのには理由がある。研究発表の場というのは、自分たちの研究を広く世の中の人に知ってもらい、そこからフィードバックを得てさらなる研究のクオリティアップを目指すという目的があるのだ。特に、対面で研究者以外の人間から直接フィードバックを得られる機会というのは非常に少ない。来場者の生の反応からはアンケートなどからは得られない、本人さえも意識していない情報がたくさん得られる。
 そのため、研究発表会で大切なのはそういった反応をどう来場者から引き出すか、というところにある。だからこそ多くの来場者と接する事が必要だ。出来るだけ良い状態で反応を引き出すために、相手の立場に立って考え、接する事が大切なのだ。
 1〜6の事は、7を意識して考えれば自然と出てくる内容でもある。なお、私の経験から言うならやはり職業研究者や博士課程の学生さんたちはこのあたりをきちんと意識して対応しているなと感じる事が多い。

 なお、これらの事は一般的な接客や企業の展示ではごく当たり前の事だ。守られていない事の方が少ない。
 だからこそ、来場者、お客として展示の場を訪れた時にそこに様々な努力や気遣いが存在するという事に気づきにくいのだ。

 以上、来場者に対して対応するのは、来場者本人のためでもなければ、学校や先生のためでもない、何より自分自身のためなのだという事をよくわかって欲しい。

 それでは、良い研究ライフを!

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