見出し画像

九月、夕暮れ、六本木

笑ってみせることに疲れて隠れてしかめ面をしていたら、唇が酷く裂けて血が滲んだ

一滴垂れた紅いしずくをぬぐう
少しだけしみこませる

ここから私がいなくなったときのこと

ねえ私の居場所じゃないだけだったらまだよかったね
優しい君の穏やかな日常を返してあげたい

白い粒
過去に癒えたはずの傷を触り
その意外な痛みに立ちすくむ

誰にでもやがて終わりが来る
特別なことじゃない
ただ私は誰の一番大切にもなれなかった

こんな悪魔の魂をのせてなければ
ねえ、私は誰かに繋がれた?

ときどき思い出す昔が
実はほんの昨日のことだったりしてぎくっとする
劣化していく塊
なんのために、なんのために、を連呼していくうち
何も出来なくなって蹲る
君が好きだと口づけた肌を爪が突き破る
赤く
赤い、みみずばれの

池袋の夕暮れが遠い
ジュンク堂の本棚が遠い
もう二度と
逢えない

会えるわけがない

さあはじまるよ
ボーナスステージ

私こそが、きっと嘘


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?