見出し画像

江國香織『赤い長靴』

あらすじ

「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。笑うことと泣くことは似ているから。結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景———幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。

『赤い長靴』裏表紙より

不気味な結婚生活。人と一緒にいるのに、1人でいるよりも孤独を感じるような生活が描かれている。

物語は一貫して、子供のいない都会の夫婦の穏やかで静かな日常が展開するのみで大きなアクシデントがあるわけではない。でも、そこはかとなく不穏さ、不気味さが漂っている。2人で暮らしているのに、1人でいるよりも孤独だ。

夫の逍三は、妻の日和子の言葉に耳を傾けない。彼女のことが気に入らなくてわざと無視しているのではなくて、ただ単純に、彼女の言葉に答える必要がないと思っているから返事をしないのが怖い。そして逍三は自分は日和子のことを愛していると思っているし、おそらくそれは嘘ではないところもまた怖い。

逍三に掬い上げられることなく消えていく日和子の言葉があまりにも多すぎて、でも確かに2人は愛し合っていてお互いがいないときっとダメで、結婚って愛ってなんなんだろう、と思ってしまった。21歳の私が結婚に夢を見過ぎているのかな。


いいなと思ったら応援しよう!