独学研究のススメ(外国生まれの日系人新聞アーカイブ『邦字新聞デジタル・コレクションジャパニーズ・ディアスポラ・イニシアチブ』の事)
「邦字新聞デジタル・コレクションジャパニーズ・ディアスポラ・イニシアチブ」
こちらは、スタンフォード大学・フーヴァー研究所が中心となって、「外国へ渡った日系アメリカ人や日系ブラジル人の新聞をまとめあげ、研究や調査をすすめる」という名目で作られたデジタルアーカイブです。
900万ドルという驚異的な寄付額を元に、最新鋭の技術のAIやOCR(光学文字認識)を惜しげもなく使い、完成させたスタンフォード大学自慢のコレクションです。
流石は世界のスタンフォードと言いたい所ですが、こういう仕事は本来日本がやるべきことではないでしょうか。そう考えると如何に日本がケチで学術立国が夢また夢である事が……と愚痴が長くなるので切り上げます。
さて、「移民や日系人が発行していた新聞」を旨とするだけあって、日本語対応(一部変な文章もありますが)で、使い勝手は非常にいいです。
また、韓国のデータベースのようにダウンロードする手間もなく、「外国のアプリ入れなきゃいけないの」という不安感もありません。国会図書館デジタルコレクションや何やらと同じように普通に使えるものだと思います。
人で例えると、「外国で生まれ育ち、外国で日本文化を学んできたものすごく優秀な帰国子女」という所でしょうか。
日本の文化を海外の研究所が着目し、展開する所に何とも言えぬ皮肉さと、外国の力の入れ方のけた外れぶりを見るような気がしてなりません。
日本語対応というだけあって、特段覚える様な検索方法もありません。気になった語彙を入れて出てきた画像をクリックすれば普通に立ち上がります。
出てきた画像は大きくも小さくもできますし、PDFとしても保存できます。右枠に機能ボタンがつけられていますが、
このボタンの内容も日本語で表示されるため、迷うことは殆どないと思います。国会図書館デジタルコレクションを使えればこのデジタルライブラリーを使いこなせるのではないでしょうか。
米国本土をはじめ、ハワイ、ブラジル、朝鮮、ロシアと日系人新聞があった所のコレクションを多く網羅しています。欠号や欠落も結構ありますが、ハワイ、アメリカのコレクションは一通りそろっているので
非常に便利なアーカイブですが、「権利関係が取れていない新聞は読む事が出来ない」という欠点があります。
これは検索してもらえばわかるのですが、検索した画像に鍵マークがついていることがあります。これは個人のパソコンでは見られず、研究所や提携施設でしか見られないという「限定マーク」です。
日本で見るところは殆どないので事実上の閲覧不可と言ってもいいでしょう。
ハワイ新聞はこの鍵が多いので、検索に引っかかっても見る事が出来ないというジレンマによく遭遇します。
「チクショー、見せろや!」
と怒鳴った事も一、二回ではありません。
しかし、文面の一部(あるいは必要な部分全部)見られたりするので、不便一辺倒というわけでもありません。
また出典の目途が簡単に付けられるため、必要箇所を記録して国会や何やらで探す――というのも手です。出典が判っていて後は探すだけ、というのは本当に助かります。
今風に言えば「コストカット」的な一面があるわけですね。
「全部は見せないけど該当記事はわかる」これだけでも使い勝手がぐんっと上がります。
本当に文句の付け所がないほど、いいデジタルライブラリーだと思います。
冗談でもなんでもなく日本にもこういうライブラリーができないものでしょうか。