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5年の時を超えて(18th Feb.2025)
その夜見た光景を僕は忘れることはない。
正直なところ、今回ばかりは客席を埋める自信がなかった。4,5年も前にリリースされたアルバムのリリースパーティー、どれくらいの方が聴きたいと思ってくれるだろう。
予約開始以降段々と席が埋まっていった勢いは年末頃にいったん止まり、少し焦りが生じた。年が明けると山梨の2つのラジオ局のディレクターさんに連絡を取って生放送で告知させてもらう枠を頂いたり、何年ぶりとなる庸蔵ラヂヲ(インスタライブ機能を使った私的ラジオ)も放送したり、
一番近くでずっと最高の演奏をしてくれているメンバーたちに満席の景色を見せたかったし、来場してくれる皆さんにも空席の見えないワクワクした気持ちに溢れた会場を見せたかった。
アルバムリリース後のコロナ真っ只中で一度だけ配信ライブをやった。日頃からライブは生でないと意味がないと思っている僕も、あの時はVJにドローイングアーティスト Akiko Nakayamaさんとのコラボが実現するということ、また当時ライブ営業が全く出来ずに困り果てていた青山・月見ル君想フの力に少しでもなりたいという気持ちから行った。
Akikoさんの素晴らしい映像の力でこれはこれでとても素晴らしい作品となりやって良かったと思ったけれど、その時も「At the Next Corner」からあえて全曲はやらず、本当の意味での「At the Next Corner」リリパは、リアルにお客さんを入れた生ライブでと思っていたが、コロナが長引くにつれて開催する正解のタイミングがわからなくなっていった。
それでも「At the Next Cornerのリリパはまだですか?」と声をかけ続けてくれたtsukuyomiファンの皆さん、そして多忙につきなかなか参加が難しくなっていたピアニスト・木村イオリに代わって現れた「はらかなこ」。
かなちゃんはtsukuyomi結成2年目の2012年に客席で見てくれていた。運命っておもしろい。出会うべくして出会うし、タイミングはいつもココしかないタイミングでやって来る。
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とはいえ「At the Next Corner」のリリパという枠だけで終わりたくなかった。これだけ待ってもらってそれだけでは楽しみに来てくれる皆さんに失礼だ。これからの新しいtsukuyomiが垣間見える、そんなライブにしなくては。
それには約5年ぶりとなる新曲を必ず完成させる必要があった。曲作りに時間がかかる僕はそれにかかりっきりで、サックスをまともに触れたのは当日直前の2週間くらいだったけれど、
「あぁ来て良かった!」会場にいる誰もがそう思ってくれるような夜に絶対にする。そうやって自分にプレッシャーをかけ続けた。
ここで冒頭に戻る。
その夜見た光景を僕は忘れることはない。
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心配していた席は埋まり完売御礼、キャンセル待ちの連絡まで頂いていた。今回来られなかった皆さん、ゴメンナサイ。またぜひいらしてください。
PlaywrightのボスでもあるDJ・谷口っさんがtsukuyomiの登場直前に流した我が師・菊地成孔さんのバンド「DCPRG」の大名曲「Mirror Balls」。
僕はこの曲を(当時)新宿のリキッドルームで聴いて心を揺さぶられ、この人に音楽を教えて欲しいと思ったんだよ。その時僕はサックスを触ったこともなかったんだ。谷口さん、、、泣かすなよ。
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「At the Next Corner」のジャケットへのオマージュだと思うのよ。
それから約2時間半ほど。みんなには申し訳ないけど、一番幸せを感じられたのは間違いなく僕自身。
熊ちゃんのドラムは相変わらずキレキレでtsukuyomiのものすごく振り幅の広いジャンルレスなビートを刻み続け、マサ君のアコースティックベースは図太くでも優しく会場を揺らし続け、久々に戻ってきた力巨くんのガットギターの美しい音色、今回の力巨くんのソロは全部最高だったな。
そして聴いてる以上に複雑なtsukuyomiの曲をこの曲数、この短期間でここまでアジャストしてくれるはらかなこのピアノ。かなちゃん自身とても多忙なはずなのに。涙が出たわ。
もうこの後は沙彩のバイオリンと僕のサックスが踊りまくれば良い。
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改めまして、あの夜会場を埋めてくれた皆さん、あの公演を一緒に作ってくれた会場の皆さんへ、あの日夜空に輝いていた星の数ほどのありったけの感謝を。また近々お会いできますように。
それでは今宵も酔い夜を。
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