癒し系と治療系の違いについて
一口に整体と言ってもいろいろな方向性があります。例えば癒し系、例えば治療系、例えば美容系などです。
今回はこの癒し系と治療系について、その違いとどちらを選べば良いかについて解説します。
癒し系整体とは
明確な定義があるわけではありませんが、癒し系整体(あるいは癒し系揉みほぐし)とは主に「お客さんのリラックスと疲労の軽減を図ること」を目的とします。
例えば「今日は立ち仕事で足が疲れたからほぐして」という肉体面へのケアであったり、「最近ストレスかかってイライラしてるから心を癒してください」という精神面へのケアも含まれます。
施術のターゲットは「疲れ」。現代人は皆疲れていると言っても過言ではありませんから、「疲れを取ってほしい」というニーズはかなりあります。それをなんとかするのが癒し系整体師ですね。
癒し系の手技の特徴
そんな疲れを取る癒し系整体の手技の特徴は「流す」あるいは「通す」ということです。身体のほとんどが水分であることは良く知られています。細胞の中外の液体、血液、リンパ液などがそれです。
疲労物質というものは、この体液が流して分解し、排泄することで除去されていきます。しかし血液やリンパ液の流れが悪いと疲労物質の運搬が上手くいきません。結果として「疲れがたまったまま」になるのです。
つまり癒し系整体とは、つまりこの疲労物質を流すことにその極意があると言えます。どれだけ上手く流せるかが施術効果を大きく左右します。
また癒し系整体は治療系整体よりもマニュアルが使いやすい、つまり決まった型や手順をすれば一定の効果が得られるという特徴もあります。(もちろん上級者は相手の身体の状態に合わせて手順を変えていきますが)
ですから比較的どなたでも始めやすい印象はあります。
これが癒し系手技の特徴です。
治療系整体とは
一方の治療系整体とはどういったものでしょう。
イメージとしては昔ながらの治療家の先生です。膝や腰の痛みをグイグイと手技でほぐして痛みを取っていきます。癒し系が「疲れ」を取るのに対し治療系は「痛み」を取る。これが治療系整体の特徴です。
当然ながら治療系整体は整形外科や接骨院などに近い存在です。ただし民間整体院ではレントゲンも低周波治療器も使えませんから、手で検査し、手で施術していきます。基本的にオールハンドが多く、中には独自の道具や機械を使う整体師もいます。
治療系手技の特徴
実はこの治療系手技の特徴を挙げるのは非常に困難です。なぜなら世の中には多種多様な治療系整体法があるので、一概に「こういうものですよ」言えないのです。それぞれの先生が独自の技術を持ち磨いています。
ただ共通して言えることもあります。それは症状に応じて臨機応変な施術を行うという事です。膝が痛いなら膝に特化した施術、肩なら肩、首なら首と部位に応じ、症状に応じ、傷みの程度に応じ、(もちろんその先生の技量によっても大きく変わりますが)状態に合わせた施術を行います。とにかく「痛みがとれる技術を磨く」のが治療系整体の特徴で、これは癒し系整体と大きく違う点です。
どちらが自分に向いているか
癒し系整体師と治療系整体師の性格の違い
このように一口で「整体」と言っても中身がかなり違うのが「癒し系整体」と「治療系整体」ですので、これから整体師になろうという人は自分がどちらに進みたいかをよく考えることが必要です。
と言ってもなかなか分からない人も多いと思いますから、ここでは癒し系整体師に向いている性格、また治療系整体師に向いている性格について紹介しましょう。
もちろん様々な要素がるのですが、一つ言えるのは慎重な人は癒し系整体が、大胆な人は治療系整体が向いているという事です。
例えば治療系整体の一つにカイロプラクティックというものがあります。いわゆる骨をバキボキと鳴らすような整体です。中国整体などでも同じようなことをします。
あなたは人の身体をねじったりしてバキボキと骨を鳴らすことに抵抗はありませんか。「怖い怖い。骨折れたり身体が変になったりしないの?」と、なかなか踏み込めない人には治療系はちょっと難しいです。治療系は時にグッと身体に踏み込みますから、その勇気がないとどうしようもありません。大胆な性格の人に向いているのが治療系です。
逆に癒し系は丁寧さと慎重さが求められます。相手は疲れていて癒しほぐされたい人です。中にはものすごいストレスで怒り爆発寸前の人も来ることもあります。
そんな時に不用意にバキボキ!としては「いきなりなにすんのよ!」と逆鱗に触れることも。。。あるかもしれません。丁寧に慎重に相手の顔色や言葉づかいを観察し、相手に合わせた施術をする。こういう対人コミュニケーションスキルが求められます。空気の読めないと言いますか、相手の感情を読もうとしない人は癒し系は難しいでしょう。
癒し系から治療系に転向できるか
では今すでに癒し系整体をしている人が、途中から治療系に転向したり、治療系の施術の幅も広げたりすることは可能でしょうか。
もちろん可能です。癒し系であれ治療系であれ、相手の心身をよく観察し、相手に応じた施術をするという基本は同じです。はじめに癒し系整体でしっかりと相手に合わせる施術法を身につけているならば、さらにその上に治療系の技術を積み上げていけばいいのです。
もちろんすでに書いたように癒し系の手技と治療系の手技はかなり違いますから、気合を入れて一から学び直すつもりでないとなかなか身に付かないと思います。また「相手の痛みを取る」という結果責任が生じます。この点も覚悟をもって挑むことが必要です。
治療系から癒し系に転向できるか
逆に治療系整体師が癒し系の施術を学ぶことも可能です。院に治療系メニューと癒し系メニューが両立すれば、両方のニーズに応えられて経営面でも大きなプラスになりますね。
ただ気を付けたいのは、一般的に治療系整体師は癒し系整体を軽視する傾向があります。もし癒し系整体を「軽めの力で気持ち良くさーっと流しておいたらいいんでしょ」という程度にしか考えていないのなら、それは大きな過ちです。(そういう先生に限ってグイグイと力任せな整体をする傾向があります)
癒し系整体の極意は相手の心身に添うこと。そのためには人並み外れた観察力が必要です。丁寧に繊細に相手の心と身体に寄り添わなくては癒しは成り立ちません。癒しの奥は深いのです。
両方を学ぶのはあり?
世の中の整体は癒し系と治療系と分かれていることが多いと思いますが、私は両方を学ぶことを皆さんにおススメしています。なぜなら根底では同じだからです。
順番としてはまず癒し系から入る方が良いかと思います。相手の観察の仕方、手の触れ方、感じ方をまず徹底的に練習することが大事。これはあらゆる整体法の基礎と言えます。
何事も基礎を制する者が応用、発展しますから、癒し系整体で基礎をちゃんと学ぶことが大事です。
しかし同時に、あまり遅く過ぎないタイミングで治療系整体の練習も始めることが大事です。
癒し系整体師の先生に多いのですが、内心で治療系に対するコンプレックスを抱えていることがあります。人の身体を強く圧したり、結果責任を問われたりするプレッシャーに抵抗を感じるのです。キャリアを積めば積むほど(心理的に)治療系へのチャレンジが難しくなることもあるように見えます。
ですから癒し系をはじめて「そろそろ一通り癒し系の手技は使えるようになったな」と思うタイミング辺りで、治療系へのチャレンジするのはとても良いと思います。
まとめ
いかがでしたか。癒し系整体と治療系整体の違いと取り組み方について理解できたでしょうか。
世の中には「疲れを取ってほしい=癒し系整体」ニーズも、「痛みを取ってほしい=治療系整体」ニーズもどちらも無数にあります。大事なことは自分がどちらの方が向いているかを見極めることです。
見極めたらその道を究めるも良し、途中で転向するも良し、はじめからどちらも両立させていくのも良しです。
しかし私個人のおすすめはやはり同時進行で修行することです。癒し系を極めようとすることで治療系の成果が上がるのは間違いありません。ですから治療系の先生の皆さんには、是非真摯に癒し系に挑まれることをおすすめします。
また癒し系の先生も身近な人や大事な人が痛みに苦しんでいる時、痛みを取れないのは悔しいですね。できれば自分の手で取ってあげたいというのが人情だと思います。疲れも取れる。痛みも取れる。両方を追求していくことは決して不可能なことではありません。
ぜひチャレンジなさってみてください。
三宅弘晃