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【よびし通信no.35】糀ができるまで

よびし通信no.35発行しました。
今回は、糀ができるまでを簡単にまとめて記録しました。詳しくは後日公開します。

つなぎたいよびしの食


地産できる多賀町はすごい!

 味噌づくりワークショップは、渡辺糀店さんの糀を使っています。田んぼがあって、大豆があって糀屋さんがあり、ほぼ地産食材で味噌ができます。味噌を作ることは、「その土地の郷土食の文化を再確認する場」。
 日々の食事に欠かせない調味料、醤油、味噌には、「コウジ菌・ニホンコウジカビ」が使われています。コウジ菌は、もともと田んぼに棲息していて、田んぼを囲む畔では、かつて多賀町でも大豆を植えて「畔豆」を収穫していました。水田のお米をいただき、畔では醤油と味噌の材料、日本文化の原型がここにはあります。

 「麹」か「糀」か?

 「麹」は中国から伝わった漢字、「糀」は、和製漢字でニホンコウジカビのみに使われるそうです。発酵とカビと微生物の詳しく面白い話は、『醤油・味噌・酢はすごい』(小泉武夫著)、『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(小倉ヒラク著)などの本に分かりやすく書いています。

多賀町の糀屋さん

 昔は、月之木、猿木(*)にも糀屋さんがあったそうです。敏満寺にある渡辺糀店さんは、創業100年で、現在4代目だそうです。滋賀県内の糀屋さんは10軒ほどしかなく、機械化されず、昔ながらの製法で作っておられる所はわずかです。糀作りシーズン、10月から3月の少し余裕ができた昨年3月に3日間、渡辺糀店に通い糀作りを記録しました。

 町内では、家で糀から作っていた話をよく聞きます。いつか糀を作りたいと思いますが、微生物すなわち生き物なので、育てるには準備もお世話も手間がかかります。渡部糀店さんの糀は、見事にフワフワの菌糸が伸びた糀で感動します。酒糀と味噌糀は、同じニホンコウジカビでも環境の違いで変わるとか。酒糀はお米を削り、さらに、温度も43度近く上げて乾かしていき、過酷な環境になるので、胞子を米粒の中にのばし甘みが増す。また、味噌糀は、37度前後の多湿で、菌に快適な環境で、胞子がのびのび育ち旨味が増すとか。

糀ができるまで


①前日、夕方に米を洗ってザルにあげておく。

一日目


②朝6時から、米を蒸す。

③8時、米蒸終了。蒸し上がった米を広げて人肌まで冷ます。温度を均一にするため何度もひっくり返し混ぜる。湯気で真っ白に。

④タネコウジ(モヤシ)を蒸した米にふりかけて混ぜる。

⑤8時半、地下のムロに運び、オオダイバにひとまとめにして重ねて保温する。室温約20度で、糀の中心温度は約28度に保つ。午前中に温度が下がり、お昼に27度くらいになる。夜30度を越え、翌朝40度まで発酵熱で上がる。

地下のムロのオオダイバで保温します。

二日目 


⑥朝8時から約40分、糀にぬるま湯を撒く。塊をほどけやすくするため。
中心温度約40度、室温約17度。湿度約80%。

⑦10時から約30分、一升桝で、ジュウにひと桝ずつ糀を盛り、ムロに重ねていく。 

⑧14時半から約40分、温度が上がるので、上下ジュウを積みかえ、糀を山型に整える。
⑨17時から約30分、糀を手でくずして四つの山型に整えて穴あきジュウとミフタジュウを交互に並びかえる。

三日目


⑩朝9時半、ムロから糀を出す。 
糀の温度は30から40度、自分で熱持つので、広げて冷ます。気温が低い冬の部屋では、湯気がのぼる。この日の出来上がりは糀蓋(ジュウ)103枚分。

⑪ジュウを畳に並べて10時半頃まで冷ます。オトシ板で糀を集めて綿の袋に入れる。(完成)

多賀の記録したい知恵と技


 知らなかったなぁと感服する技や知恵が多々あります。多くの方には当たり前の事かも知れませんが、記録しておきたいと思います。

棕櫚(ショロ)

 家の庭先に、ヤシのような南国感あふれるシュロの木をよく見かけます。「シュロ」の事を多賀の方々は「ショロ」と呼んでいます。幹はシュロ帚やシュロたわしに使われ、葉は、裂いて昆布巻きを結んだり、つるんぼし(干柿)を吊るす紐にしていたと聞きました。また、葉を短く切って蠅叩きにもしたそうです。吊るし方を教えていただき使ったら、とても扱いやすい。そして、何よりも土に還る素材なのが嬉しい。

棕櫚の木


棕櫚の葉で吊るす

山吹(ヤマブキ)


 山の集落のオコナイを見学した時、燈明の灯芯は、昔、ヤマブキの花が咲いた後、枝の髄を取ってを乾燥し、灯芯を作っていたと聞きました。

燈明 この灯芯は仏壇屋さんで購入したもの
山吹 

だんない おきばりやす


塩こうじで美味しく健康に!

 塩こうじで、肉や魚を漬けるだけで、柔らかく旨味が増します。さらに、糀を摂ることで、エネルギー代謝を助け、肌の調子を整え、腸内環境も整う。さらに免疫力も高まるとか。嬉しいことがたくさん。

塩こうじの作り方

 塩と糀と水は、30対100対100。塩と糀をすり交ぜ水を入れます。瓶などに入れて混ぜ、常温に置き、一日一回混ぜる。10日ほどで塩こうじが出来ます。渡辺糀店でも販売されています。
 魚や肉の重さの一割の塩こうじで、漬ける・塗る・まぶすなどして調理してください。

鯖を塩こうじに漬けこみました
塩こうじ唐揚げは、胸肉が驚くほど柔らかくなります

塩こうじドレッシング

 ドレッシングは、糀が生のままいただけるのでおすすめです。
塩こうじ小さじ1、レモン半分、オリーブオイル大さじ1をよく混ぜて完成。

これからの予定


▼1月31日まで 文化庁 100年フードデジタルスタンプラリーに参加
▼1月25日 農林水産省 ニッポンフードシフトフェスin大阪 ファンタステックマーケットに参加
▼2月15日 たがのたべるをつなぐ~多賀町の食文化~ 講演会 (多賀町立文化財センター)
▼4月29日 「よびし市」(胡宮神社 社務所)

(*)猿木集落には糀屋さんは無く、隣接する彦根市高宮町の糀屋さんの田んぼがあり、糀用のお米を作っていたそうです。


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