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予備試験民法の勉強法


1 「民法を制する者は司法試験を制する」

 大学法学部に入学して司法試験受験をやる気になって予備校に通い始めた最初や、ロースクール最初の民法の授業などで、「民法を制する者は司法試験を制する」といったような格言を耳にすることがあると思います。

 これは民法という科目が、難しい、とか、範囲が広い、とかそういった理由によるものではありません。
 民法の論文式試験は、その答案を書く上では必ず、「問題点を抽出→該当する条文を検索→要件検討→解釈→当てはめ」といった過程を経る必要があり、この過程が他のあらゆる科目の基礎となる考え方であることから、民法をマスターすれば、他の科目もマスターできるという理由によるものであると私は考えています。
 したがって、民法における論文答案の書き方をマスターすることで、他の科目の答案の書き方までマスターすることができ、その結果司法試験を制することができる、という意味だと考えています。

2 法的三段論法

(1) 法的三段論法を「守る」こと

 そして、上記の過程において極めて重要なのが、要件検討→解釈→当てはめ、という過程になります。
 この過程で、いわゆる法的三段論法と呼ばれるものが登場します。これは、教授や予備校講師が「人は皆死ぬ→Xは人である→Xは死ぬ」というような具体例をドヤ顔で挙げながら説明してくる考え方で、法律を学んだ人であればみんなが「そんなこと知ってるよ!」と答えるでしょう。私も授業を受けていた頃には、「そんなこと知ってるよ!」と思ってイライラしながら聞いていたものです。
 しかし、重要なのは法的三段論法が何なのか、ではありません。法的三段論法が何か分からない人は少なくとも予備試験合格を目指して少しでも勉強を進めた人の中にはいないと思います。
 重要なのは、「法的三段論法で論じることを忘れないこと」だと思います。正直私が通っていたロースクールでも予備校でも、法的三段論法が「何なのか」についての説明を具体例を挙げながら格好つけて説明しているだけで、法的三段論法を「必ず守ること」に力点を置いた説明がされていなかったように感じます(数年前の話なので今はどうか分かりません。。)。

(2) 「格好よく論じる」ことは求められていない

 なので、これから予備試験の論文に向けて勉強を始める方は、まずは民法の起案を通じて、法的三段論法を必ず守ることを意識して勉強を進めてください。
 予備校の答練や問題演習講座の解答例は、かなり「格好つけて」書いてあります。しかし、予備試験の答案において「格好つける」ことは求められていません。なので、まずは不格好になってもいいので、法的三段論法を意識するようにして答案を作成するようにしてみてください。

3 難しいことは求められていない

 また、予備試験の民法においては、難しいことはほとんど問われません。これは司法試験の民法においても同じです。

 多くの受験生がまずは勉強をするであろう意思表示(民法94条)や代理(有権代理・無権代理・表見代理)といった総則の中でも主要な分野、物権、担保物権(特に抵当権や譲渡担保)といった分野からの出題が非常に多いです。
 これは、そもそも民法がパンデクテン方式を採用している理由を考えてみれば必然であるということができます。つまり、総則は物権法、債権法、不法行為法、家族法の全てに適用されるものであるため、常に登場する可能性があります物権法についても、総則の次に規定が置かれているとおり、あらゆる場面で総則の次に登場する可能性が高いです。

 また、不当利得や不法行為法は、契約とは異なり様々な事案において問題になり得るという性質上、これらの分野も頻出です。

 したがって、民法の論文試験は、総則や物権、不当利得や不法行為法が常に出題されるものと認識し、債権総論・契約法や家族法の分野については重要事項を押さえていく、という認識で勉強していくとよいと思います。 

 そして、民法を勉強する際には、矢印などを使って法律関係を図に表して理解することが多いと思いますが、これは論文試験の現場でも必ず行うことになります。この図が上手く描ければその時点で勝負あり、というぐらい重要な技術ですから、図は常に描けるように練習しておいてください。

 以上のとおり、重要分野の理解と図示ができるようになれば、後は三段論法に従って答案を書く、これだけで民法は超上位答案を書くことができるはずです。

4 当たり前の感覚を大事に

 これは、元々は記事にする予定ではなかったのですが、今年の模試の採点基準を見て感じたことで、私的にはかなり重要なことだと思いますので、書くことにしました。

 模試では、抵当権者が抵当権設定者の債務者に対してどのような手段を執ることができるかが問われていました。私は、当然抵当権に基づく物上代位をするという構成で答案を書きましたが、採点基準としては、「いくつかの法的構成」として、債権者代位権の構成も挙げられていました。
 しかし、抵当権者は抵当権に基づく物上代位として抵当権設定者の債権を差し押さえて行使することができるにもかかわらず、わざわざ一般債権者のように債権者代位を用いる構成は考えにくいのではないでしょうか。
 むしろ、債権者代位によることなく債務者の債権から優先弁済を受けるために抵当権の設定を受けているのですから、抵当権に基づく物上代位以外はあり得ず、仮に理論上債権者代位構成が可能であっても、限りなく不正解に近い構成だと思います。

 司法試験においても、抵当権者が物上代位ではなく債権者代位権に基づいて代位債権を行使するという構成を採る場合、それで本当に妥当なのかについては考える必要があると考えます。
 このように、抵当権者であれば、債権者代位ではなく物上代位の方がベター、というような当たり前の感覚は忘れないようにしてほしいです。

5 さいごに

 以上で述べたように、司法試験委員会は、民法について細かな論点について理解していることを求めているわけではないと思われます。むしろ、過去の出題傾向を見ると、民法総則・物権法・不当利得・不法行為からの出題が多く、その難易度から見ても、民法の構造を理解し、基本的な事項をしっかりと押さえているか、ということを非常に重視していると思います。

 なので、民法を勉強する際には、「ここが出題されたらどうしよう」といったことを過度に不安に感じず、総則・物権・不当利得・不法行為を確実に論述できるようにすることを幹として、枝葉の部分として債権総論・契約法・家族法を勉強する、といったようなイメージで学習を進めていくようにしてください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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