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なぜ、いま、写真新人賞をつくるのか

写真を通して圧倒的な未来を創りたい

「夜明け前|New Photography Award」というアワード、少々唐突に現れ出た印象があるかとおもいます。
そこで今回は、
「なぜ」「いま」「写真」の賞を始めるのか? 
そんな疑問に答えてみたくおもいます。

このアワードを主宰するベンチャーキャピタルのANRI株式会社は、企業ヴィジョンとして次の言葉を掲げています。

「未来を創ろう、圧倒的な未来を」

圧倒的な未来を創るには、何が必要でしょうか。もちろんかなりいろんなものが要るのですが、なかでも不可欠なのは「想像力」、それに「創造力」です。
未来とは、いまのところまだどこにもないのですから、ゼロから自分たちで想像し創造する以外に、つくりようはありません。
時代を切り拓き、人の意識を先導するような表現を世に続々と放ちたい。そんな思いを実現するため、このアワードは立ち上げられたのです。

では、扱うジャンルを写真表現としたのはどうしてか。写真こそ、最も手軽にかつ鋭く、いまという時代を切り取ることができるメディアと考えたからです。
せっかくだれもがカメラデバイス(主にスマホですが)を、肌身離さず持ち歩くようになっている時代です。
「わたしには世界がこう見えてる!」
「わたしなら世界をこんなふうに変えたい!」
そんな「視点の提示」と「意思の発信」を、ひとりでも多くの人が写真によって表現できるようになればすばらしいではないですか。
このアワード、そして受賞者が、圧倒的な未来を創っていくうえでの先導役を務められたらと願っています。

写真新人賞の現在地とは

そしてもうひとつ、写真表現を志す人の通るべき道を、ちゃんと用意したいという思いもあります。
日本では1990年代初頭に、「キヤノン写真新世紀」「リクルート 写真ひとつぼ展(のちに1_WALLと改題)」をはじめ、写真の公募展すなわち新人賞が続々と立ち上がりました。多くは企業の社会文化支援活動「メセナ」の一環として始められたものです。
ヒロミックス、蜷川実花、川内倫子、澤田知子、奥山由之……。公募展の歴代受賞者からは、斬新で個性的、かつ世界規模に評価される表現者が多数登場することとなります。1990~2000年代にかけて現れた「写真ブーム」とも呼ぶべき世相を、公募展出身者が牽引したのです。思えば、写真家が世に出て華々しく活躍するためのひとつの道筋が、しかと確立されていたわけですね。

ところが2020年代に入ると、「写真新世紀」や「1_WALL」は、相次いで幕を閉じてしまいます。運営する企業内での文化支援のあり方見直しや、写真表現への注目度の相対的な低下など、要因はさまざま考えられます。ともあれ写真家たちからすれば、世に出るルートとして頼りにしていた「登竜門」がいきなり消滅してしまい、困った状況となりました。
時代がどうあろうと各分野において、その道へ入っていくための「門」はいつだって必要なはずです。

要るものがないと気づいたのなら、つくるしかありません。
「撮る」「見る」「活用する」「大切にする」のどの観点からしても、日本は世界に冠たる、いえ世界一の「写真大国」といえるのではないでしょうか。
日本文化の重要な一面をかたちづくっている独自の写真表現が、これからも豊かなものとして存在してほしい。そのために「夜明け前」は、いま、このタイミングで、始動することとなったのです。


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