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階シリーズ

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足を出しても進まない。膝を上げても昇れない。下っていくほど深くはない。 旅ではなく、迷い躓くための「階シリーズ」の詩集。
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2022年9月の記事一覧

階の十二 「黒い服のバロネス」

黒い黒い服のバロネス 黒い黒い服のバロネス いつも窓辺に独り立ち 帰らぬ児らの看取り待ち 幸薄かれと願を掛け 価値弱まれと難を避け 明けぬ夜道の父を呼ぶ 巻けぬ鎖は宙を跳ぶ 黒い黒い服のバロネス 黒い黒い服のバロネス 瘤より役に立たぬ空 飛ぶより飽くの待たぬ法螺 貰い物より残した鉄漿に 暗い眼指落とした畝に 胸の空くよな しゃっくりひとつ 爪を剥くよな 徳利荷物   黒い黒い服のバロネス 黒い黒い服のバロネス お疲れの演をあの児らと見て お流れの宴をあの人と

階の十三 「ラーラ・ラーラ」

ラーラ ラーラ 高い高い塔の上から飛び降りて 窓ガラスに映る空の青さを粉々に砕いて 見上げることでしか知れない空なんか忘れさせておくれ ラーラ ラーラ 深い深い夢の底まで潜り込んで 追いかけてくる罪悪感から僕だけを逃して 曇り空に残してきた声の出し方を覚えさせておくれ ラーラ ラーラ 長い長い山脈の先から顔を出して 穢れた息吹で雪肌に霊薬を塗り込んで 地殻へと染み込んだ電流を途絶えさせておくれ ラーラ ラーラ 巡り巡る血で血を洗う右手首を掴んで 照り返す感情に萎えさせら