大手前通りで今、起こっていること。
こんにちは。梶原です。
今回は、今姫路の大手前通りで行われている取り組みについてご紹介します。また、それを踏まえた今後のビジョンなんかも一緒にお話したいと思います。
大手前通りの現状と課題
これを読んでいただいている皆さんの中には、大手前通りのことをご存じない方も沢山いらっしゃると思います。
そこで、簡単にこの通りのことをご紹介。
大手前通りとは
これからお話する舞台となる大手前通りは、新幹線停車駅であるJR姫路駅と世界遺産姫路城を結ぶ全長800m・全幅50mのまっすぐな大通りです。
JR姫路駅前では、2015年から新しい駅前広場がオープン。駅の高架化や移設、新しい駅ビルの開業、トランジットモール(Wikipedia)の設置、サンクンガーデン(Wikipedia)の設置などの大規模な再開発が行われ、歩く人にとって優しい空間が完成しました。
そして、この駅前広場の整備に続き、姫路城へと続く大手前通りの再整備もスタート。令和2年3月にすべての工事が完了しました(詳細は姫路市ホームページを御覧ください)。
もともとは自転車と歩行者が同じ空間を通行していたので、特に雨の日なんかは結構危険でした。しかし、今はそれぞれの動線が分離され、とても歩きやすい通りに。さらに、それぞれの動線の間には地元間伐材を用いたウッドデッキが整備され、電気や水道なども完備されており、市民が有効に活用出来るよう工夫されています。
きれいになったのに課題って?
こういったハード整備が完了した大手前通りですが、今大きな課題を抱えています。
それは、沿道のテナントに銀行や学校、証券会社などが多く、飲食店や物販店などの”通りに染み出す店舗”が少ないことです。
つまり、せっかくハード整備が行われたのにも関わらず、それを有効に活用出来る店舗がほとんどないので、通りを歩いていても面白くないのです。きれいなんですよ。とても。散策するのはいいんだけど、途中で飽きちゃいますよね。。。つまり、通過するための道であって目的地ではない。
せっかくの世界遺産へつながる最高のシチュエーションであるメイン通りにも関わらず、歩いていても楽しくない。これは姫路にとって大きな課題であり、改善すべきポイントなのではないでしょうか。大手前通りが歩いて楽しいワクワクする通りになれば、市民の誇りになるような気がするのは私だけでしょうか。
更に将来のことを考えると、、、
実はもう一つ課題があって。
大手前通りのテナントビルですが、割と高齢化してきています。
つまり、今後5年10年で建て替えがそろそろ増えていく時期なんです。
もし建て替えの時、この大手前通りが今のままだったら。
マンションになって、一階の路面がそのエントランスになってしまう恐れがあります。そうなってしまうと、もうそぞろ歩きが出来る大手前は実現出来なくなってしまう。
実際、大手前通りにあったヤマトヤシキは今解体され、分譲マンションになることが決まっています。一階の路面がどうなるか、、
だから、今のうちから動き始めないとダメではないかと思うんです。そう、今から出来ることをやっていかないと。
令和元年から姫路市が動いている
こういった課題があることから、姫路市は令和元年からこの状況を打開すべくいろいろな対策を始めています。それが今私が関わっている「大手前通りエリア魅力向上推進事業」になります。ここでは、今都市コンサルティングの業界ではトップランナーになりつつある大阪のハートビートプランと一緒にこの事業に取り組んでいます。
将来こうなったらいいな
提案した内容
姫路はとてもイベントが好きなまちです。気候がいい時期になると、広場などでは毎週のようにイベントが開催されます。
もちろんそれも大切なのですが、イベントが開催されていない時はどうなんでしょう。何もないですよね。これでは日常的にそぞろ歩きが出来る通りとは言えません。つまり、通りに接続しているテナントさんが道路を普段遣い出来て初めてそぞろ歩きが楽しめる日常が繰り広げられると思いませんか?
冒頭にも書きましたが、沿道テナントこそが通りを彩る一番のプレイヤーなのです。そういった、染み出しができるテナントが将来に渡って展開されていくエリアになることが、とても重要だということをご提案しました。
日常への挑戦(社会実験など)
OMKの発足
将来像を実現するために、まずは組織づくり。地元の人達がやっていかないことにはまずうまくいきません。
大手前通りには、大手前通りまちづくり協議会という組織があります。
地元のすごい企業様たちから構成されており、このプロジェクトはこの組織なしには成り立たないと考えていた私達は、まずこの組織の方たちとビジョンを共有して伴走してもらえるようすり合わせを行いました。
そこで提案されたのが、このプロジェクトを推進していくための内部組織を作ること。私達もこれに同意し、この新しいグループを「大手前みらい会議(OMK)」と名付け、一年目の社会実験(活用チャレンジという名前で実施)に向けて動きだしたのです。
社会実験「ミチミチ」(R1)
まずは一年目。すり合わせた将来像に向けて一緒に動いてもらえる人たちを募るべく、沿道にあるすべてのビルオーナー・1階テナントにお声掛けを行い、集まった方たちとともに、将来こうなったらいいなというのを仮設で実現してみることになりました。
得られた成果と課題
11月の一ヶ月間を通して開催した「ミチミチ」。実施を通して様々な成果と課題が浮き彫りになりました。
まずはメリットから。
元からある飲食店では、軒先に椅子とテーブルを出すことで売上が上がることが分かりました。日常的にお店を展開されているところでは、通りで飲食される人たちを見た人たちが店舗を利用するケースが多かったようです。
また、実施したアンケートの結果、訪れた人たちのほとんどが「もっとこういった店舗が増えてほしい」と回答されました。やはりニーズは高そう。さらに、「ベンチなどの滞留施設をもっと増やしてほしい」という意見も多く寄せられました。やはり私達が想定していたようなシーンを作っていくことが満足感の向上につながることがデータでもはっきりしました。
次はデメリット。
もともと大手前通りに出店していない事業者さんの売上は、残念ながら芳しくない結果となりました。そもそものマーケットとしての魅力はやはりそう高くはないとの結論に至りました。
社会実験「ミチミチ」(R2)
1年目の結果を踏まえ、もう少し大手前通りを快適に過ごせる空間にしたほうがいいのではという仮設を立てました。そうすることで、滞在する人が増え、将来的なマーケットの価値も上がっていくのではという理論です。
また、新型コロナウイルスの流行に伴って実験の内容もよりオープンでソーシャルディスタンスを保ちやすい設えにしていくよう変更を重ねていきました。また、2年目ではOMKメンバーでのワークショップを沢山行い、みんなが欲しいものをエリア別で考え、それを実現させていくといった手法も取り入れて実現に向けて動いていきました。
こうして出来上がったストリートファニチャーでは、多くの人が滞在する光景を作り出すことに成功。そしてさらに、ミチミチを使った新しい取り組みも次々行われていくことに。
公共空間を使って学生たちの表現の場所を作り出し、通りをいく子どもたちみんなが触れていく楽しいファニチャーが完成。彼らにとっても一生の思い出になる出来事だったはずです。いや、いいことしたな笑
また、すでに設置しているファニチャーを使った取り組みも行いました。
地元高校生による空間提案。コロナ差別をなくすプロジェクト、シトラスリボンの趣旨に賛同し、グリーンのツリーにシトラスリボンを飾り付けて願いを託す設えも設置しました。
すべて高校生が自分で考え、広報も行いました。私は実現に向けてサポートをする役割に徹し、主役は彼女たちに。
日常になっていく
こうして設置したストリートファニチャーが日常を作り出し、日々ここを訪れる人達のいつもの光景になっていきました。
また、椅子の出し入れや掃除などを沿道事業者が行い、維持管理を民間の手で行う実験も並行して行われました。
しかしながら、この光景も今年いっぱいで見納めになります。なぜならば、来年以降は次のステージに向かうからです。
ほこみちとは?
来年度から、いよいよ民間が大手前通りを自らの手で管理し、魅力を作っていく制度が始まります。
歩行者利便増進道路、通称「ほこみち」。
まず大前提なのですが、本来であれば道路に構造物を置くことは出来ません。なぜなら、通行の邪魔になるから。
構造物を置こうとすると、管理自治体(姫路市)と警察でそれぞれ許可を取得しなければいけません。
今までの社会実験で設置できたのは、それが将来を見据えた「実験」だから。通常であれば許可されることはまずありません。
この、通常であれば許可されない道路上への構造物の設置を継続的に認めてもらえるのが「ほこみち」という制度です。
日常的な維持管理を民間団体が行う代わりに、長期的に道路を営利目的で使ってもいいですよということになります。つまり、今まで社会実験で行ってきたことがいよいよ本設で可能になるということ。
この「ほこみち」に則った占用事業者を公募で決定し、来年度以降姫路市と協議して本格運用が始まるのです。
いよいよはじまる民間主体での道路づかい。
大手前通りを沿道事業者が使いこなし、ワクワクする場所にできるかはこれからにかかっています。
自分自身のチャレンジについて
ここまで3年弱を費やして取り組んできた大手前通り。
ただ、私の立場はあくまで地元事業者のサポートでした。
次は、自らが事業者となって大手前通りの当事者となっていくことを目指します。
続きはまた次の記事で。