皆さんは、話題の「うずまき」見ましたか?
今年、「うずまき」というホラーアニメが海外で大きな話題を呼んだことをご存じだろうか?
これは、日本ホラー界のNO.1漫画家・伊藤潤二の代表作のひとつだね。
読んだことある人も多いだろう。
伊藤先生は日本国内でも人気だが、なぜか海外ではもっと人気らしいのよ。
・第31回アイズナー賞(漫画の米アカデミー賞)最優秀コミカライズ賞受賞
・第33回アイズナー賞最優秀アジア作品賞受賞 Best Writer/Artist部門受賞
・第34回アイズナー賞最優秀アジア作品賞受賞
・第50回アングレーム国際漫画祭(漫画のカンヌ)特別栄誉賞受賞
・米「ライブラリージャーナル」ベストブック選出
・米サンディエゴ コミコン ベストポット賞受賞
海外でばっかり表彰されてるみたいだし、少しぐらいは日本国内でも表彰をしなさいって(笑)。
そういや、実写分野でもアメリカでは中田秀夫(「リング」監督)と清水崇(「呪怨」監督)の人気がめっちゃあるらしく、「ホラーといえば日本」という認識があるのかもしれない。
思えば伊藤潤二も、海外では特にアメリカの人気が突出してるのが特徴。
アメリカでは梅津泰臣、川尻善昭のアニメが日本国内以上に大人気だという事実も含めて、ひとついえるのは
アメリカ人がグロい表現が大好き
ということだろう。
さて、そのアメリカでは最も人気ある伊藤作品が「うずまき」だったみたいで、ところが待てど暮らせど全く日本が「うずまき」アニメ化をしようとはしない(ぶっちゃけ、日本ではさほどニーズないから・・)。
で、業を煮やしたアメリカの某TV会社が、「もうええわ、ウチが作るし!」といって自ら「うずまき」アニメ化に動き始めたわけです。
しかし、アニメ制作にはノウハウのない会社だったらしく、Production I.Gの協力を得たりもしたらしいんだが、Production I.Gはあくまで「協力」の域を出なかったようで、どうも制作がうまくいかなかったらしい。
延期につぐ延期で、制作に入って5年経ってもまだ完成しない始末。
というか、当初監督は長濱博史(「蟲師」監督)という大物を起用してたというのに、なぜかその長濱さんは第1話だけ監督を務め、2話以降は降りている。
この時点で、「なんかあったな・・」と思わざるを得ない。
で、肝心の制作会社だが、これが富嶽、暁という聞いたこともないところで、この時点で「大丈夫?」という気も・・。
それでもまぁ、ようやく2024年夏、辛うじて公開に至ったわけです。
全4話という構成で、まずその第1話の映像を少しだけ見てもらおうか。
・・うむ、なかなかスゴイ!
画に色がついてないのは、おカネがなかったからでなく、きっと演出の狙いだろう。
で、ここまでは良かったんだ。
問題は、長濱監督が降りてからの2話目以降である。
では、第2話を少しだけ見てもらおう。
・・ワロタw
実は、この第2話で海外のSNSはめっちゃ炎上したらしいのよ。
作画に大ブーイングだったらしい。
で、私はとりあえず全4話を通して見た。
結論からいうと、確かに作画が酷いところは目立つが、でも原作のパワーがそれを凌駕してるので、私は「あり」だと思います。
特にヒロインがめっちゃカワイイので、最終的にOKです。
では、「うずまき」以外の伊藤潤二作品を幾つか振り返ってみようか。
「富江」(2018年)
「四つ辻の美少年」(2018年)
このあたりも、伊藤先生の代表作。
2018年「伊藤潤二コレクション」全13話(制作スタジオディーン)
2023年「伊藤潤二マニアック」全12話(制作スタジオディーン)
このふたつのシリーズは、ともに田頭しのぶさんという女性アニメーターが監督/キャラデザ/絵コンテをやっていて、この人、めっちゃ伊藤潤二ファンらしく、かなり原作愛に満ちた作品に仕上がっている。
なかなか、おススメですよ。
でも、敢えて私が一番おススメしたいのは、こっちの方です↓↓
OVA「ギョ」(2012年)
・・これ、見たことある?
未見の方は、YouTubeで検索すれば普通に無料動画見れますから、是非ご覧ください。
伊藤先生はホラーの名手なんだけど、彼の何が凄いかって、色々な攻め方のバリエーションをもってることなんだ。
それこそ中田秀夫風もあれば、清水崇風もあるし、諸星大二郎風もあるし、あるいはハリウッド風というのもある。
そのハリウッド風という中でもスプラッターもあれば、この「ギョ」のようにパニックホラーもあるわけです。
ホント、めちゃくちゃ球種が多い人だわ。
多分、研究熱心な人なんだと思う。
彼が崇拝する楳図かずお先生は、「影響を受けたくないから、敢えて他の人の作品は一切見ない」というスタンスだったらしいが、それでもあれほどの傑作を連発できたのって、楳図先生が強固な「自分のワールド」を持ってたからでしょ。
もうね、一歩間違えば真性ヤバい人扱いされるというか、結構ギリギリの人だと思うんですよ(笑)。
純度100%、ホンモノの奇才だわな。
研究開発系というよりは直感インスピレーション系で、私、「漂流教室」や「わたしは真悟」あたりの楳図作品って、創造性の世界最高峰だと思うけどね。
ただ残念なことに、楳図作品のアニメ版って実はめっちゃ少ない。
映画「まことちゃん」とOVA「楳図かずおの呪い」ぐらい?
映画「まとこちゃん」とか、機会があれば是非見てみて。
色使いがもうラリってるし、監督が芝山努(「ドラえもん」の人)ゆえ本来ラリった作家性じゃないのに、なぜか、ここでは町の風景全部赤で塗りつぶしてて、これ明らかに楳図菌に侵されてる・・。
ちなみに、映画そのものはクソつまらんので、そこはご了承ください(笑)。
・・ちょっと脱線しちゃったね。
話を戻そう。
とにかく、伊藤先生は楳図先生に匹敵する天才ではあるものの、どっちかというと人としては全然マトモな感じ。
よって、インスピレーションだけに頼らず、ちゃんと現代ホラーの研究/学習をしてると思うのよ。
「ギョ」なんて、まさにその成果だと思うし。
正直、これは伊藤潤二ファンにはあまり好評でないと聞く。
でも、アニメファン目線としては、なかなかの力作だと思う。
「めっちゃ凝ったアングルの画やなぁ~」と思って見てたら、これの制作がufotable、しかも監督が平尾隆之と知って、なるほどと納得したわけです。
平尾隆之、なんか聞いたことある名前でしょ?
「空の境界」で名を馳せた鬼才だよ。
そして、いまや伝説となっている
「こだわりすぎて全部を1人でやろうとして延期を連発し、最終的にufotableクビ(?)になったオトコ」
でもある(笑)。
ホサれてたのに近年、「映画大好きポンポさん」でまた見事に復活。
「ポンポさん」の内容があまりにも平尾さんの黒歴史そのものだったので、逆にちょっと面白かったんだけど。
まぁ言うなれば、「ギョ」は
<伊藤潤二の作家性vs平尾隆之の作家性>
の対決だね。
いや、伊藤潤二ファンには申し訳ないけど、私はその化学反応的なところがめっちゃ面白かったわ。
ただ、グロの耐性がない人にはあまりおススメできない。
なんせ、グロさは日本アニメ史で屈指のレベルだから。
まず、こちらの1分程度のPVを見ていただき、それで「無理」と思えば本編はやめといた方がいいでしょう。
・・どうです、イケそうですか?
なお、この作品についてもうひとつだけ補足をしとくと、
実はこれ、ufotable史上最も赤字が出たOVAなんだそうだ(笑)。
逆にいえば、それだけ巨額を投じてたともいえるわけで、言われてみりゃ、確かにおカネかかってそうな作画だよ。
というか、平尾さんがufotable辞めざるを得なかったの、こういうところもあったんだろうな・・。
このOVAが出た数年後、実際彼は辞めました。
そういう意味で、「ギョ」はやっぱりアニメファンなら見ておくべき作品だと思うよ。
・・あ、よかったら「うずまき」の方も見て下さいね。