「床の国と上の国」

3歳のときよく遊びに行ってた近所のレイニーの家を、床の国と呼んでいた。家具が高すぎてよく見えず、ひたすら床と向き合うことになるからだ。レイニーのお父さんは足しか見えない足人間で、見上げると高みの先に影に包まれた顔があった。ある日、洗面台に手が届かない私の元へ足人間が寄ってきて、黙って私を抱き上げた。ぴゅーんと上の国へ連れてゆかれる。クラクラしながら見わたすと、貝の形の紫の石鹸、青い刺繍のタオル、金縁の鏡。床の国よりうんと色鮮やかだった。


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