相場の値動きを分かろうとする愚者。分からないと認める賢者
1.相場の値動きを理解したがる弱さ
トレードを始めて間もない友人と話している時のこと。
「ここのこの値動きをどう理解したらいいのか分からなくて…」
といってチャートを見せてくれた。実際に取引した場面のチャートのようだ。
「この移動平均線がこうで」「でもここで強い陰線が出て」
と、色々な情報を根拠にした解釈を述べてくれた。
しかし、チャートを見る限りどう見ても売り買いが拮抗して値動きが停滞しているポイントのように感じる。
なので私は
「まぁ解釈しようのないポイントもあるからね。無視した方が楽かもよ」
と言った。
せっかく色々と解釈を試みている彼を相手に、真っ向から論理的に否定するのは意味がないと思い、やんわりとした言葉を使った。
やはり彼はその言葉にはあまり反応を示さず、続けて値動きの解釈の話を続けた。
もしかすると私が話をはぐらかしていると感じたかもしれない。
それか、重要な何かを隠しているとでも思ったのかもしれない。
そんな意図は全くなく、本当に感じていることを言っただけにすぎなかったのだけど。
彼としては
「値動きを理解できればもっと勝てるようになるのでは」
「チャートの正しい解釈方法がある」
などと思っているのだろう。
そしてそこから容易に抜け出せない状態なのだろう。
このように、もし相場の値動きをキッチリ理解したいという思い(それに近い思い)があるのなら、それは弱さと言えるかもしれない。
2.分かろうとする愚者、分からないと認める賢者
「動きを理解したい」という思いは、むしろトレードで勝ちたいと思い努力しているトレーダーの一般的な欲求だと思う。
その欲求の根本には、過去に学校の勉強や人生のあらゆる場面で”理解することによって上手くいった"ことがある経験が影響しているかもしれない。
ある意味、優秀な人間にとっての常識的な思考といえるだろう。
冒頭の彼も、優秀だ。
しかしトレードという土俵においては、理解したいという強い欲求が、悲しいことにトレーダーを愚者に変えてしまうことがある。
なぜかといえば、
目の前の相場の値動きがどうしてそうなっているか正確に説明できる人間はこの世に1人も存在せず、
ゆえに、それを理解したいと思うことに根本的な矛盾が生じるからだ。
分かりようのない事を分かろうとするのは、無理だ。
もしそれを分かったと思ったとすると、無理矢理自分の解釈で捻じ曲げて理解しているに過ぎない
こうしてトレーダーの中に虚構が築かれる。
相場の値動きには、ランダム性の高い時と、パターン性の高い時が混在している。
特にランダム性の高い時(冒頭で友人が見せてくれたチャートの場面)は、分かりようのない値動きとなる。
パターン性の高い値動きの時は「ある程度はこうなりそうだ」ということを感じるだけで、それ以上のことは何も分からない。
トレードの賢者は、分からないことをそのまま分からないと認めることが出来る者と言えるかもしれない。
(ランダム性・パターン性の詳細は下記記事)
3."分からない"を前提として取引するのがトレード
トレードは、未来の値動きがどうなるか分からない前提で「どちらかといえばこうなる確率が高そう」と思える場面で資金を賭ける行為と言える。
ある程度それが上手くいったりすると
「動きが理解できるようになってきた」と思うかもしれない。
しかしそれは単なる錯覚に過ぎない(パターンの傾向を少しつかめているという意味では一部正しいかもしれないが)。
分からないことを、そのまま分からないと理解することは、相場の真実により適合した思考法ともいえる。
分かりたいという幻想や、分かったという錯覚に囚われないことがトレードする上では大切な姿勢のひとつだと思う。
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