「はたらく細胞」人間の本質は、約37兆個の生命の集合体
来月から、「はたらく細胞」の実写映画版が全国劇場公開になるらしい。
じゃ、その予告編をちらっと見てもらおうか。
いや、「白血球」の佐藤健、白すぎやろ・・。
正直、実写の出来はどうなるのか分からんけど、少なくともこれのアニメ版は私、大好きなんだよね。
確か、最初は民放局で深夜に放送してたと思うが、なぜか再放送はNHK教育で土曜夕方に放送という、異例の大出世!
これは天下のNHK教育が公認ってことで、この作品の内容は医学的に正しいという公式なお墨付きが得られたってことだよね?
でさ、私はちょっと勘違いしてたんだが、この作品は手塚治虫の「ブラックジャック」同様、作者が医学部卒で、その医学知識をベースに描かれた漫画だとばかり思い込んでたのよ。
でも、実際は全然違うらしいじゃん。
原作者の清水茜先生は医学部卒でも何でもない、ただの医学のシロウトで、しかも1994年生まれという、まだ若い女子らしい。
そんな人が、よくこんな学術的な漫画を描けたもんだわ。
特に清水先生がスゴイと思うのは、そのキャラデザのセンスである。
「赤血球」というイメージで、<キャップ+ショート丈のブルゾン+デニムのショートパンツ+ウエストポーチ+ハイカットのスニーカー>という一式を赤/黒でコーディネイトしちゃうあたり、めっちゃセンスあると思う。
悪いけど、手塚先生のセンスでは絶対無理(笑)。
そして何より「はたらく細胞」といえば、人気NO.1キャラは血小板ちゃんだろう。
私も、彼女を見たいが為に本作視聴を継続していたといって過言ではない。
続いて、敵キャラ。
まぁ敵は色々いるんだが、その中でも最凶のラスボスといえたのは、やはりコイツ↓↓
ビジュアルがほとんど「東京喰種」で、しかもcvが石田彰とくれば、もう作中最凶キャラなのは間違いないじゃん。
基本、本作におけるバトルのほとんどは
ウイルス等の外敵vs免疫細胞(白血球、T細胞、マクロファージ等)
である。
「外敵」=(ゲームでいうところの)モンスター
という解釈でいいだろう。
このてのモンスターが相手ゆえ、闘って殺すことには何の疑問もない。
・・ただ、相手が「がん細胞」となると話が変わってくる。
なぜなら、彼は「モンスター」じゃなくて「細胞」、つまり本質的には同胞なのよ。
分かりやすくいうと
「がん細胞」=(ゲームでいうところの)PKするタイプのプレイヤー
である。
これを「ソードアートオンライン」的に表現すると
VSモンスター
VSプレイヤー
VSがん細胞というやつは、VSプレイヤーに近いということだね。
ぶっちゃけ、これはVSモンスター戦より一層タチが悪い。
なぜって、悪質プレイヤーはモンスター以上に知能が高く、狡猾だから。
そして石田彰だから・・。
で、「はたらく細胞」2期のVSがん細胞戦でめっちゃ興味深かったのは、がん細胞を攻撃しようとする免疫細胞に対し、敢えてその攻撃を邪魔しようとする(がん細胞を守ろうとする)免疫細胞が存在したことさ。
それが、制御性T細胞。
なぜ、彼女は免疫細胞なのに、敵に寝返ったのか?
・・いや、寝返ったわけではない。
そもそも、早見沙織が邪悪に堕ちるわけないじゃないか。
ただ、彼女は自らの職務に忠実だっただけである。
制御性T細胞の職務は、「T細胞の暴走(外敵以外のものを攻撃するなど)を食い止めること」であり、今回のVSがん細胞戦においては
がん細胞=「外敵」ではなく「細胞」=よって攻撃はNG
とマニュアル通りに判断したわけだね。
結果、彼女は免疫細胞でありつつも、がん細胞を守護。
そして、逆にいつも仲間である白血球やキラーT細胞との死闘を繰り広げることになったわけよ。
なんと哀しいバトルだろう・・。
そう、細胞というのは「プログラム(命令)が全て」なんだ。
みんな、軍隊型のソルジャーである。
あくまで命令遵守、そこに「臨機応変」という概念はない。
全ての細胞がそういう融通きかない存在でありながら、そんな細胞が37兆個繋がって「人間」を形成したら、なぜか「臨機応変」のカタマリみたいな、融通バッチリの生命体が出来上がってしまった、というのが不思議・・。
さて、そういう「細胞がまるで融通きかない存在であることの悲哀」、それを「はたらく細胞」本編以上に真正面から描いてみせたスピンオフが、この作品である↓↓
「はたらく細胞BLACK」(2021年)
皆さんは、これ見た?
今回は主人公がオトコになってるのを見て、
「花澤香菜じゃないんかよ・・」
と萎えた人は多いかもしれない。
あと付け加えると、「BLACK」の血小板ちゃんは
ちょっとギスギスしてて、あまり癒されません・・。
カムバ~ック、長縄まりあ~(涙)。
思えば、「はたらく細胞」本編は明らかに「癒し系コメディ」だったけど、この「BLACK」の方はコメディじゃなく、どっちかというとシリアス系です。
主要キャラが死んだりするし、主人公は闇落ちするし、特に終盤は完全に鬱展開である。
あまりにも作風が違うので「清水先生どうした?」と思ったら、これの原作は清水先生が描いてるやつじゃないんだね(監修のみらしい)。
だけど、これはこれで悪くなかったわ。
ぶっちゃけ、私これ見て泣きましたからね・・
これ見てると、いかに前作がホワイトな職場だったかと痛感させられるよ。
今回は完全にブラック企業で、これはカラダの主(細胞たちにとっては神、創造主)がめちゃくちゃ不摂生な生活を送ってるということだろう。
酒、タバコ、徹夜、ストレス等でカラダはボロボロで(といっても、作中にカラダの主が描写される場面は全くない)、その結果
・水虫
・痛風
・淋病
・円形脱毛症
・尿道結石
・肺血栓
・心筋梗塞
など複数の疾病が出ていて、最終的には心停止にまで至っている。
まぁAEDの使用で辛うじて蘇生できたものの、正直ギリギリだったと思う。
疾病ごとに、細胞たちはどんどん死んでいく・・。
そして免疫力は落ちていき、また疾病が出るという光明の見えない悪循環。
見てて、ホント辛くなってくる。
それでも、笑えるポイントは2つほどあったな。
アニメで、これほど「勃起」というフレーズが連呼された例は他にないだろう。
赤血球くんたちが頑張って陰茎に集合し、勃たせようとするのに勃たないという流れには笑った。
で、問題の精子なんだけど、そのキャラデザが結構スゴイ。
何なの、このキャラデザww
一応、バイアグラの力を借りて辛うじて射精できたようなんだが、この様子を見て喜び、赤血球くんが先輩に「これで子孫を残せますね」と言ったら、先輩が「いや、これは単に性欲処理(妊娠目的ではない)の可能性もある」とシビアに言い放ち、赤血球くんが絶望するくだりには爆笑してしまった。
で、さらに笑ったのは、射精編の直後、淋病編が始まったことである(笑)。
思いっきり性病貰っとるやん!!
このカラダの主、人としてダメだ・・。
体内に侵入してきた淋菌
淋菌は、なぜか「淋しいんだよぉ」を連呼するキャラ設定だった(笑)。
このへんの設定は、ブラックコメディとしてなかなか秀逸である。
で、この主人公の赤血球くん、なかなかいいキャラなんだよね。
前作では赤血球cv花澤香菜がポンコツのキャラで癒されたんだけど、今回の赤血球くんはポンコツじゃなく、真面目で熱血のキャラ。
今、ピュアなオトコノコを演らせたら人気NO.1(?)榎木淳弥が結構好感度高かったわ。
思えば、赤血球ってのは完全に機能が「モブ」である。
酸素運ぶ以外、これといって能がないし。
それじゃ何で主人公に設定されてるのかというと、それは赤血球の「全身をくまなく循環する」という特性上、各器官を訪れるストーリーテラーとして便利だった、というだけのことでしょ?
しかし、個としては闘える機能がないので、仮に何か事件が起きてもただ「傍観」することしかできない。
実際、前作の赤血球ちゃんはそうだったと思う。
でも本作の赤血球くんは、そこから一歩踏み込んでるんだよね。
自身の無力さに苦悩しつつも、たとえどんな地獄の中だろうと「今、自分ができること」をひたすら模索し、愚直にそれを全うする。
彼のその高潔さが周囲を感化し、実は戦況を大きく救ってるんですよ。
もちろん、個としては無力に等しいのも事実。
でも、実は無力じゃない、ということ。
この赤血球くんの立ち位置って、実は我々自身のそれじゃないか?
私たち、個々はみんな無力である。
ひとりで世界を変えることなんて到底できないし、何かが起きてもほぼ傍観してるしかない。
学校のイチ生徒、会社のイチ社員、日本のイチ国民・・、そのいずれにせよ我々の機能はモブであり、まぁ細胞でいえば赤血球みたいなもんさ。
じゃ、いてもいなくてもどうでもイイ?
・・トンデモない。
赤血球が動かなきゃ、みんな死ぬんだよ。
最後、赤血球くんは「赤血球としての誇り」のようなものを見出していたと思う。
なんか、この作品は「お仕事アニメ」として非常によくできてるわ。
表向き体内細胞の擬人化アニメでありつつも、ちゃんと「ブラックな環境で日々頑張っている皆さん」に向けた応援歌になってるんだから。