王立病院タルラランの入院患者【シャロン】
経過は良好、今回が最後の入院になる。
そうお医者様に言われた日、私はお兄ちゃんと抱き合って喜んだ。
生まれてからずっと体が弱く、入退院を繰り返した日々。
学校は数える程しか行けていないし、普通の女の子が体験する日常を、私は何一つ知らない。
だからこその喜び。
元気になったら、今までの時間を取り戻すの。
たくさん勉強して、たくさん遊んで、たくさん友達を作るのよ。
そう思ってお兄ちゃんの背中に腕を回していたのに、次の瞬間私は凍り付いてしまった。
「退院したら、僕のフィアンセを紹介するね」
お兄ちゃんに、恋人がいることは何となく気付いていた。
でもそれを現実として言葉にされると、胸が痛い。
受け止めないといけない。でも、多分、時間ときっかけがいる。
だから、わがままを言ったの。
来週の誕生日プレゼントに、真っ白でフワフワのお姫様が着るようなパジャマが欲しい、って。
今まで服なんて、欲しがったことはなかった。
入院生活ではそんなに重要ではないから。
お兄ちゃんにおねだりするものは、いつも決まって本やぬいぐるみ。
ファッションに無頓着なお兄ちゃんは、もちろん困っていたわ。
でも、どうしても譲れなかった。
絶対にパジャマじゃなくちゃ嫌、買ってくれないなら退院しても家には帰らないって癇癪を起して見せた。
もう立派なレディなのに。
準備できるとは思っていなかった。
だってお兄ちゃん、本当に洋服のセンスがないし、誰かに頼んで用意してもらうにしても、来週までじゃ短すぎる。
私はただ、お兄ちゃんに誕生日まで、私のことだけを考えて困ってほしかった。
それまでに心の中を整理して、お兄ちゃんの婚約を祝えるようになるつもりだった。
けれど、誕生日の日。
私のベッドの上には、真っ白でフワフワのお姫様が着るようなパジャマが置かれた。
どうしたのって聞いたら、フィアンセに教えてもらった町はずれの仕立て屋さんに注文したという。
店のオーナーである巨人さんに事情を話し、無理な納期で仕上げてもらったらしい。
私は困惑しながら、パジャマに袖を通した。
とてもとても、軽くて着心地が良かった。
ずるい。
これじゃあ、認めるしかないじゃない。
退院したら、ちゃんとお兄ちゃんのフィアンセに挨拶して、お礼を言わなくては。
でも、どうか。
退院するまでは、私だけのお兄ちゃんでいてね。
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◎販売ページリンク◎
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・ひとつひとつ丁寧な制作を心掛けておりますが、趣味で作成しているものですので、完璧な既製品レベルをお求めの方はご注意ください。
・小さなパーツも使用していますので、長くご着用頂くためにも優しくお取り扱いください。
・お洗濯はお勧めしません。やむを得ない場合は、手洗いで優しく揉み洗いした後、当
て布をしながらアイロンをかけてください。
◎最後に◎
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素敵なご縁を頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。