表現者

※一人芝居『インスタント・ガールフレンド』
※ネタバレ注意です!!

2019年6月1日、新進気鋭の若手女優『どんちゃん』こと、宮下真実さんの一人芝居を観劇しに、東京渋谷にあるギャラリー&スペース「しあん」へ行ってきた。
一人芝居に相応しく、こぢんまりとした古民家風の小屋。客席30人ほどだろうか。冷房をガンガンに効かせても、終演間際には熱気で暑くなる。

彼女(以下どんちゃん)を知ったのは、同年2月頃だろうか。僕がファンである元アイドルの高井つき奈さんと同大学に通う仲の良い友人関係。そんな二人が台湾旅行へ行くことがツイッターやインスタに上がり、どんちゃんが気になり始めたのだ。

とにかく、目が大きく、顔立ちがハッキリしており、くるんとカールさせた短い黒髪が特徴の可愛らしい子なのである。
どんちゃんは、今回の一人芝居を観る1ヶ月ほど前、電脳演形キャステットという舞台で観たのが最初。その時も、あの大きな目を見開いて、コミカルに楽しく役を演じていた。

前置きはこの辺にして、今回の一人芝居。
作演出は表情豊さん。タイトルは『インスタント・ガールフレンド』。
どんちゃんの為に書き下ろした作品という感じで、役柄全てにどんちゃんが詰まっているように思えた。
どんちゃんが1人で5役を演じる。最初は同居人なのかな?って思って観ていたが、次第にそれはどんちゃんの中にある5つの人格のように感じられた。
現代社会の世知辛く生きづらい、息(生き)苦しさの数々は、即席(インスタント)でいい加減に、簡単に、適当に済まされていく。インスタントラーメンを食べるシーンは、それを比喩しているように感じた。
そんな生き方でいいのか、自問自答の葛藤を繰り返す様子は、さながら心に圧縮された不満や疑問を爆発させるように、自身の中の5人の人格が激しく訴えかける。
その熱量はすごく、小屋(客席)全体を巻き込むほどだ。

その過程の中で、どんちゃんは成長をみせる。
「人生どれだけの事が自分に降りかかり、それらを片付けて次へ進まねばならないのか。」
若いからこそ、そこに格闘をみせる。
結果、最後に食べるラーメンは、カップ麺ではなく、調理され丼に入れられて登場する。
そこに、65分間の成長が見えた。
どんちゃんを『どんぶり』と掛けているのが面白かった。

僕なりの解釈でこの物語を観てみた感想なので、感じ方は人それぞれだし、表情さんが何を伝えたかったのか、答えはわからない。
ただ、これだけは言えると思う。
この物語は、宮下真実の為に書かれたホンである。どんちゃんと表情さんがぶつかり合って、信頼し合ってこそ出来上がった唯一無二のお芝居だったということ。

余談ですが、僕は芸術畑で学生時代を過ごしました。音楽、絵画、演劇、文筆、色んな形で自己を表現する人たちに囲まれて過ごしてきたのでわかるのですが、表現者はおおよそ『変人』です!笑

夜な夜な芸術論や音楽論を語り、前衛的で意味不明な作品(作品自体に意味はある)を発表し、一般人から見たら変態集団にしか見えないインスタレーションやワークショップを開催したりしていました。
でも、組織に属し、皆同じ方を向いて進む社会の中において、自己表現の場が失われつつある現代。自分なりに作り上げた世界というものがあってもいいと思います。というか、あるべきです。
故に、表現者は孤独との闘いになり、時に精神が狂いそうになりますが(笑)
お芝居をする役者やホンを書く脚本家や演出家の方々もある種同じではないかな、と。

僕はといえば、高校3年で作曲を志し(普通あり得ない。遅すぎる。)、2年浪人し、5年学部生活を送り(理由は聞かないで)、2年大学院生活をしていたので、18歳から9年間(内7年も学生)も音楽のことばかり考え、他の芸術とも共作し、30歳まで定職に就かず曲を書き続け、アルバイトをしながら頑張りましたが、途方も無いゴマ粒のような可能性に挫折を味わい、結局は今は普通のサラリーマンです。

でも、やはり組織というものが大嫌いだ。
個性を尊重して、それを武器に頑張っている(まだ成功とはいえない駆け出しの)若者たちを観ていると、自然と応援したくなるんです。
勝手に自分を投影しているだけなのですが…。

とはいえ、僕もまだ41歳なので、何か出来るかも知れないなぁ…という希望と、手を出せない臆病な気持ちを抱えつつ葛藤してもがいています(笑)

これからも若い世代の頑張る方々を応援していくことが生きがいです。

今回の一人芝居は、そんな自分と重ね、刺激を受け、本当に感化されたものでした。

どんちゃん、表情さん、凄いです!!!!!

2019年6月2日  よっちぃ

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