③ドクターフランコとの面談
抜糸の日の翌日に腫瘍専門医と予約が取れたので、2日連続でメディカル・タワーに通う。
ドクターフランコは白衣を着たまま、走ってきた。
「どうぞ入って」
「今日はどうしてきたの? お名前は? 年齢は? 僕のことは誰から教えてもらったの?」
いろいろと聞かれたのでその質問に短く答える。ドクターフランコは、私の返答を聞き、キーボードを叩きながら、目の前のコンピュータに手早く入力する。
(わたし)病理検査の結果について先生のご意見だけをお伺いしたいと思って来ました。
手術をしてくれた整形外科のポール先生から渡された病理検査の結果とMRIの画像を見せた。
しばらくの間、検査レポートと画像を観察した後、ドクターフランコはおもむろに白紙を机に広げボールペンで絵を描きはじめた。
「君の腫瘍は、体のこの部分にあったわけだ。腫瘍部分を拡大するとこんな感じになる」
結構絵が上手だ。
「検査結果が説明しているのはこういうことだ」
腫瘍専門の医師が説明してくれるので、一段と理解が深まる。来てよかった。
「手術の跡を見せてくれるかい?」
こういうこともあるかと思い、脱ぎやすいTシャツを着てきて良かった。
2段ほどの階段がついている診察台に登って座った。
左脇の下の手術跡と乳房をゆっくり中指で触診し始めた。さすが専門医、一箇所ずつじっくり確認している。
触診が終わり、また先生のデスクに戻る。
「君が、ぼくのお姉さんやママだったら、すぐに手術とラジオセラピア(放射線治療)を勧めるよ」
(わたし)えっ、また手術ですか?
「だって、まだ腫瘍が残っている可能性があるからね。ラジオセラピアも含め全部で十万ペソくらいかかるかな」
(わたし)ちょっと考えてみます(と、うそをついた。ごめんなさい)。
また手術をするのは気が進まない。
ポール医師の手術後、とても体調がとても良いからだ。
"しばらくなにもせずに放置したい"
そういうと普通のお医者さんはきっと怒るだろうな。
ポール先生も信じられないという顔をしていたし。
現代の医療というのは、巨大なビジネスになっているような気がする。
なんだか複雑な気持ち・・・
(つづく)
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