特別な1日に、戻ってきた当たり前 〜心踊る春の始まり〜 | YOASOBI ユニ春!ライブ2023公式レポート
はじまり
早朝5時。
冬の名残が残る、肌寒い春の朝。
月明かりに照らされながら、リハーサルが始まる。
『怪物』『好きだ』『夜に駆ける』…
どの曲も、自分を含め多くの人のプレイリストに入っている曲。
圧倒的な迫力に鳥肌が立つ。
リハーサルの段階から、普段は耳で“聴いている”音楽を、身体全体で“浴びている”という感覚があった。
そうして余念のない準備が進む中、
朝6時になり、真っ暗だった空が群青色になった。
と同時に、タイミングよく『群青』のリハーサルが始まる。
コーラス部分に入った時、
「あ、そういえば…今日のユニ春ライブはYOASOBI国内初の声出しライブだ!!」
ということを、改めて思い出す。
ライブ本番まで、まだもう少し時間があるけれど、この広い空間が沢山の人と声で満たされるのか…と想像するだけで胸が高鳴った。
パーク開園
パーク開園と同時に、友達とカチューシャ選びに夢中になる学生。
いつもは引かれて歩くはずの手を、目一杯の力を込めて小さな手で引っぱっていく黄色いパーカーと青いオーバーオールでオシャレした男の子。
ユニバという特別な場所で、様々な感情が交叉しているのを窓越しに感じる。
そして、中でもユニバという「非日常」とYOASOBIライブという「非日常」
が掛け合わされる今日という日の期待が、パーク内に凝縮されているような気がした。
ライブ直前
ライブが始まる1時間前、ユニ春ライブを直前に控えたボーカルのikuraさんにインタビューを行わせていただいた。
続いて、コンポーザーのAyaseさんにもインタビューをさせていただいた。
ユニバが大好きで遊びに来ている人、YOASOBIが好きでライブに来てくれる人、ユニバもYOASOBIも楽しみに来てくれる人、ユニバをより特別な場所にしてくれているクルーさん。
様々な人の視点に立ち、ライブ直前にユニ春ライブにかける熱い思いを語ってくれたお2人。いよいよライブ会場へと出発する。
ライブ本番
そして…10時45分、ついにユニ春ライブの幕が開ける!!!
YOASOBIメンバーの登場に、割れんばかりの拍手が会場内を大きく包む。黄色と青色の鮮やかな衣装が、雲一つない青空に負けない明るさを会場にもたらしている。
1曲目、『群青』。
ikuraさんの「歌って~!!」という掛け声と共に、序盤のコーラス部分で初めての声出し。まだ、会場内に少しの緊張感が漂う雰囲気を肌で感じる。周りをうかがいながら、少しずつ観客から声が生まれる。
2曲目、『三原色』。
『三原色』特有のリズム感のあるクラップからスタート。
ライブステージバックの左右からのぞく、ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドとザ・フライング・ダイナソー。2つのジェットコースターの疾走感も相まって、鼓動が早くなる。そして、この『三原色』のサビで緊張感が解け、一気に会場の一体感が生まれたように感じた。
「まだまだ、元気に行けますか~!?」「いぇ~い!!!」というコールアンドレスポンスとともに、『もう少しだけ』そして『ラブレター』が続く。『ラブレター』では、なんとキティちゃんとのコラボステージが実現。「ねぇもっと触れていたいよ ずっとそばにいてほしいよ」という歌詞の部分で、キティちゃんとikuraさんが手を重ね合わせる様子も見られ、会場が優しい空気感に包まれる。
続いて、それまでの空気感とは打って変わって、『祝福』そして『怪物』と、力強さが感じられる楽曲に移行していく。こんな短時間の間に、いろんな声色・音色・表情を見せてくれるYOASOBIチームの底知れなさをひしひしと感じた。
そして、『ツバメ』『好きだ』『ハルカ』の3曲が再び会場内を優しい空気感で包む。
『ツバメ』では、なんとセサミストリートの仲間たちとのコラボステージも実現!!みんなで、手をパタパタとはためかせ、ツバメダンスをしている様子に心が温かくなる。ライブ中、背伸びをしながら双眼鏡を覗き、ステージを見ようと奮闘していた最後尾の女の子が、『ツバメ』が終わった時、笑顔でステージに向けて大きく手を振っていた。最後尾まで、しっかりと歌や言葉や心が届いたんだろうなと私は思った。
『好きだ』から『ハルカ』に移り変わる前には、「この春卒業する人~?」と、ikuraさんが観客に呼びかけた。パラパラと会場内にいくつかの手が挙がる。
「ちなみに、どこを卒業されるんですか?」と重ねて問うと「大学」という声が挙がる。「同じだ!私も卒業なんです!!」とikuraさんが答え、「おめでとう!!」と声が挙がる。
気温の暖かさやユニ春ライブという名前からだけでなくikuraさんと観客のコミュニケーションからも春、という季節を感じることができた。
このように、ライブ中、歌や会話を通して言葉や心のキャッチボールが生まれていて、とても暖かな、素敵なライブだと感じた。
終盤、10曲目ではYOASOBI代表曲『夜に駆ける』でライブのスピード感を保ち、最後までリードしていく。
そうして、会場の熱気が最高潮に達したタイミングで、ユニ春ライブのラストを締めくくるのは、ユニ春テーマソングである『アドベンチャー』。
…「こんなんじゃない」
冒頭、まるで殻の中に閉じこもるような日々への歯がゆい感情が描かれている。3年前の春、人々の共通記憶に残る「未曾有の季節の始まり」[YY1] が思い出される。しかし、その後、速まる鼓動のようにリズムを刻むドラム、
キレ全開のギターやベース、前向きな気持ちを後押ししてくれる手拍子、
サビ前の効果音やグリッサンド、そして軽快に跳ねる歌声によって、殻を破り、いつもと違う世界に飛び込んでいく様子が感じられる。
そんなアップテンポな曲調の『アドベンチャー』からは自然とジェットコースターが思い起こされ、ワクワクが止まらない。私が「ユニバに来た!」と思う瞬間の一つは、入場ゲートまでの道のりを歩いている時に、ジェットコースターが目に飛び込んできた瞬間だ。
きっと、私だけじゃなくて多くの人がジェットコースターを見上げながら、
自分の高鳴る鼓動を感じ、いつもより早く歩を進めるんじゃないかと思う。
そんな情景と感情が音楽と共に溢れ出してくる。
ライブ中、『アドベンチャー』で特に印象に残った部分は、
前半の「シャッターを切って写し出した零れるような笑顔」
後半の「シャッターを切っても写せない思い出」という対照的な歌詞。
SNSで#ユニバを検索すると、いろんな人のユニバでの思い出の断片で
溢れているように、ユニバでの素敵な思い出を振り返ることができるように、私たちはしっかりと思い出をカメラで保存する。
でも、その切り取った写真の奥には、
「時間をかけて選んだお揃いのカチューシャ」
「初めて食べたキャラクターまん」
「びしょ濡れになったアトラクション」
「お気に入りのキャラクターとの念願のツーショット」
「目が合うと手を振ってくれたり話しかけてくれるクルーさん」
...と、カメラには保存しきれない各々の思い出と感情が詰まっている。こんなふうに、 数行の歌詞と音楽から、ユニバでの“特別”が、カメラの中だけじゃなくて心の中にもしっかりと保存されているんだっ!というハートの強さが感じられて、とても心が温かくなった。
あと、ラストの合唱パートもとても印象的。YOASOBIチームやライブ会場のお客さん…沢山の人の声が重なり合うことで、これまで続いていた“私”目線から“みんな”目線になる。
…“みんな”で歌うことに大きな意味があるように思える。
なぜなら、ユニバでの時間を過ごしたことで、序盤に感じていた「こんなんじゃない」という孤独感や閉塞感が、人々との結びつきや解放感へと
変化していく様子が体現されているような気がするから。
そして、声出しができる今日に、一筋の明るい未来を感じる。
…ここで、さらに心がアツアツになった。
楽しい嬉しいといった沸き立つような気持ちが溢れんばかりに先行しつつも、3分20秒の『アドベンチャー』の中にはコロナと共にあった感情の振れ幅がぎゅっと詰まっていて、私はドラマを感じずにはいられなかった。
今回、ユニ春ライブに参加する前に、原作『レンズ越しの煌めきを』(菜葵著)を読ませていただいた。
『アドベンチャー』という曲は、この原作という大事な核は温存されつつ、
YOASOBIというオリジナリティが付随していたように感じた。
そして、ライブでは観客を巻き込み、そこに熱量が上積みされる。 その空間で聴く『アドベンチャー』は格別だった。
終始、YOASOBIの観客を巻き込む力、引き込む力に圧倒された。原作という他者の意識の中へ、自分の思い出という自意識の中へ連れて行ってくれるようなパフォーマンス。
まさに、“冒険”という言葉がぴったりだった。
ライブ直後
ライブ後の高揚感も冷めやらないまま、かなり緊張気味に
再びikuraさんとAyaseさんにインタビューをさせていただいた。
ライブ直前に、様々な人の視点に立ち、ユニ春ライブにかける熱い思いを語ってくれたお2人が、ライブ直後に、晴れやかな表情でこうしてユニ春ライブについて語ってくれた。
おわりに
とあるきっかけから、こうしてライブレポートを書くことになったものの、ただのしがない大学生の私が、こうして大きな舞台で活躍されているYOASOBIさんのライブレポートを書くことに対し、はじめは肩身が狭い思いだった。
それに、正直にいうと私は音楽に関してはかなり無知だ。ライブもほとんど行ったことがない。
だからこそ、今回私にできるのは音楽的理屈を頭で考えることではなく当日に心が揺れた瞬間を大切にして、ありのままに文章を書くことだと思った。
私は、“物語”が好きだ。
幼いころから、暮らしの中に小説があった。フィクションの中にはノンフィクションがつまっていて、何気なく過ごしている日常で物語に救われる瞬間が数え切れないほど存在する。でも、同年代に好き好んで小説を読む人というのは極めて少ない。
だからこそ、「小説を音楽にする」というコンセプトで小説や音楽の可能性を広げるYOASOBIというアーティストの新たな試みに心躍るものがあった。小説も音楽も、言語化できない感情を代弁してくれたり、他者の感情を追体験することでこれからの経験に付加価値を与えてくれたりする。ほんの数行の言葉や数秒の音が時に、向かい風を追い風に変えてくれる。
凄く素敵なことだと思う。そういう言葉や音を紡ぐ素敵な人たちとこうして関われた喜びを私は嚙み締めている。
私は、インタビューの最後に、こんな質問をYOASOBIのお2人にぶつけてみた。
お2人の言葉から、「いつだって、句点ではなく読点なんだ」というバイタリティを感じ、前向きな気持ちをお裾分けしてもらった気分になった。
そして、今回ライブや舞台裏に密着させていただき、音楽に向き合うクールさだけでなく、大人なのに…いや、大人だからこそ遊び(ASOBI)心を忘れない
YOASOBIチームを、私はとても素敵だと思った。
そして、もちろん…
今後も新しい風を吹かせてくれるであろうYOASOBIチームのこれからに目が離せない!!!
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2023年、春。素敵な始まりの予感。
文:
mizuka https://instagram.com/mzk_gyb1106?igshid=YmMyMTA2M2Y=
写真:
佐藤 俊斗 https://twitter.com/_shuntosato
Kato Shumpei https://www.instagram.com/shumpei_1002/
YOASOBI「アドベンチャー」Music Video