聴覚過敏の話

 発達障害を持つ人には、感覚過敏感覚鈍麻を抱えている人が多いそうです。簡単に言えば、特定の刺激に対する敏感さ、あるいは鈍感さ。周囲と同じ情報を受け取っても、脳が異なる受け取り方をしてしまうのだとか。


 表題のとおり、私の場合は聴覚過敏を抱えてます。突然の大きい音や甲高い音、ざわざわした場所が苦手。そういった音がそばにあると気になって集中できなくなり、その場から逃げ出すこともあるほどです。些細な音も拾いますが、過集中(これも発達障害の特性です)に入っていると反対に周囲の音が耳に入らなくなるので、「都合の良いときだけ地獄耳」とか不本意なことを言われたこともあります。違うんだよう。

 ここからは具体的にどんな音が苦手なのか、どんな風に苦しめられたのか、対策グッズや処方されている薬についてお話していきます。

苦手な音とその発生源

・破裂音

 突然の大きい音の代表格です。風船は恐怖の象徴。遠くから見ている分には良いですが近づきたくはありません。その昔、科学館で「ビニールボールを液体窒素に入れるとどうなるのか?」という実験を見せてもらったことがあるのですが、白衣のお姉さんが宙に放ったボールが床に落ちた瞬間、パァンだかパリーンだかとにかく大きな音を立てて破裂したものですから幼い私はギャン泣きしました。気になって調べてみたらでんじろう先生も同じ実験してました。勢いに笑う。

・甲高い音

 身近な脅威を挙げると発砲スチロール。擦れるときのキュイキュイ音が耐えがたく苦痛。梱包がこの素材だとかなり身構えます。学生時代だと黒板にも身構えてました。苦手なくせに「もし思いっきり爪を立てたら・・・」とか想像してしまい、一人で勝手にゾワゾワしてました。金切り声も苦手なので、小さい子はかわいいけど脅威です。


・雑踏

 普段はそこまででもないのですが、調子がよくないとその場にいるだけでじわじわと体力や精神力が削られていく感覚に陥ります。ゲーム的にいうと、雑踏をトリガーにHPとMPへのスリップダメージが発生するデバフにかかった状態。


・怒声

 生育環境もあるのでしょうが、これも本当に苦手です。声を荒げていなくとも、イライラが滲み出ている声だけでも心穏やかではいられず、ずっとそばにいると呼吸が浅くなったり泣きそうになったりするのでそっとその場を離れるに限ります。


・クチャラーの咀嚼音

 生理的に受けつけない音です。猫のちゃむちゃむ音はかわいいしずっと聞けるのにね。

 昔の職場にクチャラーがいまして、小さい休憩室で昼食をとる際に必ず鉢合わせてしまうので、イヤホンをつけて大きめに音楽を再生しながらお昼をとっていました。ただ、曲の切れ目の時間にイヤホンを貫通して咀嚼音が耳に届いてしまうのが苦痛で、休憩室の利用時間をずらしたり、一人になれる場所で食事をとったりするようになりました。指摘することも考えたけど、今まで指摘があっただろうにあのお年まで直ってないということは改善する気がないんだろうなぁ・・・と思ったのと、単純に年上の男性に物申すのが怖かったのもあって言えず終いでした。


・静かな中で一つだけある音

 具体例としては時計の秒針の音。さぁ寝るぞってときに限ってものすごく気になってしまい、布団を頭から被って音を遮断しながら寝ていました。今の部屋に時計はないのですが、もし買うとしたら次は絶対静音タイプのものにする、と決めています。


・父

 実家暮らしをしていた頃の一番の騒音源かつストレス源でした。ヨーグルトが好物のようで、よく食べているのを見かけるのですが、これがまぁうるさくて。ガラスの器とティースプーンでなんでそんな騒音が立てられるのか甚だ疑問ではありますが、チャンカチャンカチャンカチャンカと不快に甲高い音を立てて食べるのです。この音、一階で発生しているにも関わらず、二階の自室にいてもはっきりくっきり聞こえる程度には音量もあり。イヤホン大音量の音楽で遮断しようとしても貫通されるので、何度頭をかきむしったか知りません。ヨーグルトをあちこちに飛び散らせておいて掃除もしない、食べ終わった器をシンクに放置するという点も併せてなおのこと腹立たしい。

 また、深夜に夜食を食べるときの音も迷惑でした。レンジの音、トースターの音、食器洗いの音、全部が全部睡眠を阻害してきます。特に食器洗いなんて、普段はしないくせにみんなが寝静まっているときに限ってやるのです。それも扱いが雑なのかガシャガシャうるさいとくる。お前仕事してないんだから昼の誰もいないときにやれよ、と何度起こされた布団の中で恨んだか。この夜食のターン、1回で終わらないところも迷惑度が高い。どこがバグっているんだか知りませんが、母によれば「1日6回食べる」日もあるそうで。下手すると一晩中夜食の音を聞かされ続ける訳です。よく発狂しなかったな、実家暮らしのときの自分。ちなみにこちらもなんで指摘しないかって、言ったところで逆上されて数倍面倒なことになるのが目に見えているからです。経験則です。

お助けアイテムと処方薬

・イヤホン&音楽プレーヤー

 上記で何度か登場したとおり、大音量で不快な音を上書き&遮断する作戦です。耳の健康には良くないであろうことと、音楽の切れ目に貫通されることがネック。


・ノイズキャンセリング耳栓

 見た目はワイヤレスイヤホン。周囲の音は遮断したいけど音楽はいらない気分のときに使います。完全に聞こえなくなる訳ではなく、周囲の音と自分の間に毛布のバリアが張られているような聞こえ具合になります。音楽大音量作戦と違い、声をかけられてもちゃんと気づける点はグッド。お値段が少々張る点と使いたいときに限って充電が切れていることがある点はバッド。職場には一応使用の許可はもらっていますが、使うときは髪で耳元を隠すなどしています。


・エビリファイ(アリピプラゾール)

 主治医の先生に聴覚過敏のことを相談した際に出してもらった薬です。継続して服用していますが、音への過敏性が大分緩和されます。個人的にはとても効果があった。

 注意点として、アルコールは控えることと服用後は車や機械の運転はしないことが調剤薬局の説明書には書いてあります(なので服用タイミングは夕食後)。副作用として衝動性が病的に増すことがあるという記述もあるのですが、これはレアケースだとか。


最後に

 という訳で、現在はエビリファイのおかげで「音に敏感すぎる」から「普通に耳のいい人」レベルには落ち着いております。現代医学バンザイ。とはいえ相変わらず苦手な音は多いので、遭遇すればそっと距離をとるし、逃げられないならアイテムを駆使して耳を塞ぎます。私の場合はエビリファイが合っていましたが、音に痛みを伴うタイプの聴覚過敏の人にはまた別のお薬があるそうなので、まずは心療内科や精神科の先生に相談してみることをおすすめします。私はそれで長年の悩みだった聴覚過敏が緩和されたので。同じ悩みを抱える人の参考に、少しでもなれたなら幸いです。

いいなと思ったら応援しよう!