鈴木福くんが金髪にしました。
髪の毛が伸びに伸びまくってる。
高校を卒業してから髪を切ってない。
中学高校は容儀検査があったから、耳・眉にかからない程度の髪型をキープしなければならなかった。
そもそも床屋が嫌いで極力行きたくなかった性格もあって、検査の日ギリギリになるまで髪の毛は切りたくなかった。
散髪の嫌なところ、なんて頼めばいいか分からんところ。
切り終えた髪をいいと思ったこと無かったところ。
周りに髪型の変化を気づかれるのがなんか嫌だったところ。
ところで、ところてんを食べる所ジョージの写真って、この世にあるんですかね?
存在しなかったとして、きっと誰かがイラストか雑コラで作って、「ところてんジョージ」とか面白いと思って言ってるんでしょうね、ネットって怖い。
とにかく、一定のペースで髪を切らなくていい大学生活が始まり、髪の毛をどうする必要もなくなった。
周りは茶髪にしたり舐達麻みたいにしたりチン毛みたいにしたりして、それぞれのおしゃれを楽しんでいる感じで正直羨ましく思う節もあった。
一方ぼくは、半年も髪に手を加えていない。
前髪も襟足ももみあげも平等に伸び、「ピンポン」でのグレたときのペコみたいな見た目になってしまった。
あんなに爽やかなポカリスエット系男子だったのに、半年で「ところてんジョージ」なんて言うようなドクペ系になってしまった。人生は何があるか分からない。プチフォレストガンプだよ全く。
そんな中、鈴木福がCMで髪を金髪にした動画を見てしまった。
スピードワゴンの小沢と出てた水のCMで、福氏は「モテたいから」と髪を金髪にしていた。
もちろんCM中の演出なので、福氏の本心は知らない。だが、彼も「モテたいから」という理由で髪を染める齢だということがジリジリと伝わってきて、なんか辛くなってしまった。
鈴木福という男は、とてつもない運と才能に好かれた男だ。財力も、演技力も、コミュニケーション能力も、すべてにおいて僕よりも優れていることは言うまでもない。
唯一勝てるのは年齢だ。彼はまだ選挙に行ける年齢ではない。彼と話すときぼくはきっと、選挙権という武器をひたすらにこすり続けマウンティングするしかないのだ。
「でもさぁー、福くん、選挙権ないんでしょ?どれだけ演技うまくてもさぁ、選挙権なかったら意味ないよねぇ?」
ダサすぎる。あと二年しか言えないし、選挙権あるから何だよ。
そんな、年齢でしかマウントを取れない格上の少年に、先に髪を染められてしまった。モテたいからというちゃんとした理由で。
僕はずっと、モテたいからという理由で容姿を気にするのがなんか小恥ずかしかった。
その気持ちのまま18歳になって、おしゃれだったり髪型を変えたりしたいと思ってるのに、できないままでいる。
過去の自分が首を絞めているのだ。これは結構大きな問題で、はやく解決しないと面倒なことになる。
現に前述したように「チン毛みたいな髪型」なんて、斜に構えてみてる時点でけっこうヤバい。自分のキモオタヘアーを棚に置いて、自分より容姿に気を使っている人を馬鹿にしているのだ。ゲロダサい。
今の自分の首を絞めている過去の自分に、福くんが笑顔で「これ使えばー?」と縄を差し出してきた。殺しにかかっている。
違うんだよ福くん、ぼくもそっち側に行きたいんだ。みんなが羨ましいんだ。
だけど、ぼくがそんなことしていいのかな?僕みたいなやつに馬鹿にされないかな?
福くん、僕頑張ってみるからさ、そっち側にいけるように頑張ってみるからさ、もしそっち側いったら、一緒にマルマルモリモリ踊ろうね。そのときは愛菜ちゃんも呼んでさ、三人で踊ろうね?
「愛菜ちゃんはもうそんな歳じゃないんだよ」
金髪の鈴木福は僕にそう言った。
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