子供の頃に手放した夢が叶っていく日々
僕がパートナーと暮らしている我が家には、2匹の可愛いわんこがいる。先住犬のパグ♂(9才)と、1ヶ月前にやってきたばかりの雑種犬♀(9ヶ月)のコンビだ。
初めて経験する犬との生活
先住犬のパグ・チェキとの出会いは4年前、僕とパートナーが一番最初に顔を合わせた日。マッチングアプリを介して知り合った僕たちは、近所の公園で初めて対面した。そんな場に、彼の愛犬であるチェキちゃんも一緒についてきたのだ。
その日彼と別れてから一息ついた時「初デートが犬の散歩なんて可笑しいな」なんて、ひとりで思い返して笑ってしまったことを、今でも鮮明に覚えている。
その後も様々な縁が重なり、晴れてパートナー関係になって今年で3年。あの頃過ごした、ちょっぴりユニークな初デートエピソードも、今では良き思い出のひとつだ。
彼と出会ってからは、それはもう新鮮な気持ちが毎日のように更新されていく日々の連続だった。
今まで犬と一緒に暮らす経験のなかった僕にとっては、知らないことだらけ。それでも、チェキは既にきちんと躾がされていたこともあって、すんなりとふたりとの共同生活に慣れていった。
チェキはまるで、手がかかるけど可愛くて仕方のない我が子のようであり、共に楽しい時間を過ごせる友人のようでもあり、悲しいときや苦しいときに静かに寄り添ってくれる、家族のような存在でもあった。
パートナーとちょっとしたことでプチ喧嘩になった時も、チェキがいることで場が和やかになったし。一緒に並んで、川の字で寝転んでいる時は「家族みたいだね」って笑い合ったり。僕ら2人の恋人関係にとっても欠かせない存在で、緩衝材のような役割も担ってくれているなと、日々ありがたみを感じながら過ごしていた。
保護犬を迎えると言う選択肢
同棲生活が1年を迎えた頃から、彼と2人で「2匹目を迎えようか」と話し合うことが多くなった。
それはたぶん、2人の共同生活が安定期に入っていったこともあるし、チェキのたまにひとりでいる姿を見て(直接的には表現せずとも)寂しい場面もあるんじゃないかなと、それぞれが思ったからだ。
特に示し合わせたわけでもなく、2人とも保護犬のサイトを見始めて、僕は推しの子に直接会いに保護犬カフェに出向いたりもした。
好きな犬種で意見が異なることもあったけど、もし迎えるとしたら保護犬だよね、という認識だけは合致。「この子可愛くない?」「あの子家族が決まったんだって。良かったね!」と、時折交わすそんな会話も楽しかった。
今すぐではないが近い未来の"いつか"に向けて、保護犬を迎え入れる心の準備だけが万端になり始めていたある日のこと、予想もしないところから新しい仲間がやってきた。
突然、我が家にやってきたルル
最近我が家にやってきたルル。ペットショップで購入した訳でも、保護犬として譲渡を受けた訳でもない。この子は、パートナーである彼の実家からやってきた。
彼の実家にはたくさんの動物がいる。たしかルルを含め、犬3匹と猫3匹だったかな。ずっと彼のお父様が世話係をしていたらしいのだけれど、そんなお父様が先日逝去された。
お父様がご存命だった頃から充分に世話をできていなかったらしいことや、もし保護犬として他の家族になってしまうのであれば知っている人の方が良いという希望も含め、紆余曲折ありながらも我が家にやってくることになった。ということなのだ。
最初はまさかこんなルートで2匹目を迎えるなんて思ってもいなかったけれど、今となっては僕自身は「これって保護犬と同じようなことなのかも?」って感じていたりもする。
し、保護犬を迎えようと2人して、あーでもないこーでもないと語り合ったあの時間は、共にポジティブな未来を描いていたし、きっと次に新しい家族をお迎えする時のために、必要な時間だったと思う。
「保護犬を迎え入れる」という2人の希望は、未来に持ち越されたのだ。これからの楽しみが増えた。
子供の頃の憧れ
子供の頃の僕は、動物を飼いたくて仕方がなかった。とりわけ犬と猫が大好きだったと記憶しているが、犬猫がダメならハムスターや金魚でも良いと、節操なしに親に懇願していたことをほんのりと覚えている。
それでも、その希望が叶うことはなかった。特に父親が動物を飼うことに反対派で、幾度となく返される否定の言葉に、いつしか動物を飼いたいと口にすることはなくなっていった。
そんな幼少期を過ごしていたせいか、僕は無類の動物好きになった。犬猫はもちろん、鳥やカメ、鑑賞メインだが爬虫類も愛でる対象になりつつある今日この頃だ。
ルルとチェキが戯れている横で、彼も笑っている。そんな光景を見て僕も笑ったとき、「大人になったら絶対一人暮らしをして、わんちゃんとねこちゃんを飼うんだ!」そう心に決めていた幼少期の夢が徐々に叶っていってるなと、ふと思った。
チェキと違って、子犬だから当たり前だけど手のかかるルル。それでも、絶対できないと思っていた"伏せ"ができるようになった時の大きな喜びだったり、的確な教え方をYouTubeで学んで奮闘する日々を過ごしながら「僕が子供の頃に憧れていたことは、これだったんだなぁ」としみじみと嬉しさを噛み締めている。
子供の頃に一旦捨てた夢は、これだけじゃない。お金持ちになるとか、結婚して幸せな家族をつくるとか。自分の成り立ちや性別で、そんなたくさんのことを人生の選択肢から外してしまっていた、過去の自分がいた。
それでもいつかは、幼少期にたくさん悩んで諦めてきた夢を。今かすかに芽生えつつある「理想の家族像」というものを実現できるかもしれないと、最近は思え始めている。それは彼と、チェキと、ルルがいてくれるから。
未来を想像して楽しい気持ちになれた自分を、シーズーを抱えていた頃の自分に紹介したいなぁ。
この文章を書き終えた今、3にんと一緒にソファで座っている僕より。
ヨーすけ。