❹スイッチ
「来週の金曜日に検査結果を聞きに来てください。
その時に問題がなければもう大丈夫だと思いますよ。」
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1月が終わる頃に発生した左キャン玉の違和感。
1週間ほど気づかないふりをしたが、ごまかしきれず泌尿器科童貞を失い、前立腺炎だとの診断を受けた2月4日。
10日間悩んだ採精ミッションを何とかクリアしたのが2月15日。
1日2回忘れずに薬を飲み、毎日お風呂に浸かり、久しぶりにジョギングも再開した。
目指せ健康オタク。
いや、マイナスを取り戻すんだ。
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日に日にイワキャンは薄れていく。
金曜日が仕事で間に合わず、検査結果を聞きに行くのは月曜日になる。
薬が足りない。
キッチリ分渡されたお薬をキッチリ飲んだら金曜日にキッチリなくなった。
不安。
イワキャンの薄れはお風呂やジョギングなどとは関係なく、薬の力だけによるものだとしたら、土日は気づかないふりをし続けなければならない。
が、まぁ仕方ないか。
やはり原因がわかっているというのは心強い。
病院には行くべきなんだね…
強気が功を奏したのか、土日に違和感はほぼ訪れず、月曜日の終戦宣言を確信する。
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月曜日。
「検査結果を聞きに来てください。」とだけ言われていたが、あの人のことだからおしりグリグリもするかもしれない。
ということでシャワーを浴びてから向かう。
都合のいいフレンドみたいだ。
受付ご担当がまたまた初めてお見かけする愛想控えめのお姐さんだったがそんなことにももう慣れた。
空いていたのですぐに診察室へ通された。
「どうですか?」
と、先生の声が心なし力強い。
そうでしょそうでしょ。そうでしょうね。だって結果知ってるもんね。
「もうほとんど違和感ないです」と、こちらも負けずにムフムフする。
細長い薄緑色の用紙を見ながら、
「失礼ながら淋病も検査させてもらいましたが、異常ありませんでした」
容疑が濃い。
「淋病」より「失礼ながら」という単語に少し戸惑いながら、「良かった~。ありがとうございます。」と安心する。
「じゃあちょっと調べるのでベッドに・・・」
言い終わるか終わらないかぐらいのスピードでベッドに横になりパンツを下ろして膝を抱える。
都合のいいフレンドではない。
「これ痛いですか?」
と、躊躇なく指を突っ込まれる。
全然マシ。過去一番マシ。と思いながら、
「痛くなくはないですけど…」
お尻に指突っ込まれたら痛くなくなくない?と思っていると、
「これはどうですか?」
と、かなりグリグリされる。
「い、痛いです。」
そらそんなしたらおへそでも痛いよ?と思っていると、
「ぺしゃんとなってますけど、痛いですか…
じゃあマッサージして尿の検査してみましょうか」
とさらにグリグリされる。
多分そんなにグリグリしてないんでしょうね。
健康体ならこれぐらい痛くないんでしょうか。
もしかして、皆さん普段からほぐしてるんですか??
「前立腺炎」で調べていた時に、「前立腺マッサージは医療行為」という記述を見かけたけど、ガチなん??
今度あいつに会ったら聞いてみよう。
グリグリタイムが終わり、パンツを上げカーテンを開けると看護師さんが紙コップを持って立っていた。
日常感。
凄いですよね。先生も看護師さんも。
私はカーテンに隠れて非日常を極めているというのに、布一枚向こうではそれを毎日見守っている人達が粛々と仕事をこなしている。
人のお尻に指突っ込むこと一生ないと思う。
それをテレビでやってる芸人さんってもう…この辺の話はまた今度にしよう。
グリグリの後の検尿は2㏄でいい。
2㏄は小さじ5分の2。もう知ってる。
問題はチョロで止められるかどうかだ。
何とか15㏄ぐらいでストップさせ提出すると、すぐに診察室へ通された。
ここの病院には検査の有段者がいる。絶対。
なんなら見た目でいけるぐらいの人がいるんじゃなかろうか。
検査をしてみると、尿に血が混ざっていたらしい。
グリグリしすぎたんじゃねーの?
などとは微塵も思わず、まだ治っていないという現実を受け止めるしかない。
「あと2週間薬を飲めば、それでもう治るだろうと思います。2週間後にまた来てください。」
闘いはまだ2週間続く… はぁ…
との凹みに気づかれたのか、
「もし痛くなったらすぐ飛んできてくださいよ。くれぐれも体を冷やさないように。」
優しい言葉に心をグリグリされる。
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ということで、終戦は2週間お預けとなった。
お預け。
検査をしてもらい、原因がわかり、お薬をいただき、生活する上での注意点も教えてもらう。
治ると信じさせてくれる。
それが一番の処方箋なのかもしれない。
サボっていたジョギングを再開するきっかけもいただけた。
これは前立腺以外にもきっと効く。
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