この間のtwhzから
「何故あなたはジャスミンの花を吐いているの?お陰であたしの売っている花が売れないじゃない」
こっちは好きでジャスミンの花なんて吐いている訳ではない。
駆け寄って来た花売りの少女は悪たれ口を叩いている。確かに通行人は花売りの少女の方へは行かず、落ちたジャスミンの花々を拾ってゆく。
理由は定かではないが具合が悪くて悪くて仕方がなく、戻すと驚くべきことにジャスミンの白い花弁が口から零れ出たのだ。
仕方がなく気分が良くなるまで戻すことにしたが、近くで花売りをしていた少女の恨みを買ってしまったらしい。花ではなく。
彼女は小綺麗とは言い難い服で、そこいらで摘んだような花ばかりをカゴに入れていて、この気候でやられたのか皆少しばかり俯き加減である。
バンコクのど真ん中、ルンピニー公園も程近いシーロム通りでの邂逅。
私は思わず少女を見上げ(この時私はしゃがみ込んでいて少女より目線が下だった)、その白眼視と目が合った。モン族だ。
「ホントはあたしが飲もうと思っていたのだけど、ジンジャーエール。飲める?」
彼女の問いに私は頷き、その古めかしい瓶を受け取って飲んだ。
喉を伝っていく炭酸と生姜の香りがジャスミンの香りを押しとどめ、吐き気も治まっていく。
噯気を零すもジャスミンの花はもう出る気配がなさそうで、それは仄日と並んで終わりを告げるピリオドとなった。
クルンテープの穏やかな夕空に少女の小さな笑い声が溶ける。
私は彼女に礼とチップとして花を一凛だけもらい、気持ちの良いバンコクの薄暮を歩いていった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?