独学研究のススメ~分館経由の資料取り寄せをしよう~
まず最初に言っておきますが、「取り寄せくらい知っていらぁ!」というお方は今回の連載を読み飛ばしていただいて大丈夫です。わかっている人には「なんだ当然じゃないか」というお話です。
しかし、この「分館経由の資料取り寄せ」を知らない人がいるのも事実です。これで徒労をしている人も結構いるので指摘する次第です。
では、「分館経由の資料取り寄せ」とは何なのでしょうか。
図書館分館とは各地方自治体で定められた各地域に設置した支店のようなものです。市町村立図書館は、本館から距離のある人や地域住民への図書館供給や公共の福祉などといった側面で建てられている事が多いです。
普通は公民館や市役所の支部などと併設・近接する形で建てられていることが多いです。公民館の中に備えつけられている事もあります。
分館というだけに蔵書数はあまり期待できません。最低限の書籍、事典、雑誌などが置かれているのが基本です。地元の名士が寄贈したならいざ知らず、貴重文献や全集にありつける事は少ないとみていいでしょう。
「じゃあ何のために分館はあるのか。資料も少なくて読む本もないとなれば行く価値などないじゃないか」
そう結論付けるのは余りにも短絡的です。
もう一度言いますが、「分館は本館の支店のような存在」です。裏を返せば、本館と大きなつながりとネットワークを持っているわけです。分館にないなら本館から取り寄せてしまえばいいのです。
「本館の資料を最寄りの分館に召喚する事ができる」
やたら中二病臭いいい方になってしまいましたが、これが「資料の取り寄せ」です。
本館から分館へ、分館から本館への資料の往来や取り寄せは、図書館のルールや何やらで決まっている事です。そこに住んでいる人々が持っている権利といってもいいでしょう。
基本的に同じ行政区間内ならどれだけ距離があろうとも資料のやり取りが認められています。持ち出し禁止や相当な貴重資料を除いて「貸し出しOK」のものは基本的に拒絶されません。
規定ルール範囲内なら、限度冊数を申請しようと、めちゃくちゃ重い本を申請しようと、市民の権利として認められています。
「この回数を越えたら金を要求される」
「分館への取り寄せを使用するためにはサブスクが必要」
こんな事は一切ありません。どんな資料でもすぐ身近に借りられるのは大きな強みです。
この「資料の取り寄せ」を簡単に行え、簡単に引き取りと返却が出来るのが地方分館の最大の強みと言っていいでしょう。わざわざ本館へ行く必要がなくなるのですから、交通費や手間暇をグッと減らす事が出来ます。
仕事勤めの人でも、気が付いた時に資料を取り寄せ、休日に取りに行って確認する事ができます。
「また今度の休みに市町村立図書館の本館へ行って資料の返却と貸し出しをしなくちゃな」
といやいや頭を振りながら、電車やバスを待ったり、車に乗り込む必要はなくなるのです。
こうした面倒臭さ・億劫さがなくなるだけでも独学研究へのモチベーションはグッと向上します。
こういう事を言うと分館の職員に殴られるかもしれませんが、分館の最大の機能であり、強みは「資料取り寄せの中継地」にできることです。分館の中が如何にぼろくとも、蔵書がお粗末でもいいのです。
分館の利用は、意外に仮想空間的です。我々は分館を通して本館のライブラリーへと繋がる事ができるからです。
本を直接手にとってみられないのはちょっと難点ではありますが、それでもタイトルや目次を今日見る事ができるので、そこから推測をして申請をするのは手です。どうせ近くで受け取る事ができるのですから、大きな負担にはなりません。
もし、目当ての物でなかったとしても「ああ、思った本ではなかった」と一笑してまた違う本を申請すればいいのです。
昔は申請書を記載して、アナログで司書に提出し、それを取り寄せてもらう――という至極面倒臭いやり方をやっていたようですが、パソコンが発達した今ではボタン一つで解決できます。
「取り寄せ」の申請方法は各自治体によって違うので、自分の住んでいる地域の市町村立図書館と最寄りの分館を確認の上で調べてみてください。
この連載に辿り着ける位のネット知識があれば普通に使える事でしょう。
基本的には利用者登録をした時に一緒に求められるIDとパスワードを市町村立図書館のホームページに入力する事で個人の情報と結びつけ(マイページと言われることが多いです)、ログインしたうえで「どこ図書館で何を受け取りたいか」といった風に取り寄せを行うというカタチが多いようです。
申し込みに関しては各地の図書館のルールや取り寄せ方にしたがってください。公式ホームページを見れば大体出てくると思います。
まずは分館を使い倒して資料の主要ルートを確保する――これはどんな地方にいても、どこに住んでいても「独学研究」という目標を達成するうえで大切な地盤作りだと思われてならないのです。