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出崎統vs杉井ギサブロー、どちらの「源氏物語」が優れてる?
今回は、「源氏物語」について少し書きたい。
なんせ、大河ドラマが「光る君へ」だからね。
誰しも学校の古文の授業で「源氏物語」は学ぶんだけど、意外とその内容はよく知らないものである。
日本が誇る、「世界最古の恋愛小説」とも聞くんだが・・。
いや、恋愛のみならず、今から約1000年前の官僚社会が一体どんなものだったのか、この作品はそういうところも余すところなく描写してくれてるのがいい。
「薬屋のひとりごと」にハマった人とか、絶対「源氏物語」も嫌いじゃないはずだよ。
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では、「源氏物語」をアニメ化した2つの作品をご紹介しよう。
ひとつは杉井ギサブロー監督作品で、劇場版の「紫式部 源氏物語」。
そしてもうひとつは出崎統監督作品で、テレビアニメの「源氏物語 千年紀 GENJI」。
このふたつを比較するというのは、ある意味で杉井ギサブローvs出崎統という、日本を代表するトップアニメーターの2人を比較することにもなる。
両者はほぼ同世代で、実はライバルともいえた関係なんだ。
杉井さんが1940年生まれで、出崎さんが1943年生まれ。
ともに虫プロで同じ釜の飯を食った盟友でもある。
私のイメージとしては、出崎さんが富野由悠季ら後輩たちを束ねて「出崎ファミリー」のボスだったのに対し、杉井さんはもっと根っからの職人肌という感じかな?
「動」の出崎統に対し、「静」の杉井ギサブローともいえる。
このふたりが「源氏物語」という同一の題材を扱ったことにより、その個性の差が面白いほどによく分かるんだ。
皆さんにもぜひ、このふたつを見比べてもらいたい。
あ、出崎版は09年作品だから視聴はまだ容易だとしても、杉井版は87年作品だから見たことない人多いだろうね。
とりあえず、ネットで「genjimonogatari movie」と検索してみてください。
おそらく、杉井版の無料フル動画にヒットするはず。
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見る順番としては、まず出崎版の方を先に見ることをお薦めする。
なぜなら、めっちゃ分かりやすく作られてるから。
多分、出崎さんは視聴者が「源氏物語」をよく知らないことを前提にして、この作品を作ったんじゃないだろうか。
一方杉井版は、明らかに見る側が「源氏物語」をよく知っていることを前提にした作りになっている。
よって杉井版は初歩的説明が省略されており、その分少し難しいんだよ。
だから見る順序としては、易しい方を先に見て、しっかり物語を踏まえた上で劇場版に臨むのがベストだと思う。
まず先に結論を言っちゃうと、正直杉井版の方が出崎版より数段クオリティが高い。
あ、誤解のないようにね。
これは監督の力量として【出崎<杉井】ということじゃないから。
ただ、出崎さんはいい意味でも悪い意味でも常に出崎統であり、その演出の異様なまでの濃さゆえ、完全に「源氏物語」が出崎さんに食われちゃってるのよ(笑)。
あの紫式部ですら、出崎さんには勝てなかったか・・。
なんせ出崎版の光源氏は、絶叫するわ泣きわめくわ、やたらハイテンションなんだから。
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原作ファンからすると、絶対あり得ないキャラ設定だろう。
おまけに出崎版光源氏は、闘ったらめっちゃ強い。
刺客に襲われた際、彼が10mほどの高さまで跳躍し、バッタバッタと刺客たちをなぎ倒していったのにはビックリ。
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この後、刺客は全員倒されますww
キャラ設定がおかしいのは光源氏だけじゃなく、実はメインヒロインである藤壺もかなりおかしい。
だって彼女、光源氏に「愛してます」とかあっさり言っちゃうんだもん。
藤壺って、絶対そんなこと言うような女性じゃないでしょ?
おそらく出崎さん的に「原作通りじゃつまらん」という判断だろうが、でもこれ、もし紫式部が生きてたら高橋留美子ばりに激怒したと思うよ?
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光源氏って、耳にピアスしてるんだね
その点でいうと、杉井版は出崎版と対照的にキャラの感情表現が薄い。
抱擁してても、これ↑↑
いや、私は「源氏物語」的にこれが正解だと思うんだわ。
思えば、杉井さんはもともと、人間臭さをあまり出してこない作風だよね。
たとえばだが、彼の過去作「銀河鉄道の夜」や「グスコーブドリの伝記」は、極限まで人間臭さを排除した作画だったわけで↓↓
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ネコだし・・
あと、彼の代表作には「タッチ」がある。
よく考えりゃ、「タッチ」もまた恋愛モノの割には感情表現が薄い。
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やってることは熱いのに↑↑、全く表情が熱くない。
というか、デレてる南ちゃんや達也って見たことないでしょ?
このへんはあだち充先生が意図してやってたんだろうが、表情を伏せることにより、敢えて「行間」という奥行きを作ってるんだ。
こういうところこそ、「タッチ」の文学的たる所以、名作たる所以である。
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思えば、古い日本のカルチャーってやつは、敢えて面を被り、敢えて表情を消してきたものである。
最初から、分かりにくくしてるのさ。
基本、こういう日本のカルチャーは「動」でなく、「静」に根差してるってことね。
もちろん、「源氏物語」もまた「静」に根差したカルチャーである。
よって相性いいのは、どう考えても出崎さんより杉井さんなんだ。
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やはり杉井版は、作画、演出、ともに素晴らしい。
さらにいうと、劇伴はあのYMO細野晴臣が手掛けている。
一方、出崎版の何が酷いかって、OP曲をPUFFYが唄ってんのよ(笑)。
PUFFYって・・。
もう少し世界観ってものをわきまえてほしかったな~。
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「源氏物語」は不朽の名作ゆえ、多分これから先も様々な人たちがアニメ化に挑戦していくことになるだろうが、この杉井版を超えるのは案外難しいと思うよ。
あ、割と最近に「平家物語」を作った山田尚子さんはどうかな?
「平家物語」、めっちゃ良かったし。
紫式部と同じ女性作家ということで、感性が似たものを作れるかもしれない。
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確か「平家物語」は、山田さんの拠点・京アニじゃなくて、サイエンスSARUで作ったんだよね。
つまり、湯浅政明さんのところだ。
湯浅さんも実は歴史モノの巧い人で、彼が93~95年に作った「THE八犬伝 新章第4話『浜路再臨』」というOVA、知ってる?
よく著名アニメーターさんたちの対談企画等で、「衝撃を受けたアニメ」に必ず挙げられるのがこれである。
それも、これを挙げたアニメーターさんは1人や2人じゃないからね?
一応、その第4話を貼っておきます。
もし湯浅さんが「源氏物語」やってくれたら、凄いのができるかもしれないよな~。
正直、私は実写版の「源氏物語」を見て「あ、いいな」と思ったのは今までひとつもない。
やはり日本人としては、世界に誇る「源氏物語」といえばコレ、というべき映像作品をひとつぐらいもっておきたいものである。
そういう意味では、古典を描くのもアニメの方が全然可能性あると思うぞ?
まずは出崎版と杉井版の「源氏物語」、皆さんにちゃんと見てもらいたい。
特に、今まさに古文で「源氏物語」を勉強している中高生にこそ見てもらいたいな。
アニメで物語の内容を把握しとくだけでも、結構助けになるものだからね。
その上で、1000年前の日本人がどんなものだったかを知ってほしいんだ。
ええ、そうですとも。
光源氏はSEX以外、特に何もしてません・・。
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