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抗がん剤の高血圧に対してはどの降圧薬を使う??
抗がん剤の中には、高血圧を引き起こすものがあります。
どのような抗がん剤が高血圧をもたらすのか、その対応方法や注意点を抑えていきましょう!
抗がん剤の高血圧
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まずは高血圧になる抗がん剤やその副作用によりどのようなデメリットがあるのかを分かりやすく解説していきます。
高血圧になる抗がん剤
高血圧を引き起こす抗がん剤はいったい何でしょうか。
主に、VEGF(血管内皮増殖因子)に関与する抗がん剤には高血圧の副作用が多く報告されています。内服にも点滴にも存在する為、それぞれどのような薬剤があるのか抑えていきましょう!
ちなみにVEGFは血管新生といって、がん細胞にとっては自分に栄養を届けるための血管を作り出しています。
抗VEGF作用を有する抗がん剤はこの血管新生を阻害することで抗悪性腫瘍効果を示しています。
◆内服薬◆
レンバチニブ(レンビマ®)
ソラフェニブ(ネクサバール®)
スニチニブ(スーテント®)
レゴラフェニブ(スチバーガ®)
パゾパニブ(ヴォトリエント®)
アキシチニブ(インライタ®)
バンデタニブ(カプレルサ®)
◆注射薬◆
ベバシズマブ(アバスチン®)
ラムシルマブ(サイラムザ®)
アフリベルセプト(ザルトラップ®)
主にこれらの薬があるので名前だけでも頭に入れておくと副作用の聴取に漏れが少なくなります。
VEGFに関与するものが高血圧に影響すると伝えましたが、VEGFとはいったいどのようなものなのでしょうか?
高血圧の機序
VEGFは血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)を産生にも関与しています。
抗VEGF作用によりNOの産生が低下する為、高血圧が生じると言われています。100%用量で使用されている場合にはかなりの確率で発現しています。
高血圧がもたらす不利益
高血圧の持続は皆さんもご存じの通り、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管イベントのリスクに繋がります。
また、VEGF糸球体内皮細胞の保持にも関与しているため、抗VEGF作用のある抗がん剤を使用すると腎機能障害のリスクに繋がります。
主にタンパク尿として症状が確認されます。タンパク尿も悪化していく場合ですと、ネフローゼ症候群のリスクにもなるため早期の対応が必要です。
高血圧の治療時期
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基本的には拡張期血圧140~159mmHg又は収縮期血圧90~99mmHgとなるGrade2の高血圧の際には降圧薬の導入を検討していきます。
細かい対応は各薬剤の適正使用ガイドを参照していただければと思いますが、早期の対応は非常に重要なため、「Grade2の高血圧=降圧薬導入を検討」と覚えておくと対応がスムーズになります。
降圧薬の選択
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降圧薬と言ってもいくつも種類がありますが、どの薬剤を選択するのが良いのでしょうか?
原則、高血圧治療ガイドラインに準じるとされていますので、RAS阻害薬(ARBやACE-I)、カルシウム拮抗薬、利尿剤が候補に挙がります。
しかし、利尿剤をファーストで使う事は少ないため、RAS系かカルシウム拮抗薬のどちらかと考えておきましょう。
どちらを選択するかは、心疾患や糖尿病などの合併症やタンパク尿があるかどうかを目安に判断すると良いでしょう。
合併症やタンパク尿がない場合
カルシウム拮抗薬、RAS阻害薬のどちらでも問題はありません。
しかし、カルシウム拮抗薬の方がRAS阻害薬に比べて作用発現が早く速やかに対応ができるという特徴があります。
自分の肌感では、タンパク尿や合併症がない患者さんに対してはカルシウム拮抗薬が支持療法として処方されるケースが多く、理由は上記によるものと考えられます。
合併症、タンパク尿が陽性の場合
一方で、心疾患や糖尿病などの患者背景、タンパク尿を有する患者に対してはRAS阻害薬が望ましいことが多いです。
なぜ上記の背景を持っているとRAS阻害薬が好ましいのでしょうか?
理由は主に下記の2つです。
心不全に対してRAS阻害薬はキードラッグ
アルブミン尿への進展を抑制する効果がある
患者背景によって求められる効果は異なりますが、カルシウム拮抗薬と異なりRAS阻害薬には降圧以外の効果があり、そちらを加味することで元の疾患の増悪予防としての効果も発揮できるのです。
血圧測定のタイミングも意識!
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こちらもかなり重要なお話ですが、降圧薬の選択ができるようになっても、そもそも本当に評価している血圧が正しいものかを見極めなければいけません。
血圧は常に変動しておりその差も大きいです。
測るタイミングが異なることで不安定な血圧になりますし、平均が取りづらく正しい評価が行えません。
日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」では、血圧測定の方法について言及がありました。
簡単にお伝えしますが、下記のような方法を踏まえて血圧測定するように患者指導が必要です。
上腕カフ血圧計で測定’(正しく計測できる血圧計)
原則、朝晩で2回ずつ測定
週5日以上実施する
朝は「起床後1時間以内」で「排尿後」かつ「薬剤服用前」かつ「座った姿勢で1~2分間安静にした後」に測定
晩は「就寝前」で「座った姿勢で1~2分間安静にした後」に測定
これらのポイントを患者さんにきちんと指導した上で、血圧の評価を行い、患者さんの既往歴や検査値をみながらより効果的な降圧薬の提案を行っていきましょう!