179回目のマンチェスターダービー
プレミアリーグ 16節 マンチェスター・シティvsマンチェスター・ユナイテッド。昨年王者がホームで迎えるライバルとのダービーマッチ。優勝へ負けられないシティ、ビッグ6相手に今季負けなしのユナイテッド。激戦必須の一戦が幕を開ける。
マンチェスターダービーを制したのは
両者負けられない一戦は、テンションの高い入りとなった。序盤シティは前線からハイプレスをかけスターリング、B.シルバがサイドから攻撃を仕掛ける。しかし23分、ラッシュフォードのドリブル突破をB.シルバがペナルティエリア内で倒し、PKを与えてしまう。これをラッシュフォードが冷静に流し込みユナイテッドが先制。さらに29分、セカンドボールを拾ったラッシュフォードがマルシャル、ジェームスとつなぎ、最後はマルシャルが左足でゴールを決めリードを2点に広げる。その後もシティにボールを持たれる展開が続くがしっかりとブロックを固め、決定機を作らせない。後半に入り、スターリング、D.シルバ、アンヘリーニョが流動的にポジションチェンジを繰り返すも、ワンビサカのはじめとするDFラインを崩すことができない。停滞気味のシティだったが、交代で入ったマフレズのCKからオタメンディが頭で合わせ、1点を返す。ここからエディハドスタジアムは空気が変わり、サポーターが背中を押す大声援が巻き起こる。しかし集中力が途切れないユナイテッドがこのまま逃げ切り、2-1のユナイテッドの勝利でマンチェスターダービーは幕を閉じた。
守備と攻撃をつないだ男
ユナイテッドが勝利を掴んだ、マンチェスターダービーのMVPは誰だろうか。得点をあげ攻撃陣を牽引したラッシュフォードか、相手のチャンスをことごとく潰したワンビサカだろうか。確かに彼らは素晴らしい働きを見せ、勝利に大きく貢献した。しかし忘れてはならない男がいる。この試合トップ下の位置に入ったジェシー・リンガードである。彼は得点力があるわけでもなく、デブライネのように鋭いパスセンスを持っているわけでもない。ユナイテッドのサポーターであれば、期待はしているがいまいち、という評価を持つものも少なくない。しかしこの試合彼に確かな才能を感じた。ユナイテッドの特徴はなんといっても強力なカウンター攻撃であり、シティのようなボールを保持しながら相手陣内でほとんどプレーするチームとは相性がいい。だが、もちろんシティ側も対策としてボールを奪われた後の素早いハイプレスをしかけてくる。その為DFラインでボールを奪ったとしても、前線の選手が裏に抜ける動きを作る時間が取れず、相手を背負った状態またはハーフエリア付近でのプレーになってしまう。しかしこの試合では序盤からジェームスやラッシュフォードのカウンターが炸裂したのは、リンガードがリンクマンとしてカウンターの起点になっていたからである。多くの場面ではリンガードのケアはロドリが見ていたが、ロドリはペップの戦術的にDFラインに吸収されることが多い、その為かリンガードにボールが入った際は奪いに行くというより、敬遠しつつプレスバックしてくる見方を待つという形になっていた。しかしリンガードがこのプレスバックをうまくいなすことができ、さらにはラッシュフォードやジェームスの裏抜けの時間も生み出しいていた。このような黒子のように味方を生かすための働きを軽視してはいけない。彼らがいなければ前線の選手たちは攻撃をするチャンスすらもらえない。アンドレアス・ぺレイラとポジションを争っているリンガードだが、シティ戦のような働きを継続的に見せることができれば、ファーストチョイスであり、ユナイッテドに欠かせない選手になれるはずだ。
居場所を奪われたアシスト王
今シーズン、プレミアリーグにおいて最多アシストを記録しているケヴィン・デブライネはこの試合ではチームを勝利にもたらすことはできなかった。試合序盤は、普段のように相手CBとSBの間の高い位置に入り、相手を釣る動きを見せながらサイドに張っているB.シルバにパスを入れさせ、リターンパスをもらいクロスをいれていた。しかし試合経過とともになかなかボールに触れられなくなる。ユナイテッドはペナルティーエリアの幅で選手を集め、中盤の選手たちとタイトな距離を保っていた。サイドの選手にボールは入るもののそこからデブライネに渡らない。デブライネ自身がサイドに流れたり、低い位置でもらことはあっても決定的なクロスをあげられる場面は少なく、彼の高い個人能力でボールキープしクロスをあげるシーンもあったが効果的なものはほとんど生まれない。後半に入りD.シルバと流動的にポジション移動を繰り返していたが、明らかにユナイテッドの中央の密集地帯を嫌がっており、左サイドに張っていることも多く、彼の武器を効果的に使うことができていなかった。この試合彼が敗因だったわけではない。むしろシティ側ではうまくこなしていた方ですらある。しかし彼の最も輝く場所ではプレーさせてもらえなかった。今シーズンここまで素晴らしい活躍を見せているものの首位との差が大きく生まれつつあるのは、彼に気持ちよくプレーさせてないことが一つの要因かもしれない。完成された選手にみえるデブライネだが、ここから逆転優勝を望むならば、さらなる進化をみせなければいけない。