てぶくろ買いに
息をひそめて音を立てずに生きるのが得意だった。
呼吸をできるだけ浅く、少なく、足はつま先からゆっくりとつける。
生きているのが見つからないように。
もちろん奴らは簡単に僕を見つけ出す。
そして念入りにつぶす。
嘲笑、酒の臭い、暴力、懇願、
私は無痛に逃避する。
痛い、と冷たい、は似ている。
冷たすぎると麻痺してくるでしょう。
てぶくろをかいに、
ぼうやが、おててがさむいさむい、となく
もうしばらくの、しんぼうだよ
冬がふかくなれば、
おててのさむさはわからなくなるからね、
それでもぼうやのおててが
しもやけになったらかわいそうなので、
てぶくろをかいに、
また雨の降り方が丁寧じゃなくなった。
空が濡らしたコンクリートが閉じ込める匂いに冬を思う。
冬が嫌いだったのに、冬は嫌いなはずだったのに。
雪の上で置き去りにしないで、ぬくもりを知った肌に凍った土は冷たすぎる
ひとりこのからだで生きるには冷たすぎる風がまた吹いている。
神様、
私がひとりで立てなくなる前に、
冷たい雷が私に墜ちますように。
私が死んでしまいますように。
無感情に雨が降っている。
灰色の雲の向こうには空が広がっている。
私は世界が美しいことを知っている。
(知りたくなかった)
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